第168回臨時国会が10日(月)、始まりました!「国会傍聴記」もいよいよ本格スタートです!
これから11月10日(土)までの62日間の会期中に、私たちがかつて見たことがないような光景、聞いたことがないような論戦が繰り広げられるでしょう。歴史の分水嶺です。不安を感じる方も多いでしょうが、一人一人が歴史の証人になるチャンスなんです。
■国会傍聴記 9月10日衆院本会議 総理所信表明演説■
まずは、安倍晋三首相の所信表明演説が衆議院本会議場と参議院本会議場で1回ずつ行われました。忙しい人のためにかいつまんで言うと「特筆すべきことはない」20分弱の演説でした。が、いくつか思いついた点を上げてみますね。(衆参とも同じ内容ですが、私が聞いたのは衆院本会議です)。
写真は共同通信、第168臨時国会で所信表明演説をする安倍首相=10日午後、衆院本会議場
【改革を止めてはならない→首相続投】
まず参院選で大敗したにもかかわらず、安倍さんが引き続き政権を担当する理由を説明。この中で「戦後レジームからの脱却」「改革を止めてはならない」という選挙前からのキーワードを使いました。それは自民党が政権から離れるのが一番だと思うのですが。
参院選惨敗の一因である中央と地方との地域格差の問題では「県境なき医師団」を提示しました。(たぶん初めて?)。
【日本人24名が亡くなった「9・11」→テロ特措法継続すべし】
第168回臨時国会の与野党攻防の最大のカギは、「テロ対策特別措置法」(11月1日期限切れ)。約6年前の「9・11同時多発テロ」に対して同年11月にできた法律です。インド洋(アフガニスタン周辺)で自衛隊が米国などの軍への給油などの後方支援活動をする根拠となっている法律です。これを延長するか、新しい根拠法をつくらないと、自衛隊は給油活動をやめなければならず、総理はこれが継続できなければ内閣総辞職する考えを記者会見を示唆しました。
所信表明では「総辞職」についてはふれず、「米国同時多発テロで24名もの日本人の尊い命が失われたことを忘れてはいけません」と語りました。米同時多発テロは日本にも他人事ではない。つまり、「ブッシュ大統領に頼まれたから、延長するんじゃないんだよ~~」という趣旨のメッセージです。この発言をどう解きほぐしていくかは、12日(水)~14日(金)の野党の代表質問に期待したいです。
【「美しい国づくり」が出てこない!?】
演説を聴いていて「あれっ?」と思いました。「美しい国」という言葉が出てこないのです。まるっきり、出てこないので、参院選惨敗で封印したのかと思いました。
演説中、「世界一災害に強い国づくり」などあいまいな文言が並びました。(「災害に強い国づくり」って、国によって地理的条件が違うのに何をもって「世界一」というのでしょうか?)
「主張する外交」という対外姿勢は就任時から変わらず、首相の1年間の外交方針からも評価できます。
さて、演説の終わり、最後の最後までためて、「美しい国づくり」が出てきました。
「私の目指す政治とは我が国をとりまく厳しい環境変化に対応しながら、日本が本来持っている今も生活の中に息づいている自立の精神、他者への思いやり、あたたかさといった価値を守り、伸ばしていくこと、そして国民ひとりひとりが日々の生活において真の豊かさ潤いを実感できるようにすることすなわち美しい国づくりを進めていくことであります」と語りました。
「すなわち」というのですから、これをひっくり返すと、
美しい国づくりとは、(=)国民ひとりひとりが日々の生活において真の豊かさ潤いを実感できるようにすることである。
と定義できることになります。よく覚えておきたいものです。
【中川幹事長退任で重しが取れた?】
このほか、選挙後の修正点としては、財政改革について、「2011年にプライマリーバランス(基礎的な財政の収入と支出)を黒字化するとの目標に向け、揺るぎない歳出・歳入一体改革の道を進みます」と語りました。ここは少し違っていました。「確実に黒字化する」(1月施政方針演説)→「黒字化するとの目標に向け」とハードルを下げています。
ただ、「歳出歳入一体改革」(税金のムダを減らし、増税なども同時に行う)をハッキリ言った印象がありました。これは自民党幹事長だった中川秀直さんが「上げ潮路線」という景気回復を優先する経済・財政政策を進めていたことに対して、参院選惨敗の責任をとって中川さんが幹事長を辞めたことで重しが取れ、総理は持論をハッキリ言えるようになったのではないかと思いました。
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第168回臨時国会召集を前日にひかえて、安倍晋三首相が極めて重要な発言をしました。主権者(有権者)にとって、総理のこの記者会見での発言(=国民との約束)は少なくとも11月1日まで、けっして忘れてはいけないものだと思います。
給油、継続できなければ退陣 安倍首相「職を賭す」(朝日新聞) - goo ニュース
安倍首相は9日、シドニーでの記者会見で、自衛隊の給油活動について「国際社会から高く評価、期待されている」として、「継続のための法案を提出し、成立を果たしていかなければいけない」と強調した。
「活動が継続できなければ内閣総辞職する覚悟か」との質問に、「あらゆるすべての力を振り絞って職責を果たしていかなければならない」と答えた後、数秒考え、次のひと言を加えた。「当然、私は職責にしがみつくということはありません」
これは11月2日の時点で、アフガニスタン周辺のインド洋で米軍などへの海上自衛隊の給油活動ができなかったら、首相を辞めるという意味に他なりません。
まあ、この発言の真意をあれこれ考えてみましたが、どうもはっきりしませんので、今回は下町の太陽の考えは書きません。
ただ、10日発売の夕刊フジ2面(2007年9月11日付B版)に興味深い見方がありましたので、ご紹介します。
政治アナリスト・伊藤惇夫氏の話「民主党にしてみれば、安倍首相で総選挙をしたいわけだから、ポスト安倍次第ではあるが、総辞職されたら困ってしまう。『辞めるぞ』というのは、民主党に対する脅し、ブラフになる。そういう意味では『オレで総選挙したかったら法案を通せ』という開き直りともいえる」
この見方は面白いですね。とはいえ、ほかの見方もできるでしょう。いずれにしろ、この発言に対する答えは2ヶ月以内に答えはでます。
【追記9月10日午後23時】
首相官邸ウェブサイトで、記者会見の全文を確認したのですが、よく読むと、「総辞職」とは言っていませんね!?
記者の「先ほどのインド洋での給油活動の継続の関連でお伺いするが、先ほど総理は継続に全力を挙げて取り組むと、職を賭して取り組んでいくと仰ったが、これは継続が叶わなかった場合には、内閣総辞職するという覚悟で臨むと、そういうふうに理解してよいか?」と質問しました。これに対して安倍首相は
「私が申し上げたのは、継続を可能にするためには、あらゆる努力を払わなければいけないということである。私の責任において、職責において、あらゆる全ての力を振り絞って、職責を果たしていかなければならないと考えている。当然、私は、私の職責にしがみつくということはない」
これは内閣総辞職を意味していないですね。ただ、新聞社や通信社など報道機関が「内閣総辞職」と受け取らざるを得ないと思います。読売新聞夕刊1面(朝刊は休刊)は、「内閣総辞職」を少し打ち消す小見出しを付けていました。
【11月1日まで絶対保存します! 安倍総理のAPEC首脳会議における内外記者会見・全文】(色・ゴチック部分は下町の太陽)
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/09/09press.html [テキスト版・首相官邸website]
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg1372.html[動画版・政府インターネットTVwebsite]
【安倍総理冒頭発言】
今回のAPEC首脳会議では、気候変動とエネルギー安全保障について、地球環境の将来やエネルギー資源の有効性を考慮した上で、どうすれば世界全体の繁栄が確保できるかという視点から、突っ込んだ議論を行った。
私からは、「美しい星50」の構想を説明し、発展著しいアジア太平洋地域で、気候変動問題が重要であること、そして日本が省エネルギー技術などで貢献することを強調した。そして、各国首脳から理解と評価を得ることができた。首脳宣言は、「美しい星50」を反映をしている。また、エネルギー効率の向上、森林面積の増加についての数値目標を含む内容となった。今回の成果は、北海道洞爺湖サミットにつながる進展であると考えている。
今回の会議では、WTOドーハ・ラウンド交渉についても、首脳間の認識を特別の文書としてまとめることができた。
個別の会談については、基本的価値と戦略的利益を共有する日米豪において、初めての首脳会談を行った。この会合においては、地域の平和と安定のため、三カ国の連携の重要性を確認するとともに、米豪両国首脳から、テロとの闘いについて、日本の貢献に対して高い評価、謝意が表明された。私からは、日本として、テロとの闘いを継続していく意志について説明をした。これは、ブッシュ大統領との日米首脳会談においても、説明をしたところである。国会の状況は大変厳しいが、このように国際的な公約となった以上、私には大きな責任がある。テロとの闘い、現在行っている自衛隊の補給活動を継続させるためには、あらゆる努力を行わなければならない、このように決意をしているところである。民主党をはじめ、野党の皆様のご理解をいただくために、職を賭して取り組んでいく考えである。
二国間会談については、ブッシュ米大統領、プーチン露大統領、ハワード豪首相、そしてカルデロン墨大統領と個別に会談を行った。二国間の関係について、また、国際的な情勢について協議を行った。
最後に、今回、オーストラリア政府そして国民の皆様から、大変暖かい歓迎をいただき、この美しいシドニーの地で歓待をいただいたことに感謝を申し上げたい。
【質疑応答】
(質問)
ブッシュ大統領に対して、インド洋での給油活動を継続するためには最大限の努力をすると伝えられたが、明日からの臨時国会では、テロ対策特措法を延長する法案を提出するか、それとも初めから新たな法案を提出するのか。また、場合によっては、法案の提出前でも、民主党などと党首会談を行う用意はあるのか。
(安倍総理)
9・11同時多発テロにおいては、24名の日本人の尊い命が奪われた訳である。このことを忘れてはならない。「テロとの闘い」について、国際社会が今、連携して取り組んでいる。今後ともテロを許してはならない。その中において、国際貢献を果たしていくということは、私の主張する外交の根幹の一つであり、何としてもこの活動は継続をしていかなければいけないと考えている。
国際社会から高い評価、そして期待されている自衛隊の補給活動を継続していくための法案をこの国会に提出をしなければならない。そして提出をした以上、成立を何とか果たしていかなければなりません。
提出をするにあたって、まず、民主党をはじめ、野党、特に民主党の皆様のご理解を得るために、私はあらゆる最大限の努力を払わなければならないと考えている。そのために、全力を尽くしていく、職を賭していくという考えで臨んで理解を求めていかなければならないと思う。小沢党首との党首会談についてもなるべく早い段階でお願いしたいと思っている。
(質問)
総理は、引き続き日豪EPAにコミットされているか。今回のハワード豪首相との会談を通じ、何らかの進展を得ることが出来たか。
(安倍総理)
日豪両国は、まず、豪州は日本にとって、鉄鉱石あるいは石炭、食料等、重要な資源の供給国であり、また豪州にとって日本は、最大の貿易相手国、そして、基本的な価値を共有する両国であります。両国がしっかりと連携を強化していくことは、両国の未来にとって、大変重要なことであり、地域の発展にも資すると考える。今までもEPAを結んだ国々との貿易投資が飛躍的に増大している。日豪においても、EPAを結ぶことにより、両国の関係はもとより、両国それぞれが経済を発展させていくことにつながっていくことを確信している。
EPAについては、ハワード豪首相との間で、交渉については、お互いのセンシティビティーに配慮しつつ、特に、日本にとっての農業の重要性を踏まえながら、建設的な議論を行いたいと確認したところである。
(質問)
先ほどのインド洋での給油活動の継続の関連でお伺いするが、先ほど総理は継続に全力を挙げて取り組むと、職を賭して取り組んでいくと仰ったが、これは継続が叶わなかった場合には、内閣総辞職するという覚悟で臨むと、そういうふうに理解してよいか。
(安倍総理)
私が申し上げたのは、継続を可能にするためには、あらゆる努力を払わなければいけないということである。私の責任において、職責において、あらゆる全ての力を振り絞って、職責を果たしていかなければならないと考えている。当然、私は、私の職責にしがみつくということはない。
(質問)
本日、安倍総理はハワード豪首相と日豪安全保障協力について協議されたと承知している。この分野において、豪州が日本と協力できる具体的な例は何か、また、自衛隊が共同訓練のために豪州を訪問する予定はあるか。訪問する場合、いかなる時期に、どの程度の規模の自衛隊員が参加するのか。
(安倍総理)
オーストラリアと我が国は、アジア太平洋地域の平和と安定を考える上において、不可欠なパートナーであると思う。その上において、安全保障協力に関する、日豪の共同宣言を発したわけである。そして、「2+2」の会合を行った。日豪の安全保障協力関係は、近年、急速に緊密化していると言っていい。本日合意した行動計画は、実務的な安全保障協力を更に前進させるものである。これを着実にフォローアップしていかなければならないと思う。共同訓練の規模等々、その実施については、答える材料をもっていないが、いずれにせよ、日豪で安全保障の協力を進めていくことは、地域の安定、そして平和にも大きく貢献している。それは、日豪両国の共通の認識であると思う。
(質問)
世界経済の不安定要因になっているアメリカのサブ・プライム・ローンが、日本及び世界経済に与えている深刻な影響をどのように捉えているか。日本政府や日本銀行が、どのように対処していくべきか。
(安倍総理)
我が国の経済は、大局的には、息の長い回復を続けていると考えている。今後とも、海外の市場動向も含めて、様々な経済指標に注意を払っていく必要があると考えている。
今回のAPEC会合においても、ご質問の点について、どう判断しているかということについて、過剰な反応をしてはいけないという判断もあったようである。
日本銀行の個々の金融政策については、私から口を挟むことは差し控えたいと思うが、ただ、これまでも各国の中央銀行において、適切な対応をとってきていると考えており、今後共、それを期待したいと思っている。