和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

読書貯金。

2020-05-05 | 本棚並べ
読売歌壇(2020年5月4日)の俵万智選。
その二番目に取り上げられていた歌は、

貯金箱の貯金のように本棚に今読み終えた本を収める
          東京都 武藤義哉

この俵万智さんの評は
「貯金箱の比喩が、楽しい一首。
本が本棚への貯金であると同時に、
読書は心や頭の中への貯金になる。」

はい。面白かったのです。さて、一日寝て
今日になったら、その貯金をおろし、使いたくなる。
うん。最近の読書の、その貯金の使い道。

ということで、すぐに思い浮かぶ2冊がある。

一冊目は、平川祐弘訳の『いいなづけ』(河出書房新社・文庫も)。

月刊Hanada6月号の平川祐弘氏の「一比較研究者の自伝」に、
さりげなく、こんな箇所があったのでした。

「私もまた外国語の文法を教えて幸福だった。『いいなづけ』は
20余年間、教室で教えて全38章を訳し終えた。」(p358)

うん。その『いいなづけ』のペスト関連の章だけですが、
大学の講義を聴くようにして、丁寧に読み直してみたい。

二冊目は、尾崎一雄著「あの日この日」。

佐伯彰一著「神道のこころ」(教文選書・平成元年)は、
雑誌等に寄稿した文をまとめたものでした。
初出一覧を見ると、本の最後にある「お正月の思い出」は
昭和64年1月6日の北日本新聞に掲載されたとある。うん。
昭和64年は1月1日~1月7日まで。それから平成となります。

昭和63年3月の「尾崎一雄の神道回帰」と題する文が
この本にありました。それは、こうはじまっております。


「晩年の尾崎さんとは、何度かお会いして、
じかにお話をうかがう機会があった。
率直で勿体ぶった所がいささかもなく、
いかにも爽やかな感じの老人であった。
能弁というのではないが、気さくな話好きで、
端的率直にご自分の意見をおっしゃるので、
見方がくい違う場合も、こちらも遠慮ぬきで
おしゃべりが出来た。・・・・尾崎さんの語調から、
話の内容まで、今でもはっきりと思い出すことが出来る。」
(p228)

こうして「私の父は、非常な敬神家だった。
家が代々の神主だから、ということもあるだろう。
子供の頃から神道を吹き込まれたので・・・」
という尾崎一雄の本からの引用をまじえながら、
すすみます。
ここでは、文の最後を引用。

「こうした人間と自然とのつながりを重視した、
いわば自然界の一員としての人間というとらえ方は、
神道の古い祝詞のうちにもはっきりと息づいているものであった。
・・・死者に親しむ心情というのも、祖霊信仰にもとづく死者鎮魂の
儀式が神道の中核をなしてきたことを思い合わせるならば、
尾崎さんを神道につなぐ絆は、いかにも根深いものがあったと
言わずにはいられない。・・・・」(p243)

ここに、尾崎一雄著「あの日この日」が取り上げられていて
手に取りたくなりました。そのまま本棚の肥やしになるかも
しれないのですが、古本で注文することにしました(笑)。

はい。読書貯金箱。本棚積立。







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