[写真]藤井裕久さん=民主党機関誌「プレス民主」に載った写真から。
平成23年度第3次補正予算案は9日、基本的質疑に続いて、一般的質疑をしました。報道によると、きょうの総括質疑の後、採決。民主党、自民党、公明党などが賛成し、衆院本会議に緊急上程され、可決。参院に送る見通しとなったようです。民自公3党は参院の過半数を占めていますから、参院でも可決され、両院協議会なしに、来週末前後に成立することになりそうです。ただ、復興債の発行や「郵政改革法案(176国会閣法1~3号)の早期成立」を盛り込んだ復興財源確保法案(179国会閣法4号)の民自公の修正協議が手間取り、これは来週にずれ込みそうです。
7日(月)の本会議で、日本共産党の佐々木憲昭議員から指摘がありました。
第173臨時国会の平成21年(2009年)11月17日の衆院財務金融委員会で、佐々木議員は次のような質問をしています。
「(麻生自民党内閣の2009年の)第171通常国会で成立をいたしました所得税法等の一部を改正する法律というのがあります。その附則に、附則104条というのがありまして、その中には、『遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。』と記されております。つまり、2年後(2012年3月31日)までに消費税増税法案を国会に提出するということであります。これは(民主党マニフェストなどの解釈では)4年間は上げないわけですから、2年後に増税法案を提出するというこの規定は、内閣の立場からいえば大変矛盾する規定でありまして、この消費税引き上げ条項といいますか、この部分、修正する必要が私はあると思うんですが、財務大臣、どのようにお考えでしょうか」
として、魔法の言葉である「付則104条」を改正すべきではないかと質しています。これについて、藤井さんはひと言で次のように答えています。
「私は、決して他の党がやったからとは言いません。法律である以上は、あらゆる人間がそれに従うというふうに考えておりますが、でき得れば修正をするのが筋だと思っております」
と答弁しています。これは藤井さんが「付則104条」がいわば政権への“地雷”であり、これを改正しておかないと、いずれ虎の尾を踏むという危機感を持っていたことの裏返しです。このような様々な危機感のもと、藤井さんは、民主党政権最初の当初予算の政府原案を組み上げたところで、入院し、辞任してしまいました。ちなみに、この佐々木・藤井問答は、政権交代後に最初に衆院を通過した法案の審議での質疑と答弁です。佐々木さんはいきなり目に見えないカウンターパンチを与えたことになります。この法案(中小企業金融など円滑化法=亀井・大塚リスケ法)は、まだ衆参がねじれてなかったので、小沢・山岡国対が強行採決しました。なお、最初に成立(参院で可決した)した法律は「改正自衛隊給与法」(主な答弁者は北澤俊美防衛相)です。まだ衆参ねじれていなかったのに、強行採決したのは、これは地雷ではなく、自爆です。
この単純な藤井答弁に対して、佐々木さんはひと言だけ次のように述べて、話題を変えます。
「わかりました。それでは、2年の前に、つまりその時期(2012年3月31日までの“国会提出”の期限)に来る前に当然修正を内閣として提案するということだと確認をいたしました」。
あの暑い夏の総選挙から2ヶ月半後、鳩山内閣発足からちょうど2ヶ月後に、佐々木さんが解散に向けた“地雷”を設置していたことがうかがえます。
で、あんまり先のことばかり書いていても訳が分からなくなるでしょう。昨日ようやく衆院ホームページにアップされた「財源確保法案」の「附則第13条」に次のように書かかれているのを見つけましたので、ご報告します。
[衆議院ホームページ議案から引用はじめ]
「附則 第十三条 政府は、前条第一項各号に掲げる措置のほか、租税収入以外の収入による償還費用の財源を確保するため、日本郵政株式会社の株式(日本郵政株式会社法(平成23年法律第▼▼▼号)第三条の規定により政府が保有していなければならない議決権に係る株式を除く。)について、日本郵政株式会社の経営の状況、収益の見通しその他の事情を勘案しつつ処分の在り方を検討し、その結果に基づいて、できる限り早期に処分するものとする。」
[引用おわり]
「日本郵政株式会社法」(176閣法2号)はまだ「法案」であり、「平成二十三年法律▼▼▼号」という陛下の御名御璽が入って公布し、官報に掲載するときにつく法律番号がありません。しかも「平成23年」と書いていますが、これは当然今第179臨時国会で成立するという前提になっていますが、法案はまだ審議入りしていません。また、「租税収入以外の収入による償還費用の財源を確保するため」「できる限り早期に処分する」というのは、翻訳すれば「東日本大震災復興債の償還に充てるためだけに、税外収入(埋蔵金)として、売却する」という意味です。これだけの政治判断が法律で縛られる。財務官僚には選挙がありません。選挙の結果で左右されないように、こうやって書き込んでいくわけです。こういうことは繰り返され、自民党長期政権ではそれで良かったのですが、政権交代可能な二大政党デモクラシーを定着させるために、いわば“移植後の拒絶反応”がこうしてすさまじく起きているのです。その代わりに、いろいろな情報が出てきています。どうしても散発的に出てくるので、不安や不信が国内外に高まりますが、これもまた過去からの金額の明示がない負債ですから、しかたありません。
あくまでも予想として、来年の旧暦で夏以降に、第46回総選挙があるでしょう。そのとき、私たち有権者が民主党政権を選んでも、あるいは自民党主導の政権を選んでもいいんでしょう。その後の政権で、「附則13条」が“ちちんぷいぷい”魔法の言葉のように答弁を縛ることにならなければいいのですが。法律である以上は、あらゆる人間がそれに従うものです。
で、まずは、与党議員だからと言って、思い付きで政策を話さずに、藤井さんら筋の良い長老の話を聞くべきです。そして、予算書を読むなど財政を体系的に勉強すべきです。例えば「特別会計の予算総則の第5条」に何と書いてあるか、知っているでしょうか?
そして、財務省は「附則13条」などというように“地雷”を敷設するのは、デモクラシーのプロセスを不透明にするので、なるべくやめるべきだと自戒すべき。まあ、気持ちは分からないでもないですが。そして、二大政党が互いに政権に注意し合い、しっかりと情報公開できるしくみをつくっていきましょう。野党・自民党には、官僚からもだいぶ情報が行っているようですし、自治体からの情報はむしろ、自民党・公明党の方が多いようにもうかがえる昨今です。民主党の人材の見極めというのも必要でしょう。与党だろうが野党だろうが2期生にすべきなのは、香川2区の玉木雄一郎さん、神奈川16区の後藤祐一さん、群馬3区の柿沼正明さん、石川3区の近藤和也さん、静岡8区の斉藤進さん、岐阜5区の阿知波吉信さん、静岡3区の小山展弘さん、岐阜1区の柴橋正直さんらであり、彼らを失ったら元の黙阿弥。あるいは無所属になってしまいどこの選挙区か分からないのですが横粂勝仁さんも、だれか背中を押してくれるたらいいなあと感じます。
まあ、来年6月にも、総選挙になるかもしれませんから、私たち有権者もそろそろ準備しましょう。きょうを嘆くより、前を見ましょう。
◇
[国会議事録から引用はじめ]
第173回国会 財務金融委員会 第2号
平成二十一年十一月十七日(火曜日)
(略)
○佐々木(憲)委員 非常に明快な答弁だったと思います。少なくとも、この内閣としては四年間上げない、これは三党合意の中でも書かれている点でございます。
そこで、少し具体的にお聞きしますけれども、百七十一通常国会で成立をいたしました所得税法等の一部を改正する法律というのがあります。その附則に、附則百四条というのがありまして、その中には、「遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と記されております。つまり、二年後までに消費税増税法案を国会に提出するということであります。
これは四年間は上げないわけですから、二年後に増税法案を提出するというこの規定は、内閣の立場からいえば大変矛盾する規定でありまして、この消費税引き上げ条項といいますか、この部分、修正する必要が私はあると思うんですが、財務大臣、どのようにお考えでしょうか。
○藤井国務大臣 私は、決して他の党がやったからとは言いません。法律である以上は、あらゆる人間がそれに従うというふうに考えておりますが、でき得れば修正をするのが筋だと思っております。
○佐々木(憲)委員 わかりました。それでは、二年の前に、つまりその時期に来る前に当然修正を内閣として提案するということだと確認をいたしました。
(後略)
[国会議事録から引用終わり]
◇
[衆議院議案から引用はじめ]
第一七九回
閣第四号
東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案
(略)
附 則
(略)
第十三条 政府は、前条第一項各号に掲げる措置のほか、租税収入以外の収入による償還費用の財源を確保するため、日本郵政株式会社の株式(日本郵政株式会社法(平成二十三年法律第▼▼▼号)第三条の規定により政府が保有していなければならない議決権に係る株式を除く。)について、日本郵政株式会社の経営の状況、収益の見通しその他の事情を勘案しつつ処分の在り方を検討し、その結果に基づいて、できる限り早期に処分するものとする。
(後略)
[衆議院議案から引用終わり]
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