物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

多元環

2014-12-03 12:39:25 | 日記
私の著書『四元数の発見』がE大学の図書館に1冊入っている。それは著者としては有難いことだが、その書誌資料を見ると多元環という分野に分類されている。

冗談みたいだが、著者である私が多元環とは何かよく知らない。だが、図書館の方が私よりも賢くてちゃんと分類されて、いわゆる書誌情報ができている。

体とか群は知っているのだが、環については知らない。体と環との違いが分かれば,環についてわかったことになる。それであわてて数学の本を調べたら、体とは可換環で、0以外の元がすべて単元(単位元ではない)であるとき、このような集合を体というとある。

単元の定義を見るとどうも0以外の元が積の演算に対して逆元があるということらしい。

もっとも、ちょっと注意が必要である。逆元があると単純に言ったが、ax=xa=1という等式をみたすxが存在するときaを単元というと定義されている。

ところが四元数の場合には積の順序が交換可能ではないから、ax=1のxがあったとしても、xa=1のxは存在しないかもしれない。だから単元の定義を、逆元が存在するといういい方だとちょっと単純化しすぎで正しくない。

普通の数(例えば実数とか複素数)は和と積の演算が定義されており、それも和と積の演算について交換法則、結合法則、分配法則が成り立つ。

四元数では和については交換法則、結合法則は成り立つが、積の演算においては結合法則は成り立つが、交換法則は成り立たない。

数学の本を参照して環の定義を書いておくと

環とは空でない集合Rで,2種類の演算、加法と乗法が定義されている。Rの任意の2つの元a, bに対してその和a+bと積abがそれぞれRの中で一意的に決まるとする。これらの演算についてつぎの法則(1)~(6)が成り立つときRは環であるという。

(1) a+b=b+a (加法の交換法則)
(2) (a+b)+c=a+(b+c) (加法の結合法則)
(3) 0で表される1つの元があって、Rのすべての元aに対してa+0=aが成り立つ。
(4) Rの任意の元aに対してa+x=0なるようなRの元xが存在する。
(5) (ab)c=a(bc) (乗法の結合法則)
(6) a(b+c)=ab+ac, (b+c)a=ba+ca (分配法則)

が定義である。

体だと0以外のすべての元aに対してax=xa=1となる逆元xが存在するが、環ではこれは保証されていない。さらに、積について交換法則ab=baが体では成り立つが、これも環では一般に成り立たない。

少なくとも四元数環Hと表される数ではここが違っている。