「数学・物理通信」に投稿された、「電磁気法則の共変性」という論文の投稿によって、初等数学への関心に偏っていた私の関心を物理へと引き戻すという作用を起こしてくれた。
私にとって、まだ十分なインパクトにはなっていないかもしれないが、以前とはちがってきたことは事実であろう。いやいやながら、この論文を読んでいたのだが、その論文を受けつけるかどうか判定するために、いくつかの電磁気学の相対論的記述の箇所を読む必要がでてきた。
こういうことでもなければ、絶対に自分ではこれらの電磁気学の本を読んだりしなかったことは確かである。私などは年寄りだから、電磁気学は(E, H)対応で書かれた本を読んだし、先生の教え方も(E, H)対応であった。
いまでは(E, B)対応の本がほとんどである。それに電磁気の法則を相対論的に書き直すときにも、そのメトリックの取り方が私のなじんできたPauliメトリックではなく、Feynmanメトリックになっている。
名著の誉れの高い砂川重信『理論電磁気学』(紀伊国屋書店)は以前にこのブログで電磁場の多重極展開の意味の説明がある貴重な書として推奨したが、相対論的な記述の部分にはPauliメトリック風でちょっと現代的なメトリックに書き換えしたほうがいいように思った。
もともと私の以前に書いたエッセイ「特殊相対論入門」(『数学散歩』所収)も(x, y, z, ict)ととっていた。時代を感じさせるが、「研究と実践」(愛数協)の発表が1986年だったことを思い起こせば、しかたがなかったかもしれない。