今では珍しくもないスタジアムでの数万人のライブも
当時は充分な性能のアンプも、警備も、経験もなくて大変だった
と納得したのは、録画しておいたNHKのプレミアムシネマの
「エイト・デイズ・ア・ウィーク」だった
このタイトルはビートルスの歌のそれで、映画の内容は
ビートルズの足跡を伝えるものだ
少しばかり見慣れた感のある集団ヒステリーのような熱狂も
公演場所のいたるところで、これでもかと見せつけられると
その熱量は今のタレントさんに熱狂するのとは少し違う気がする
それは今見ると確かに時代の変化が起きている、、と感じさせるような
訳のわからないエネルギーに満ちているように感じられる
ただ少し不思議なのは、絶叫しているのは若い女性だった
気を失っているのも女性だった
被写体として男よりは女の方を撮りたがるカメラマンの気持ちもわかるが
多分圧倒的に夢中になっているのは女性だったように見える
でも女性の方が感覚的・直感的に新しいもの・良いもの、世の中の変化を感じ取った、、
というのとは少し違う気もする
「いつブームの終わりが来るか?」
ビートルズへのこのような意地悪なインタビューにあるように
芸能記者も音楽関係者もそして女性たちも、
一種のタレントとしてのブームの真っ只中にいるのは感じていたようだ
そしてビートルズ自身もブームの中にいることを自覚して
いつかは終りが来るのは当然、、とか、
若者の自信過剰なイケイケの終わりはない、、みたいな自負心も感じられた
映像を見ると、絶叫する女性は音楽を聞いていない、、
でも4人の若者は、まだ自分たちがみんなの前で演奏すること
そしてお金が入ってくることが嬉しくて仕方ない、、、
でも働きすぎるとストレスが発生する
彼らはオーバーワークと音楽を聞いていない人々に次第に嫌気を覚える
彼らはエンタテイナーというよりは何よりもミュージシャンだった
彼らの音楽的な進歩は、ポップミュージックの域を超えて
クラシックの作曲家の成長過程を見るような事になった
でも、それ故に彼らを支持し続けた人は熱狂した人ほど多くないかもしれない
時代を経てあの映像を見ると、音楽的なブームというより社会的なムーブメント
のような気がしてくる(今になって気づいた?)
そこで、あの映画で、今笑えるのは、日本に来たときのこと
ハッピを着て飛行機から降りてくるシーンは何度も見ているが
その他に右翼がビートルズが来日・演奏にことさら反対していたシーンがあった
彼らは一体何に反対していたのか?
音楽に?外国人ということに?それとも彼らの突破力に?
でももしかしたら、彼らは肌感覚として、
今までとは違うなにか大きな変化を起こすエネルギーを感じていたのかもしれない
(それに対する恐怖感に対抗したのか?)
それにしても、老いも若きも右も左も、あの訳もわからない熱狂の時代を見てきた身には
現代は熱狂のない時代、、とするキエルケゴールの言い分が少しわかる気がする