パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

ウィル・スミスと浅野内匠頭

2022年04月01日 09時16分20秒 | 徒然なるままに

「ドライブ・マイ・カー」の受賞より大騒ぎになっているのがウィル・スミスのビンタ
セレモニーの真っ最中に司会者の頬を思い切りぶっ叩いた事件だ

その経緯は明らかになってきたが、ウィル・スミスの奥さんの脱毛症を
誂われたと感じた夫のウィル・スミスが司会者に怒りの鉄拳をあげたとのこと

フト、これに似た日本の事件を思い出した
江戸城、松の廊下で浅野内匠頭が吉良上野介の切りかかった有名な事件だ
なぜ浅野内匠頭が急に切りつけたのかは、実ははっきりした理由がわからないらしい
吉良上野介に常々お金を要求されていたが(よくあることだったらしい)応えず
意地悪をされていたとか、接待の手順をちゃんと教えられていなかったので
怒りを覚えたとか、浅野内匠頭の家系に切れやすい傾向があったとか、、
いずれにせよ、しなければよかったことをしてしまった事件だ

このあと浅野内匠頭は切腹、そして赤穂藩は取り潰し、
一方何らかの理由で切りつけられた吉良上野介はお咎めなし
この不公平感はもやもやが残り、その時代の価値観とか雰囲気からすると
何もしないではいられないということで、例の討ち入りに至る

本当の話はよくわからないが、フィクションとしての歌舞伎の忠臣蔵はよくできた物語で
お涙頂戴的な要素とか劇的なところがあって、心情的に赤穂の人たちを応援したくなるようだ

今回のアカデミー賞での事件の終着点はどうなるのだろう
現実としての暴力行為を咎めるのは当然と思われるが、その心情についてどのくらい考慮されるのだろうか
殴る行為は確かに暴力だが、言葉は暴力にはならないのだろうか?
司会者が夫人を傷つけたことに気がついていなかった可能性もあるが
傷つけられた方は一気に頭に血が上るというのは理解できないことではない
(その後の行動は別として)

実は日本人が好きな忠臣蔵は自分はそんなに好きではない
いくら本懐を果たしたと言え、結果的に47人もの侍の命を奪うことになっている
目的を果たすまでの大石内蔵助の真面目さ(浅野内匠頭から受け取ったお金の出納帳をつけていたとか)
藩が取り潰しになるときには、藩のお金の配分を下級武士に厚く配ったとか
とても人間的なところは尊敬に値するが、どうしても大量の死を招いたことはやりきれない
また結果的に吉良側の守りの人間を殺傷していて彼らも犠牲者だ

あの時代の価値観を無視して今の感覚で批評するのは良くないとされるかもしれないが
それでも、嫌だな、、と思えてならない

日本の例からすれば、ウィル・スミスはアカデミー会員の失格、賞の取り消しとなるかもしれない

カッとしたことでいろんなことが起きてしまう
怒らないことに越したことはないが、人間はそう理屈通りに動くとは限らない
なんだかこれも気の滅入る話(テレビではいいネタとして騒いでいるが)



 

コメント
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