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イブに「マスカレード・イブ」読了

2014年12月24日 | 読書
 「2014読了」137冊目 ★★★

 『マスカレード・イブ』(東野圭吾 集英社文庫)

 8月末発刊とあったが、書店で見かけたのは初めてだったので、新刊だろうと手に取った。帯をみると、どうやら『マスカレード・ホテル』という前作がありその続編らしい。しかしその一冊は見当たらず、いいやと思って買い求めた。4つの中編があり、最後の標題作でのそれらの主人公が登場するが、実際に出逢っていないまま。これから物語が始まる感じだ。


 検索してみて、ああそうかと思った。前作がシリーズ第一弾で、主人公である山岸と新田が活躍するらしい。その「イブ」という形で書き下ろされたのだ。こういう出版の仕方は何かであった気がするが思い出せない。いずれスピン・オフという形で、ヒットを派生させるのも最近の流行り。逆にその経緯を知らないから時間軸で楽しめるメリットもあるなあ。


 言葉は何十年も前に耳にしていながら「マスカレード」の意味は定かでない。「仮面舞踏会」「仮装」「見せかけ」…なるほど。最初の作品「それぞれの仮面」に表れている。若く不慣れなクラーク山岸尚美が、先輩からかけられる一言にその意味が記されている。「ホテルを訪れる人々は仮面を被っている。お客様という仮面をね。それを剥がそうとしてはいけない


 覆面作家をテーマに書かれた『仮面と覆面』という話がなかなか秀逸だった。設定や展開が面白く、実にテレビ的かもしれない。それはホテルだけの話だが、全体の構成としてホテルマンが仮面を守ろうとする仕事、そしてもう一方の主人公である刑事は仮面を剥がそうとする仕事、この取り合わせはやはり絶妙ですな、人気作家殿。と深く感心してしまった。


 「マスカレード」という歌がある。私より少し若い人たちはtrfというかもしれないが、思いだすのは、「This Masquerade」のカーペンターズの曲。レオンラッセルの作品だ。意味もわからず聞き惚れていた学生時代が懐かしい。それはまさに自分のイブか。ずいぶんと長い前夜祭。仕事を持つということは、全てマスカレードのように思えてくる。飛躍しすぎだ。