[画像]小坂憲次・参院自民党幹事長=BS11番組画面を筆者撮影
さて、あす(27日)午前10時から、参院本会議で各党代表質問が行われ、中曽根弘文・参議院自民党会長の質問から、2011年の参議院もスタートします。
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参議院自民党がおかしいです。
先日、1月20日(木)放送のBS11「インサイドアウト」に小坂憲次・参院自民党幹事長(全国比例)が出演しました。が、これが実に驚くべき内容。通常国会前に多少かけひきをふかした面もあるだろうけど、1時間の発言をカンタンに言うと、
「予算関連法案を3月にことごとく、参院で否決し、菅民主党を追い込み、衆議院を解散させる。そして、自民党も含めた衆議院側が総選挙を闘っているさいちゅうに、参議院自民党が平成23年度予算の組み替え案をつくる。すでに、山本一太・参院政審会長と、経財相の経験がある林芳正・参院議員には、『よく(菅政権が組んだ)予算書を読んでおけ』と指示している」。
は?
ホントウにこれでいいのか? 民主党よりも、むしろ、衆議院自民党もこんなことを言わせておいていいのか?という感じがしました。
この後、25日の記者会見で、参議院自民党の脇雅史国対委員長が、「今年は地方統一選もある。国民生活に無用な混乱を与える必要はない。かつて民主党がやった揮発油税の暫定税率(廃止)みたいなバカなことにならないよう臨みたい」と発言したようで、少しホッとしたけど、この小坂発言は、ぜひ、通常国会冒頭にみなさんと内容を共有しておきたいと思います。
昨秋の第176臨時国会では、参・予算委での西田昌司さん、丸川珠代さん、森雅子さん、丸山和也さん、義家弘介さん、宮澤洋一さんら参院1回生の活躍もあり、ネット中継は参院の方がアクセス数が多かった、と報じられています。さらに、参・本会議では、仙谷由人大臣、馬淵澄夫大臣の問責決議に成功しました。
陣頭指揮をとった小坂幹事長は第176臨時国会について、
「ちゃんと政策を議論して、予算書をひもといて、『大臣なら当然ご存じでしょうね』と。女性議員も入れて、テレビを見ている人にも「自民党は変わった」と参院側から分かるようにした。衆院の方の予算委は、理事の(閣僚経験のあるベテランの)人が(質疑を)やっていたけど、参院自民党では、委員会配置は新人の希望を優先して、ベテランに別の委員会にかわってもらった。昔は、1回生は『君らは当選したばかりで(任期が)6年間もあるんだから、2年、3年待て』と言われて当然だったけど」として、1年生かつ知名度の高い議員を、TV入り予算委に集中投下していたことを認めました。そして、“場外”でも、「こちらのBS11さんとかにも、山本一太とか、元気な人に出てもらうようにしていた」と徹底したことを明かしました。参院自民党のベテランには、事務次官経験者の天下り先としてのんびりやっている人も多い傾向があります。
ただ、第177通常国会では、「ベテランも交えて、バラエティのある審議を組み立てます。そうすれば、参議院の方から『自民党は変わったね』と(国民が)思ってくれれば、『衆議院の方(の自民党)も変わった』と思ってもらえる」。これは作戦ですから、ここまでは私は異論はありません。
ただ、小坂幹事長は、「次の政権交代後に自民党がなにをやるか、は参議院自民党を見てもらえば分かる」。これはちょっとおかしいのではないか。政権選択は衆議院であり、首相をやるのは、谷垣禎一・自民党総裁兼シャドウ・キャビネット首相なんだから、ある程度、政権の“予告編”は衆議院自民党がやらないといけない。あくまでも参議院自民党は補佐役に徹するべきです。
で、小坂さん、「(番組スタートから)この5分ぐらいで(1時間の番組で)話したいこと、全部話しちゃいましたね」。そうなんです、参議院はTV出演など日の当たる場が少ないんです。目立ちたくても目立てない隔靴掻痒。これが参議院を読み解くカギです。たとえば、1995年には政治改革関連法案が参院社会党の一部造反により否決されました。2005年には郵政改革法案が参院自民党の一部造反(中曽根弘文・現参院議員会長含む)により否決されました。たまにやってきた目立つ場面、正念場と言うんでしょうか、そういった政治シーンでは、特段の政策的理由がなく、目立つために造反する。過去にも、参議院はそうやって暴走しました。
「5分で話したことを全部話しちゃった」小坂さんですが、番組はあと55分間もありますから、続きます。
「民主党の支持率が下がっているのであって、自民党の支持率が上がっているわけではない」という現状認識を示して、「法案・予算案は衆院から(参院に)来るんですね。参院にきたときに(予算関連法案の)公債特例法案が通らなければ、内閣が持たないわけで、そこの見せ方の問題がある」と、3月中旬~下旬にかけて、予算関連法案を参院で人質にとってなんかするぞ!とアピール。
●問責決議は今は白紙
問責についても書いておきますが、この段落は読み飛ばしてもらってもかまいません。「与謝野馨大臣への問題よりもむしろ、私は菅総理の任命責任の問題があると思いますね。与謝野さんは議員辞職して、民間人として入閣すればよかったのかもしれない。(第176臨時国会では)岡崎トミ子国家公安委員長(当時)など出したい人はもっとたくさんいるけど、それをやると、権利の乱用と言われかねなかった。今後の問責については白紙です。与謝野さんよりも先にいろいろと閣僚の失言も出てくるだろうし、問責以前に辞めてもらうケースも出てくるでしょう。
●税と社会保障の与野党協議
「税と社会保障の一体改革は議論したいテーマですが、『あんたたち民主党に言われたくないよ』という気もする。民主党内にもいろいろな考えがあるようなので、消費税について意見をまとめてもらって、それが見えてこないと議論できない」。
●衆議院自民党よ、これでいいのか!?
さて、読者の方、というより、衆議院自民党に読んでもらいたい内容です。予算関連法案について、「ホントウに良い法案が来れば通さざるを得ない」としながら、「それよりはむしろ、法案を否決してしまって、(参議院)自民党が平成23年度(2011年度)予算を組み替えてしまった方がいいんじゃないですか? そのためには、(衆議院を)解散してもらう。その組み替えの作業としては、(衆議院が選挙中なので、)参議院(自民党)が準備しておかないといけないということで、山本一太、林芳正の2人には、『よく予算書を読んでおけ』と指示してある。野党の私たちがやるということで、そこまでできるかは、時間とのたたかいになる」と語りました。
衆議院が解散となり、参議院自民党が組み替え案を作成するとなれば、豪華な参議院議員会館に陣取れば、山本一太議員室、林芳正議員室は、各府省の官僚、各種団体で連日100人以上押し寄せるでしょう。
これでいいのか? 衆議院自民党の諸君!
谷垣禎一さんは、リーダーシップがないと言われることもありますが、参議院自民党を抑えられないようでは、日本のリーダーシップは任せられません。小坂憲次さんも第45回総選挙「政権交代の夏」で長野1区に篠原孝さん、現・農水副大臣に敗れたあとは、浪人して、「諏訪の御柱祭から長野市内の会合へ。一日まわって、長野県はホントウに広いなと感じました」と、初々しすぎるブログを書いていましたが、全国比例で国政復帰し、すぐさま参院自民党幹事長の座を射止めたら、あっという間に元の鞘に収まってしまったようです。
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26日の衆院代表質問では、自民党の小池百合子総務会長の質問に対して、菅直人総理(民主党代表)が順を変えて、答弁の冒頭に、野党時代の民主党のふるまいを謝罪しました。そのうえで、岡田克也幹事長が呼びかけている国会改革への協力を要請しました。
日本がモデルとする英国議会では、憲法そのものがありませんが、日本国憲法は参議院の存在や構成(半数改選)を定めています。ですから、日本での両院のあり方改革は、憲法を前提としたものにしなければなりません。現実的には、岡田幹事長の案のように、両院協議会改革がスタートになるでしょう。で、憲法で定められた参議院ですが、両院協議会の協議委員の選出方法は先例であり、国会法に規程はないのだそうです。また衆議院規則、参議院規則にも明文がなく、先例に過ぎないとのことです。
これは2011年1月20日という時宜をえた発行日で出た『日本の国会--審議する立法府へ』(著者は駒澤大学教授の大山礼子さん、岩波新書)の195ページに教えられました。元々大山教授の名前は知っていて、昨年11月27日のエントリーでも識者のコメントとして支持しました。今回のこの岩波新書は政権交代後の「政調廃止」にも触れたり、「イギリスの議会政治」について「日本では、イギリスからヒントを得た改革提案が盛んな割りに」「どういうものなのか、正確に理解されてはいないようだ」(117ページ)という、小沢一郎さんにも、僕にも、耳が痛いことを書きながら、235ページの新書にまとめてくれています。800円プラス消費税ということですので、当ブログのファンの方々やあるいは、国会議員、秘書にも、ぜひこの本を手元に置いていただいて、2011年国会の拠り所・たたき台にしていきたいと、考えています。ちょうど国会議員要覧と同じサイズですので、パソコンの左に2つ重ねています。一緒にこれをたたき台にして、ことしの国会を見ていきましょうよ。
[画像]大山礼子著『日本の国会--審議する立法府へ』
ちなみに、両院協議会の、衆院10人・参院10人の協議委員は、それぞれの院の多数派10人がそれぞれ送られますが、岡田幹事長はこれをドント配分にすることを提案しています。
景気、雇用、年金・・・大事です。しかし、そこはまず、しっかりとした国会と内閣のしくみをつくる。ピンチはチャンス。君子は本を務む、本立ちて道生ず(政治家は根本の問題をしっかりやると、進むべき道筋が見えてくるものだ)
2011年国会を参議院改革、国会改革というたしかな果実を与野党、衆参、そして国民がともに得られる年にしましょう。
(文中、小坂氏の発言は、筆者のノートから起こしたのものです)