すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

あの時、うたった詞を

2015年11月02日 | 雑記帳
 土曜日は、午前午後と閉校記念式典のかけもちだった。午前中は隣校、来年度に勤務校と統合する学校である。かつてお城のあった丘に建てられている。校歌の作詞者はお世話になった国語研の大先輩で、地元の詩人でもあった。「にんげんを創れ ふるさとを創れ にっぽんを創れ」という心に響く詩で締め括られる。


 午後からは山間部の小学校。統合になってまだ11年目。統合前にこの校舎に5年勤めた経験もあり、懐かしさがつのる。この校歌の歌詞も同じ方が作った。一番の後半の詞はこうだ。「みんな夜明けの木になって いのちの花を咲かそうよ ことばの花を咲かそうよ」…ここにも学校を愛する気持ちが溢れていると思う。


 2校の閉校式典で子どもたちの呼びかけを聞きながら、自分も閉校のための群読用の詩を作ったことを思い出した。もちろん、上記の先輩には及びもつかぬが、個人的には気にいっていた。データがあるはずと探してみたらたどりついた。2004年2月の作である。隙間風吹く古い木造校舎であったが愛着もあった。


 題名は「ヒカルイシになれ」。我ながら格好つけたタイトルをつけたものだ。校門を入ったところに大きな石(鳥海山から運んできたと言われている)があったことを素材に「意志」と重ね合わせ、宝石のようなイメージを持たせたかった。少し長いが載せてみる。明日は「文化の日」なので勝手に自分で酔い痴れよう。


ぼくたちと 
ぼくたちにつながる たくさんの人
わたしたちと 
わたしたちと生きる たくさんの人
みんながおもう 
みんなでおもう
      
学校は、いつも待っていてくれた
学校は、いつも微笑んでいてくれた
いつも包んでいてくれた
わたしたちの 手と手 ことばとことば 心と心をつないだ結び目を
様々な形や色をしたものたちは
いつだって あたたかく見守っていてくれた

赤いランドセルの肩に落ちた 桜の花びら
緑の山に届けとばかりにあがる プールの水しぶき
風とかけっこをしたグランドに 根をはった草
雪をはらって入った教室にともる ストーブの火
       
そして、その中にゆっくりと立ち上がるぼくたちの風景
黒板には、いつも誰かの名前が書かれていて
廊下では、はだしの足がしっかり踏みしめられていて
体育館いっぱいに、仲間を呼ぶ声が響きあっていて
教室の窓は、何でもつかめる手で、毎朝開け放たれていて
       
わたしたちは、そのときの小さい身体で 
いったいいくつの夢を描いただろう…
その夢のひとつひとつは
きっとこの校舎の あちらこちらにしみ込んでいる
教室の床も、階段の手すりも、水道の蛇口も…
その夢の記憶で わずかなきらめきを放って 息づいている

さみしい風が吹く前に、
そのきらめきを 心の中に呼び集めよう
百二十九年分の輝きは
強く、硬く、この胸にしまいこまれる
未来へのコンパスを手に入れるために

ヒカルイシになれ 学校 
ヒカルイシになれ ぼくらの学校
ヒカルイシになれ 田代小学校

ほら、空も 山も 風も
今この時、この場所を見つめている

ヒカルイシになれ