■たいげい,潜水母艦大鯨を継ぐ
3000t型潜水艦として建造が進められていた新型潜水艦が遂にそのベールを脱ぎました。そうりゅう型の写真などと共に新潜水艦を紹介しましょう。
たいげい。10月14日、三菱重工神戸工場において平成27年度計画潜水艦、8128号艦3000t型潜水艦一番艦が進水式を挙行し、臨席の岸信夫防衛大臣による命名式において新潜水艦は“たいげい”と発表されました。3000t型潜水艦の一番艦にあたり、たいげい型の一番艦となりました。たいげい、は今後艤装工事進め2022年3月に就役する計画となっています。
大鯨。旧海軍の潜水母艦名を引き継ぐものです。大鯨は1924年竣工し基準排水量は10000tで、短期間にて航空母艦へ改修できる設計となっていました。1942年に空母へ改修され艦名は龍鳳、太平洋戦争を戦い抜き1946年に解体された幸運艦です。空母を狙う大鯨、意味は違いますが潜水艦たいげい、も空母を狙う任務を担う故に的を射た艦名といえましょう。
たいげい公表値は、満載排水量のみ推測値ですが、基準排水量3000tと満載排水量4400tで長さ84mに幅9.1m及び深さ10.4m、となっています。比較対象として前型に当る潜水艦そうりゅう型の緒元は基準排水量2900tで満載排水量4200t、全長84.0mであり幅9.1mと深さ10.3m、排水量は若干増えており全長全幅は同じですが吃水のみ若干増大しました。
そうりゅう型に続く新型潜水艦、一見しますと大きさや全長と排水量では同じようになっています、するとどの部分が新型潜水艦としての新機軸であるのかが興味深い点ですが、本型はリチウムイオン電池を採用した新時代の潜水艦です。世界の通常動力潜水艦は充電方法の多寡はあっても鉛電池が基本となっていました。充電効率は年々進んでいましたが。
リチウムイオン電池。スマートフォンなどで実感されている方は多いと思いますが、鉛電池全盛の初期の携帯電話と比較し明らかに短時間でも効率の高い充電が可能となっていますが、これは潜水艦動力として見た場合も同様で、何しろ通動力潜水艦は鉛電池時代に完全充電まで十数時間を要しつつ、しかし最高速力では数十分しか航行できなかったのです。
AIP方式。世界の潜水艦は従来の潜水艦がディーゼル発電機を駆動させて電池に充電し潜航する、発電機を動かすには燃焼の為に酸素が必要、という性能への天井に対して、潜ったまま発電できる燃料電池やスターリング機関を活用しました。尤も原子力へ政治的制約の無い諸国は思い切って原子力推進を採用しているのですが。するとAIPは出力が小さい。
そうりゅう型潜水艦は川崎12V25/25SBディーゼルエンジンと川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関を採用しています。脅威の少ない海域にてディーゼルエンジンを駆動させ完全充電し、脅威海域において哨戒機の警戒などからスノーケル等を海面上に出せない状況では、スターリング機関により航行、攻撃運動の際等に電池を使用しています。
川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関はこの分野で先進的なスウェーデンのコックンス社製エンジンをライセンス生産しています。実は海上自衛隊も、うずしお型潜水艦の時代に酸化マグネシウムと淡水を接触させた際の熱反応を利用した独自のスターリング機関を開発していましたが、機関だけで400tを越えるものとなり、開発断念しました。
そうりゅう型潜水艦の川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関による速力は数ノット、といわれています。2ノットか9ノットかは発表されていません、最高速力20ノットと比較すると低速です、ただ、これまでの潜水艦はバッテリーを使い切ると浮上し降伏するか撃沈、と厳しい選択肢でしたので、数ノットでも心強い性能であった事は事実です。
おうりゅう。そうりゅう型潜水艦の11番艦ですが、防衛装備庁の研究によればAIP機関である川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関を取り外して、リチウムイオン電池を搭載した場合は、誇張も含むと思われますが、数日の訓練ならば出航して帰港するまで充電が不要、といわれるほど蓄電能力と航続距離が延伸される事が判明し、決断しました。
おうりゅう型潜水艦、将来にはこう区分されるのかもしれませんが、そうりゅう型潜水艦の最後の二隻はリチウムイオン電池潜水艦として建造されています。しかし、AIP区間等の設計はリチウムイオン電池搭載に特化したものではなく、使い難かった背景があるのかもしれません。たいげい、たいげい型潜水艦はリチウムイオン電池搭載に特化した設計だ。
日本海軍は潜水母艦として、豊橋、駒橋、迅鯨、長鯨、そして大鯨、剣埼、高崎、と建造しています。実は新潜水艦はリチウムイオン電池推進方式故に軽巡洋艦の艦名となった河川名が冠せられるのかな、と考えていたのですが、思い切って巨大な潜水母艦の艦名を踏襲した新型潜水艦、たいげい進水へ海上自衛隊が寄せる期待が、垣間見えるようですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
3000t型潜水艦として建造が進められていた新型潜水艦が遂にそのベールを脱ぎました。そうりゅう型の写真などと共に新潜水艦を紹介しましょう。
たいげい。10月14日、三菱重工神戸工場において平成27年度計画潜水艦、8128号艦3000t型潜水艦一番艦が進水式を挙行し、臨席の岸信夫防衛大臣による命名式において新潜水艦は“たいげい”と発表されました。3000t型潜水艦の一番艦にあたり、たいげい型の一番艦となりました。たいげい、は今後艤装工事進め2022年3月に就役する計画となっています。
大鯨。旧海軍の潜水母艦名を引き継ぐものです。大鯨は1924年竣工し基準排水量は10000tで、短期間にて航空母艦へ改修できる設計となっていました。1942年に空母へ改修され艦名は龍鳳、太平洋戦争を戦い抜き1946年に解体された幸運艦です。空母を狙う大鯨、意味は違いますが潜水艦たいげい、も空母を狙う任務を担う故に的を射た艦名といえましょう。
たいげい公表値は、満載排水量のみ推測値ですが、基準排水量3000tと満載排水量4400tで長さ84mに幅9.1m及び深さ10.4m、となっています。比較対象として前型に当る潜水艦そうりゅう型の緒元は基準排水量2900tで満載排水量4200t、全長84.0mであり幅9.1mと深さ10.3m、排水量は若干増えており全長全幅は同じですが吃水のみ若干増大しました。
そうりゅう型に続く新型潜水艦、一見しますと大きさや全長と排水量では同じようになっています、するとどの部分が新型潜水艦としての新機軸であるのかが興味深い点ですが、本型はリチウムイオン電池を採用した新時代の潜水艦です。世界の通常動力潜水艦は充電方法の多寡はあっても鉛電池が基本となっていました。充電効率は年々進んでいましたが。
リチウムイオン電池。スマートフォンなどで実感されている方は多いと思いますが、鉛電池全盛の初期の携帯電話と比較し明らかに短時間でも効率の高い充電が可能となっていますが、これは潜水艦動力として見た場合も同様で、何しろ通動力潜水艦は鉛電池時代に完全充電まで十数時間を要しつつ、しかし最高速力では数十分しか航行できなかったのです。
AIP方式。世界の潜水艦は従来の潜水艦がディーゼル発電機を駆動させて電池に充電し潜航する、発電機を動かすには燃焼の為に酸素が必要、という性能への天井に対して、潜ったまま発電できる燃料電池やスターリング機関を活用しました。尤も原子力へ政治的制約の無い諸国は思い切って原子力推進を採用しているのですが。するとAIPは出力が小さい。
そうりゅう型潜水艦は川崎12V25/25SBディーゼルエンジンと川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関を採用しています。脅威の少ない海域にてディーゼルエンジンを駆動させ完全充電し、脅威海域において哨戒機の警戒などからスノーケル等を海面上に出せない状況では、スターリング機関により航行、攻撃運動の際等に電池を使用しています。
川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関はこの分野で先進的なスウェーデンのコックンス社製エンジンをライセンス生産しています。実は海上自衛隊も、うずしお型潜水艦の時代に酸化マグネシウムと淡水を接触させた際の熱反応を利用した独自のスターリング機関を開発していましたが、機関だけで400tを越えるものとなり、開発断念しました。
そうりゅう型潜水艦の川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関による速力は数ノット、といわれています。2ノットか9ノットかは発表されていません、最高速力20ノットと比較すると低速です、ただ、これまでの潜水艦はバッテリーを使い切ると浮上し降伏するか撃沈、と厳しい選択肢でしたので、数ノットでも心強い性能であった事は事実です。
おうりゅう。そうりゅう型潜水艦の11番艦ですが、防衛装備庁の研究によればAIP機関である川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関を取り外して、リチウムイオン電池を搭載した場合は、誇張も含むと思われますが、数日の訓練ならば出航して帰港するまで充電が不要、といわれるほど蓄電能力と航続距離が延伸される事が判明し、決断しました。
おうりゅう型潜水艦、将来にはこう区分されるのかもしれませんが、そうりゅう型潜水艦の最後の二隻はリチウムイオン電池潜水艦として建造されています。しかし、AIP区間等の設計はリチウムイオン電池搭載に特化したものではなく、使い難かった背景があるのかもしれません。たいげい、たいげい型潜水艦はリチウムイオン電池搭載に特化した設計だ。
日本海軍は潜水母艦として、豊橋、駒橋、迅鯨、長鯨、そして大鯨、剣埼、高崎、と建造しています。実は新潜水艦はリチウムイオン電池推進方式故に軽巡洋艦の艦名となった河川名が冠せられるのかな、と考えていたのですが、思い切って巨大な潜水母艦の艦名を踏襲した新型潜水艦、たいげい進水へ海上自衛隊が寄せる期待が、垣間見えるようですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
11月号の軍事研究でも元海将の矢野さんが、どうしても原潜を保有すべきと力説してます。
5~6年以内に国産で可能としている。
やる気があればできると。
対中国・北朝鮮・ロシアを考えれば原潜を持つしかないとのこと。
通常型潜水艦とは同じ潜水艦とは言えないぐらい能力に差があるとの事。
中国の潜水艦はまだ雑音が大きいが必死で研究しているから今から対策しないと間に合わない。
そうとなれば原潜を保有するしかないでしょう。
自分は原潜と通常型のハイローミックスで国防すべきと考えます。
日米原子力協定が改定されてアメリカが日本に原子力潜水艦導入を防衛負担から厳しく迫る、ヴァージニア級原潜をアメリカの言い値で買わなければ在日米軍撤退だ、というような状況となれば、可能かもしれませんね
予算は限られていますし、なによりも予算を増額することができたとして、定数割れの即応機動連隊装備充足や総合近代化師団の装甲化に定数割れの戦闘ヘリコプター、老朽化に置き換えの追いつかない哨戒機や哨戒ヘリコプター、導入時期の具体化が遠い無人哨戒ヘリコプター、スタンドオフ装備への置き換え開始の遅れ、次期戦闘機国産開発費用、こうした問題があります。予算が増額されないならば、上記の半分は諦めなければならない状況ですが、原子力潜水艦という新しいものを実用化するならば、上記課題の全部を諦める必要が出てきます。装備体系一つとって抜本的な景気回復により防衛費を毎年一割、は無理として5%程度増額できたとしても中期防換算で10期単位先でようやく検討できる水準なのかな、と。
一部のリベラルは日本が一方的に軍縮を行って
そのリソースを社会保障に投入したり
分数の計算もできない大学生の学費を税金で無償化することを主張したりと
正直、理解できません
(大体、高齢化が進んでいるのに社会保障費を増額したら
国にいくらお金があっても足りません)
将来的には原子力潜水艦でないと役に立たない時代が
来てしまうような気がしなくもありませんが