すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

○○させたいという情熱

2015年11月14日 | 読書
 【2015読了】114冊目 ★★★
 『甦る教室 学級崩壊立て直し請負人』(菊池省三・吉崎エイジ―ジョ 新潮文庫)


 単著こそ読んでいないが、教育技術誌の長期連載で菊池実践についてある程度理解していた。もちろん、某テレビ番組で広く知られる以前から注目していた一人である。この本を読み、改めて共感できたのは「自分を晒す」ことで、次々に自己変革を迫っていくその姿勢だ。成功例だけでなく失敗例にも学びが大きい。


 「ほめ言葉のシャワー」「成長ノート」という二大実践にまつわるエピソードは、どこかで書かれている部分も多いが、敬体を使った語り口調的な文章のせいか、また伝わり方が違うように感じる。「子どもの育ちを待つ」という発達段階の見極めが印象に残る。失敗した実践もはっきりと語り、核は何なのかをしっかり示す。


 「公の喪失」という章名や叱り方のことなど、野口芳宏先生に重なる部分も多い。と思ったら「正しい叱られ方」を教えるという件は、全くそのままだった。もちろんどちらが先かという問題ではなく、教師にとってそれが身体化している指導かどうかなのである。ちなみにその五段階は、受容・反省・謝罪・改善・感謝。


 最終章は「教え子からのツッコミ」と題されたインタビュー。やや暴露的な内容が興味深い。上から睨まれ続けながら実践を貫くことによって失うもの、また多忙な生活の中で家族との関わりが崩れた時のこと、などなかなか口にできるものではない。夏に、今春退職されたと耳にしたが、現実の厳しさを想像できる。


 インタビュワ―の教え子がこう語ったことが実に象徴的だ。「僕が先生から学んだことは…情熱だったんじゃないかと。自分の考えや情報を『周囲に伝えたい』という意思だとか、情熱だったと思います」…ライターとなった教え子がこう語るのは最大級の賛辞だ。○○させたいという情熱が、子どもの芯に働きかける。