佐伯泰英さんはいまはやりの時代劇小説の作家である。数ヶ月前まで土曜日のNHKのテレビの30分の時代劇の原作者としてその小説がドラマ化されて放送されていた。彼がいま岩波のPR誌「図書」に連載ものを書いている。もっともこれは小説ではなくて、エッセイである。
彼は長い間スペインにいたそうで、そのころは写真家であった。その後日本に帰り、作家となったが、現在はとても売れっ子の時代劇小説の作家である。もっとも彼の小説は単行書では発行されずに一挙に文庫で発行されているという。その発行部数はとても多いので、超売れっ子の作家である。
彼が熱海に仕事場を設けたが、その背後に岩波書店の別荘「惜櫟荘」があり、そこを岩波書店が売りに出すときに買い入れた。そしてこの「惜櫟荘」を改築するということに関したエッセイを書いているのだ。
だが、その「惜櫟荘」を改築の話の間に、彼のスペイン滞在中の話がはさまっており、一種の彼の自伝風のエッセイになっている。12月号でもうすでに8回になるのであるが、彼がスペインで関係した作家堀田善衛とその家族との交流とかその他が語られており、なかなか好ましいエッセイである。彼は堀田家に一時居候をしており、車の運転手を務めていたという。
このエッセイはなかなか興味あるものであるから、そのうちに岩波書店から単行書として出版されるであろうから、もし「図書」をとっていない人はその本の出版を楽しみしておいて欲しい。