すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

真剣さと汗がONにする

2015年11月16日 | 読書
 【2015読了】116冊目 ★★
 『人生の暗号』(村上和雄  サンマーク出版)


 近くにおいでになり講演をなさったことが二度ほどあった。しかしどちらも予定があって参加できなかった。遺伝子研究の第一人者から直接聴く「生命の暗号」論はどのようなものなのか。これは第二弾で、読んでいてもエネルギーが伝わってくる気がした。科学的根拠を疑う人はいるだろうが、自分は支持したい。


 「人間が考えたり行動したりするほとんどすべてに遺伝子は関係しており、遺伝子暗号に書かれたこと以外はわれわれの身におきない」…この断定を単なる運命論と考えてはいけない。関わるのは「遺伝子のONとOFF」。そのコントロールをいかにするか、どんな心構えや習慣が好影響を及ぼすかが書かれている。


 面白い言葉というか使い方を見つけた。「テイスト」である。もともとは「味覚」だが、かの江崎玲於奈先生は「真理や真実、物事の本質を見透かす力」と表現されているそうである。この「テイストがいい人」の例として挙げられているのは、「失敗を面白がる」「裏道に挑んでみる」「ひらめきを大事にする」姿勢である。


 天才も凡才も遺伝子上はあまり変わらない。それをよく表している詩が引用されていて、その直截さに引き付けられた。「天分これを持たないものがいようか/才能単なる子供のおもちゃ/真剣さのみが人を人とし/汗のみが天才を作る」。豊かさを求めて進む世界の中で、真剣さと汗を引き出す教育が求められている。


 納得できる表現は数々ある。「プライドは最終的に保つもの。物事の入り口ですぐに表に出てくるプライドは偽物であることが多い」…譲れないという所まで柔軟に考え、行動すること。「すべての見通しを得ようとすると、結局は何もできない」…見通しは必要だが、わからないこと、想定外のことにこそ学びがある。