パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「代表制という思想」を読んで

2021年03月13日 08時27分18秒 | 

200ページほどの本で、簡単に読めると思っていたが
思いのほか読みでがあって付箋を付けておくところも多かったのが
「代表制という思想」早川誠著

ざっと読んで印象に残ったというだけで、そのままにしておくのは勿体ない本で
教科書のように何度も確認すべき本なのかもしれない

タイトルが「代表制というシステム」ではなく「代表制という思想」
というところに重要なポイントがある
人が代表制を選択し、それを使い続けるのは、困難を伴う一つの思想としている
そもそも代表制というシステム自体が、実態をよく検討してみるととてもデリケートな
危ういシステムであることがわかる
それでもそれを使い続けるというのは、一つの意志なのだ

ここでは人格を純粋化したあるべき論とか法解釈とか手続き論に終始することなく
現実に生きている人間が犯しそうな危険性をも考慮して、それでも代表制を維持する
には「努力」が必要なことを説いている
これは憲法にある「普段の努力」の一節を思い出させる

民主主義を語る際に、最近よく耳にする「熟議」も、その意味することを
ある程度のページを使い解説しているが、それは観念的な熟議とは印象が異なる
そこには
「議論の中で理解を深め、視野を広げた結果として意見が変化することを期待されている」
との一節がある
熟議は相手をやり込めることではないのだ
熟議に臨む態度としては、相手側の意見を受け入れる(従う)可能性を
予め持っていること、そのような余裕のある態度が必要とされる
しかしながら、代表は何かの代表であるという現実は、それを簡単にはさせない
こうなると、代表とされる人物の個人の判断力とかキャラクターが大きなウェイトを
持つことになりそうで、この部分が代表制を維持する際の不安定部分となる

読んでいると今まで疑問に思っていた事とか、なんとなく感じていたことが文章化されていて
なるほど!とか、やっぱり!という箇所が多くて本当に参考になった
ただこの内容が頭に定着するにはもう少し時間が必要な気がする
知らす知らずのうちに幾多の情報が整理されて、自分のものになるのは
(本を読んだことさえ忘れるくらいな)あとどのくらいの時間が必要なのだろうか

この本は2月のYoutubeで#choose大学「政治とは何か?」代表制から考える政治ー代表制民主主義ー
講師:網谷壮介(政治思想史研究者)の最後の回で紹介されたものだ

この本を選んだのは、いい選択だったと感じている

 

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