車の名前は苦もなく覚えられるのに、花の名前はさっぱりな生き方がずっと続いていた
土方歳三が「春の草五色までは覚えけり」と豊玉発句集で詠んだのは
植物に関心があまりなかった(?)いう点では、似てるなと勝手に思っている
ただ何か記憶に残っている花の名前があった
「ゆうすげ」
一時期夢中になった立原道造の詩の中に出てきた花だ
立原道造は若い時にしか作れないような、みずみずしい感覚とロマンティシズムに溢れた
ソネットを残したが、その風景を彼が過ごした軽井沢ではなく
スイスのグリンデルワルトの風景を想像しながら思い浮かべるのが好きだった
(放浪時代にグリンデルワルトのユースホステルに泊まってあたりを歩いた記憶が蘇る)
ただ「ゆうすげ」柔らかいその響きでうっとりしそうなのだが、どんな花だったかは知らないでいた
最近、庭に黄色い花が咲いた
「なんて名前の花かな?」
同居人にふと聞いてみると、返ってきた答えに少し驚いた
「ゆうすげ。庭師さんにもらって植えてもらった」
どうも今年だけでなく、何年も前からいつも咲いているらしい
花音痴だからいつも咲いているのはテッポウユリと思い込んでいた
これが、ゆうすげか!
急に立原道造の詩が現実感をもって感じられた
そこで「立原道造 ゆうすげ」とグーグルで検索して
「ゆうすげ」が出ている彼の詩を味わうことにした
そういえば名前は知ってるがイメージできない彼の詩に登場する花は
他にも女郎花(おみなえし)があった
この花の響きも柔らかだ
かれは柔らかい音の言葉をあえて使っている気がする
そしてそれが静謐な雰囲気を与える
思想性はなくても、胸をかきむしる感覚に陥る
ということで、今日は寝転びながら立原道造の本でも眺めることにするか
(雨の日の外出は面倒だし)