和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

69歳で。

2014-10-21 | 短文紹介
読売新聞の読書欄10月19日の
「読書情報」を見るとこうありました。

「2月に69歳で亡くなった元編集者、
鷲尾賢也さんの
『【新版】編集とはどのような仕事なのか』
が、トランスビューから出版された。・・
今回、著者略年譜などを加え、改めて
新版とした。・・2000円」

そういえば、以前古本で買ったまま、
ちらりとしか読まずにあった
鷲尾賢也著「編集とはどのような仕事なのか」
副題が「企画発想から人間交際まで」を
とりだして、読み出す。

改定前の古本ですが、買っただけで
安心して読まずに本棚に眠っていた本。
それをひらくキッカケを頂戴することの
嬉しさ。読みたいと思った時にすぐに
手にとれる気軽さとあいまって
これも読書の愉しみ(笑)。

せっかくなので、
村上春樹氏が登場する箇所を引用。

「村上春樹『海辺のカフカ』があった。
私も読んだが、ついつい読ませてしまう力がある。
・ ・内容もさることながら、編集の立場から
いうと、そこから派生した、『少年カフカ』という、
雑誌とも書籍ともつかないものの刊行の方が
衝撃であった。
少年コミック誌に模した表紙、大判の判型、
いずれもがいままでの常識を覆していた。
『海辺のカフカ』の読者との1220通に
のぼるメールのやりとりを収録したものだが、
私はこれを読んで本当に感心した。・・・
村上は目をそらしていない。本と向きあう
ことで、読者がそれぞれ論理を展開できる
という、その格好の実例がある。1220通の
メールと返事を読んでいると、他のメディアに
くらべ、読書がいかに力をもち、他者を
動かせるかがよく分かる。
インターネットという限定された閉鎖的ツールが、
逆に生きているのだ。本は不特定多数と
不特定多数をつなげる役割がある。
本を媒体にして話題が展開することは、よく
経験することだ。本のツールとしての特性を、
私たちはもう一度認識する必要があるかも
しれない。・・・・
読書は習慣性の要素も強い。一度足が遠のく
と億劫になる。その結果、出版社や編集者は、
読む力の低下を嘆くことになる。それは何も
手を打たなかったことから来る嘆きかもしれない。
・ ・・・
あらゆるものが氾濫している現代は、情報過多の
ように見えて、じつは情報過疎になっている。
そういうことに村山は気づいている。
読者が自力で本を探す力が弱くなっている。・・」
(p201~203)


あれやこれやと刺激的で
思わず、唸ってしまいます。
ウ~。ここ掘れワンワン。
コメント
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