二階の部屋の東側のカーテンを開けると地平線のあたりで
丸く真っ赤なものが目に入った
少しづつ遅くなりつつある太陽が顔を出したのだ
こんなに赤いものだったのか、、と今更ながら驚いた
驚いたのは自分だけではなかった
朝の散歩から帰った同居人が興奮気味に話しかけてきた
「おっきな真っ赤な太陽な出てた
ほら、なんかそんな題名の歌ってあったじゃない」
部屋からそれを見たとき、自分も思い出したのはその歌だった
「美空ひばりの真っ赤な太陽、ね」
だが、そこで少し考えてしまった
真っ赤な太陽は、たった今見たように朝の太陽だ
歌詞にあるような昼間の海の太陽は赤くは感じない
ものすごく照りつけているから、太陽は凄まじい物理学的な反応を起こしているのはわかる
だが赤くはない
赤といえば、昔、槍ヶ岳から見たモルゲンロートはすごかった
常念岳の方から太陽が昇ると、紫とか赤っぽい色が辺りを包んでいく
太陽が昇るのと反対の笠ヶ岳とか双六岳の方は、言葉にできないほどの神秘的な色合いに包まれた
今でも、すごかったという印象は残っている
歌はリアルな描写をしてるわけじゃないな、、
あくまでもイメージの世界だな
フトそんなことを思った
それで人は(あるいは歌は)実態としての世界を生きているのではなく、
イメージの中の世界を生きているのかもしれない、、などと思ってしまった