「・・・請負報酬債務の履行を求める際には、仕事の完成債務が先に履行されていることを明らかにしなければならないというわけです。」
「ちなみに、本訴訟の請求原因に「仕事の完成」を加える理由について、司法研修所民事裁判教官室は沈黙しています。」(p113~114)
請負報酬の支払を求める訴訟においては「仕事の完成」が抽象的要件となるところ、その理由について、司法研修所民事裁判教官室は「沈黙」しているらしい。
こういう状況だと、司法試験(や研修所の起案)で説明を求められた場合、どう書くかが問題となる。
さあ、どうするか?
「受験生の多くが使っている「大島要件事実」には、それは「仕事の完成が請求権の行使要件だから」という意味不明な説明がされています()」
「多くの受験生が、この意味不明な説明を丸暗記しており、そのまま答案に書いてしまったと思われます。これには試験委員もびっくりされたことでしょう。
今回の問題は、「大島要件事実」丸暗記組を落とそうという問題作りだったのかもしれませんね。」
確かに。
「行使要件だから」という表現はトートロジーに過ぎず、説明とは言い難い。
ちなみに、裁判上、請負契約の「完成」の判断基準としては、「予定工程終了説」(請負契約の「仕事の完成」とは何を指すのか(結論:予定の工程が一応終了したとき)が用いられている。
ところが、「予定の工程を終了したか」なんて、業者にしか分からないケースも多い。
それに、「見ただけでは分からない仕事」や「無形の仕事」などというものもある。
日常で見かけるものでは、例えば、「スマホのガラスコーティング 」が挙げられるだろう(これが完成しているかどうか見分けられる人がどれほどいるだろうか?)。
だから、「工事が完成していないこと」を注文者に立証させるのは、極めて酷なのである。