物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

数学の教材研究

2010-11-18 11:30:55 | 数学

大多数の方々にとってはまた数学の話かと鼻についていることだろうが、申し訳しありません。

昨日、友人のNさんに会いに町の中心部を抜けて行った。いつかも書いたようにNさんと私の家は町の正反対の方にある。そして小一時間ぐらいNさんと話をした。

彼はGauss積分の新しい計算法(彼の長年の教育経験から得られた結果)をエッセイに書いてくれたのだが、その文章の一部の言葉遣い等の修正してもらうために出かけたのである。

それは簡単に話が済んだのだが、彼によると、私も知っている2重積分を用いたGauss積分の評価の仕方以外にもいくつかのGauss積分の評価法があって、彼が知っているだけでも5つの方法があるという。

それで「それをいつか数学エッセイに書いてください」とお願いをした。そのときに一つの定理や公式等のいろいろな導出法を知ることは数学の教え方の教材研究だと思うと私がいうとNさんもまったく同意見であった。

私は動物の昆虫採集にはまったく関心がないが、ある意味で数学の教材の採集をやっている。

すでに愛媛県数学教育協議会の機関誌「研究と実践」に載せた、「オイラーの公式の導出」などはその最たるものである。それであのエッセイをいつか『数学・物理通信』に再録してもいいなと考えはじめている。

教材研究といってもその全部を学校で教える必要があるなどとはもちろん思っていない。これは教える教師が知っていればいいことである。

Nさんによれば、日本ではそういった教材研究を発表する雑誌がないということである。ところが、世界的に見るとそういった雑誌はあるらしい。すなわち、日本での関心のあり方が、世界と微妙にずれている。

新しい学問分野を開いたり、新しい発見をする研究の重要さはもちろんいうまでもない。が、それだけでは教育の分野では十分ではないといつも考えている。

西欧の輸入学問の受け売りという域を出ないのではないか。自分で考え抜くということや教育の分野でも新しい観点をもつということが必要であろう。

小学校や中学校等の数学では「水道方式」や「量の理論」がその道を開いたし、大学の基礎数学に関しては「森ダイアグラム」という見通し(Perspective)もある。

また、宮本敏雄氏の『新しい微積分教育の方向』といった試みもある(注)。だから、日本の独自なものがないとは思わないが、また別の方向へも指向したいと思っている。

いま私は平方根の近似値の求め方とか不等式の証明法に関心がある。さらにテイラー展開とか微分の応用でどんなことができるかにも関心がある。

Nさんは数学では不等式の証明が重要なのだという。この見解には異論があるかもしれないが、それは一つの数学の見方なのであろう。そして不等式について書かれた数学書はまったくないわけではないが、少ないと以前に言われていた。

(注)『新しい微積分教育の方向』は国土社の発行の『数学教室』の連載記事で、その後数学教育協議会の小冊子として発行された。