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強くならない覚悟を知れ

2015年11月10日 | 読書
 【2015読了】113冊目 ★★
 『孤独のチカラ』(齋藤 孝  新潮文庫)


 この単行本は平成17年の出版である。「齋藤孝本」の絶世期だ。著者自ら書いているが、2005年には30冊以上発刊している。私にしてもハマっていた時期で、たしかその年に講演を聞き、本にサインをしてもらう時に二言三言会話をした記憶がある。それでもこの本に手が出なかったのは、孤独でなかったからか(笑)。


 となると、今これを購読した自分は孤独なのかということだが、ひしひしと迫り来る老いに不安を感じてはいるが、それほどは…。さて、読了して思うのはこの本の主たる対象は20代から40代というところだろう。孤独になること恐れず、孤独の時間に力を見い出していけ、といういかにも齋藤モードの一冊だった。


 従って、実に明快な手法、姿勢の提案が記されている。それは孤独脱出といった課題に限らず、汎用性のある自己啓発に結び付くだろう。「いまの自分に安住しないために~三つの手法」は次の三つである。「1 内観する」「2 教養という反射鏡を持つ」「3 日記を書く」…孤独の時間の有効な使い方として示される。


 また「孤独を乗り越えるために~三つの手法」も面白い。「1 手先のことに集中する」「2 翻訳、英語本にトライ」「3 マニアな読書」…1が興味深い。この著では「石磨き」などの例があがっている。生命も意思もない鉱物などにじっくりと向き合うことによって自らと対話するイメージだろうか。禅に近いか。


 「中原中也は、日本の孤独界のスターだ」という一文。太宰治や中上健次も居並ぶが、やはり中也に尽きるか。我が青春の中也…と卒論対象を言いたい。しかし正直、その孤独の深さは捉えきれなかった。ゆえに著者が言い切った「強くならない覚悟」には唸った。著者自身の、孤独体験の深みが感じられる一言だ。