【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

岡田をなめるな 第177通常国会で、衆院民主党、要所に主流派を配置

2011年01月22日 14時14分44秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

(固有名詞が多いので、未定稿です)

 21日内定した第177通常国会の衆院民主党の委員会人事が波紋を呼んでいます。その前に、内閣改造・党人事でなく、これまで話題になることが少なかった国会人事が話題になってうれしいです。既に当ブログは、衆院民主党の全常任委員会・特別委員会の配置表を入手していますので、それをもとに書きます。

 実は、委員長は常任、特別とも、9月代表選で小沢一郎さんの推薦人になった人も含めて全員続投しています。

 ただ臨時国会の配置のままだと、手直しが必要な部分はありました。例えば、1年生議員の宮崎岳志さんが、厚労委員と財金委員を兼ねていました。しかし、両委員会とも政権の命運をにぎる予算関連法案があり、合計9本になります。そして日切れ法案(予算関連法案)の採決の時間は重なることが多いので今回、財金委員兼務は解消されました。同期が多いので、「委員の差し替え」はやりやすいですが、それに伴う煩雑な事務からトラブルが生じかねず、それを未然に防げて良かったです。

 9月の代表選で、菅直人総理を支持し、仲間を集めて官邸に政策提言をした人などはポジションが良くなり、一方で、小沢系が要所から外されている傾向はたしかに見て取れます。しかし、特別委員会の理事になっていたり、そもそも人数の関係がありますから、要所から完全に一掃されたわけでもありません。

 例えば、イチバン要所の議運理事では、小沢・鳩山系の松野頼久筆頭理事、小沢系とされる高山智司さん、村井宗明さん、横山北斗さんの3理事が留任し、引き続き前線部隊を率います。

 花形で、早ければ月末から委員会審議が始まる、予算委員会。ここは、鳩山・小沢系の川内博史理事、小沢側近の岡島一正さんが外れ、手塚仁雄さん、泉健太さんが理事に送り込まれました。が、若泉征三さんも理事に新任しますから、小沢完全排除ではありません。

 与党の予算委員は、長時間イスに座り、基本的にTVに映るだけという存在ですが、地元に帰ったときの効果はてきめんのようです。ここも小沢秘書出身の川島智太郎さん、小沢ガールズの三宅雪子さん、早川久美子さん、北辰会会長の黒田雄さん、一新会会員の糸川正晃さんらは外れました。民主党最高顧問・倫理委員長の渡部恒三さんは引き続き続投、政権交代前後でもう5年ぐらい予算委員を務め、「恒三さんは議会の子だ」という感じがします。新しい予算委員には、菅・岡田執行部主流系の石毛子・民主党副代表(女性の衆院議員では結党後初の副代表就任)のほか、副幹事長の本多平直さん、元副幹事長の生方幸夫さんらが入りました。また、実際には質疑に立っていた、城島光力・民主党政調会長代理も予算委員となり、「党政調と内閣の一元化」に向けて、ますます分かりやすい体制になりました。このほか、比例単独「いちもく会」でも、金森正さん、竹田光明さん、水野智彦さんら、岡田幹事長の評価が高い人が予算委員となりました。いわゆる「チルドレン」は、1年生議員で唯一質問している鹿児島2区(奄美群島含む)比例復活の1期生打越明司さんや、それから高邑勉さんら、派手さを嫌う実務家タイプの1年生が起用されています。1年生の中でも、目立ちたがり屋は除外されました。中堅の実力派では、大串博史さん、小川淳也さん、津村啓介さんら「政務三役帰り」が入っています。出番は少ないでしょうが、質疑を聞いてみたい人たちです。ただ、小沢系でも、自治労出身の稲見哲男さんが入っていて、予算委員として全体的によくできた厚生だと思います。

 小沢系は特別委員会の理事に多く就任しました。青少年問題特別委で、岡本英子理事、海賊・テロ特別委で、岡島一正理事・中野譲理事、拉致問題特別委で鷲尾英一郎理事、科学技術・イノベーション推進特別委に熊谷貞俊理事といった面々です。

 パシフィック・パートナー(TPP)に関して、専門的・矮小化がみられる農林水産委員会もていねいな人事になっています。まず小沢系の中根康裕筆頭理事が、災害対策特別委の筆頭理事に回り、代わりに津島恭一さんが農水委の筆頭理事になるという交換トレードがありました。農水委の人事に関して「小沢外し」とツイッターなどで発言している議員もありますが、実際には理事に仲野博子さん、梶原康弘さん、委員に柳田和己さん、金子健一さん、野田国義さん、加藤学さん、石山敬貴さん、中野渡詔子さん、石原洋三郎さん、山岡達丸さんら小沢系が目白押しです。ところで、北辰会の代表世話人というのでしょうか、それを務めている京野公子議員が、「小沢派追放!」と主張していますが、実際には、新しく山岡達丸さん(山岡賢次副代表の子息)が加わるなど、「小沢派」の人数は変わらず。京野さん、イタイです。小沢一郎さんが、地方の議員が農水委に大挙して押し寄せる現況をうまく利用して、小沢さんの党内での影響力を保ってきたことがうかがいとれます。なお、現時点で、パシフィック・パートナーに関する具体的な法案を審議する予定はありません。

 1年生議員でただ一人、「小沢一郎候補推薦人」に名を連ねた岸本周平さんは、財務金融委員と内閣委員という、良いポジションを得ました。一方、ただ一人「菅総理推薦人」に名を連ねた山尾志桜里さん。産後検診などがあるため、臨時国会では負担の少ない安全保障委員となっていましたが、通常国会では外務委員となり、当初提出で19本の条約と、在外公館法案(予算関連)の審査にあたることになりました。これは、内閣が他の国の政府と交渉してつくった条約の一つ一つを精査する作業になります。時間的拘束は比較的短いですが、仕事もするということで、産休なし、ということになります。

 厚生労働委員会の筆頭理事に渡辺周さんが起用されたのは安心感があります。

 財務金融委員会では、「デフレ脱却議連」の松原仁会長がついに委員の座をつかみました。一方で、財務省出身の玉木雄一郎さん、日本銀行出身の小野塚勝俊さん(続投)、野村證券出身の近藤和也さんが加わりました。JAバンク出身の小山展弘さんはしっかりと残りました。これだと、党内の政調部門会議の論戦が面白くなりそうですが、論戦の相手は自民党であることをけっして忘れないで下さい。この辺は古本伸一郎・筆頭理事がしっかりと束ねるでしょう。

 人気の総務委員会。そのわけは、①地方自治を預かるので、地方議会出身者が希望しやすい②地方税制を預かるので、国税の財金と同様に権限が強い③世論への影響力があるNHKなど放送業界を預かる④通信産業は成長分野⑤日本郵政について議論する--の5点でしょう。そのかわり、総務委は多岐にわたり、黄川田徹筆頭理事は、「日本郵政改革法を審議する特別委員会」を横に出したいという考えだそうで、検討に値する意見だと考えます。その総務委ですが、小沢系の岩手1区選出の階猛さんが理事・委員から外れました。渡辺周さんの後に、後藤祐一さんが入りましたが、基本的に続投。ここも小沢系が多いです。この「農水」「総務」に小沢系が多いと言うことは「地方の不満・不安」を体現していると言えるでしょうから、菅・岡田民主党は、地方の声にもっと耳を傾けないといけません。小沢切りとは別の話です。

 この半年ですっかり知名度が上がった政倫審は、川内博史さん、主流派の郡和子さんの理事2人が退任。郡さんは本籍地の厚労委員を続投し、予算委員にも新任。東北放送アナウンサー出身ですから、本人の希望かもしれません。かわりに、主流派の森本哲生さん、中間派の後藤齋さんが入りました。委員に関してはまったく変化がなく、「差し替え報道」の影響と、政倫審の場外(党内、与野党国対、予算委員会の証人喚問)に主戦場が移ったことをうかがわせます。

 初当選直後ですが、新党大地・代表代行の浅野貴博さんを理事(安全保障委員会)に起用する心配りがありました。また、以前、法務委員会の理事を務めていた阿知波吉信さんが科学技術・イノベーション特別委の理事になりました。菅支持で流れをつくった論功行賞という意味合いもあると思います。

 科学技術・イノベーション特別委員会の第177通常国会新設は、20日の議運理事会で決定しています。これについて、発案者の公明党は、公明新聞で「技術者によるアドバイザリーボード(専門家部会)を設けるなど、今までの国会になり新しい運営をさぐり、『熟議』のねじれ国会をめざしたい」としており、めずらしく「熟議」という言葉で、民主党への感謝のメッセージを送りました。

 よって、ねじれ国会において、科技・イノベーション特別委(川内博史委員長)は与野党衆参の国会論議のパイロット委員会として注目したいと思いますが、その理事には、元科技担当政務官の津村啓介さん、元国交相で建築に明るい馬淵澄夫さん、内閣府政務官を務めた泉健太さん、「大阪のガリレオ」の異名を持つ名物阪大教授だった熊谷貞利さん、そして、総務省で情報通信も担当し、政局の流れもつくれる阿知波吉信さんという重厚な理事会を民主党はつくりました。委員には残念ながら、理系の専門家は見あたらない凡庸な印象があります。一方、公明党は工学博士、医学博士、理学博士がごろごろいます。委員会も大事ですが、まずは理事会が大局観をもって、新しい国会運営に取り組んでいって欲しいと思います。担当大臣は玄葉光一郎さんになります。玄葉さんが科学技術担当大臣を兼ねています。

 2011年、日本政治の安定へ。議員は、まずは目の前の仕事を1日、1日、しっかりと最後までにやり遂げることです。法案審議の中で、与野党、衆参の友人も出てくるでしょう。

 みんなの党の山内康一・国対委員長は、ブログで「民主党の安住国対委員長が就任のご挨拶にお見えになりました。私が自民党の1年生議員だったころ、臓器移植法改正の件で安住さんにはたいへんお世話になったことがあります。(略)今度の安住委員長は年が多少近いので話しやすい雰囲気です。(略)何でも反対のむかしの社会党的な野党にはなりたくはないのですが、おそらく反対せざるを得ない状況は多々あることでしょう。(略)安住さんにはむかしお世話になっただけにやりにくい気がします。民主党政権が野党時代を思い出して、建設的な提案をしてくれれば、国会で健全な政策論争ができると思うのですが・・・」と書いています。

 岡田・安住体制のぶれないリーダーシップの下、2011年国会が週明けスタートします。どうも自民党が衆院自民党と参院自民党の分裂に近いような状態に陥っているようです。 召集前々日でこれだけ展望が描けない通常国会も珍しいでしょう。岡田・安住のしっかりとぶれない安定した足腰の下、この歴史的な不安定さをうまく活用して、しっかり新しい「熟議の国会」「政治システム」を作り直していきましょう。

 微力ですが、私もしっかりと国会をウォッチし、展望を描き、改革の素案をこのブログで発表していきます。よろしければ、私の背中を押してください。