宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

片山さつきさんら衆院の議事録に名を残す 二重ローン法案が衆院修正可決し、参院へ回付(かいふ)

2011年11月15日 12時57分48秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

[写真]自民党の片山さつき参院議員(全国比例、2016年改選)

【2011年11月15日(火) 衆院本会議】

 修正協議が続いていた、二重ローン法案こと「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案」(177国会参法12号)が衆院本会議で修正可決しました。参院へ回付(かいふ)されます。参法(参議院での議員立法)が衆院で可決するのは、憲政史上3度目。筆頭発議者では、久保亘さん、佐藤正久さん、そして、片山さつきさんで3人目となります。

 衆院の古賀一成・東日本大震災復興特別委員長の報告によると、この法案は、7月29日に参院本会議で修正可決。8月11日に衆院・復興特別委に付託され、8月25日に発議者を代表して、自民党の「片山さつき君から法案の趣旨説明を聴取」し、みんなの党の「桜内文城君から法案審査の経過を聴取」しました。その後、継続審査になり、今国会で、民主党・自民党・公明党・社民党・国民新党・たちあがれ日本の6派共同提案で修正案が出され、修正案は賛成多数で、みんなの党が反対しました。が、法の土台となる原案は全会一致で可決されました。なお、前日の委員会審議によると、衆院での修正実務者は、民主党が近藤洋介さん、自民党が谷公一さんというおなじみのメンバーだったようです。


[画像]二重ローン法案の衆院での審査経過を報告する古賀一成・衆院震災復興特別委員長、2011年11月15日、衆院本会議。


[写真]みんなの党の桜内文城参院議員(全国比例、2016年改選)

 ここで良かったのは、委員長報告の中で名前が出たので、「片山さつき参院議員」「桜内文城参院議員」の2人が衆院本会議の会議録に載って、これはインターネットでも、官報でも載りますから、名前が残ることです。参法が最初に衆院で可決し、成立した「改正学校教職員の産休に関する法律」の発議者だった、久保亘さんは後に副総理・大蔵大臣を務め、民主党参院議員会長や倫理委員長を務めています。ですから、震災国会で法案をつくった、佐藤正久隊長や、片山参院議員、桜内さんも後々出世するのではないでしょうか。

 スポーツ基本法などは、スポーツ推進議員連盟というような、超党派の議連が提出した法案で、こういうのははじめから各党派の賛成が得られるので、法律になりやすいです。議員連盟方式では、先の通常国会(第177国会)で、「歯科口腔保健推進法(足立法)」(平成23年法律95号)を足立信也さんが延長国会の“スキ”を突いて、あざやかに参院厚労委員長提出法案として成立させました。超党派議連とはいえ、10年来、なかなか法律にならなかたようですが、だらけた時期にサッと参院、衆院を通しました。ちなみに、ある国会議員が新聞を騒がせている「トロイの木馬」メールに感染したのもこの時期で、こういうときの過ごし方に、国会議員の政治家以前に人間としてのあり方(性根)が見えてきます。その点、足立さんはさすがです。

 第177国会での原子力賠償支援機構法(佐藤法)は、議連方式ではありません。自民党衆参の福島選出・出身議員が木曜日に昼食をとりながら震災・原子力災害の打ち合わせをしたことから派生した法律です。

 東日本大震災関連義援金の差し押さえの禁止などに関する法律(前川法)平成23年法律103号)は、与党民主党の弁護士、前川清成さんのいわば“義憤”とも呼べる正義心が自民党が委員長を務める災害対策特別委員長が提出する格好で法律になったものです。ちなみにこの時点で、「東日本大震災復興特別委員会」はすでに参議院に設けられていたのですが、先輩らも協力して前川法を法律にしました。なお、この法律の原案(177参法14号)も参議院ホームページに残っています。


[写真]足立信也・参院議員、民主党、大分、2016年改選。


[写真]佐藤正久・影の防衛副大臣、参院自民党、全国比例、2013年改選。


[写真]前川清成(まえかわ・きよしげ)参院経済産業委員長、民主党、奈良、2016年改選。

 二重ローン対策法案(片山法案)は、片山さつきさんが東北でシンポジウムを開くなど、ぐいぐい引っ張りました。実は、ある民主党の1期生衆院議員がこの法案とそっくりのスキーム(骨格)を考えすでに業界誌で報道されていた議員もいたのですが、提出には至りませんでした。「片山さつきさんは、(議席数からして)通るわけがない法案を出して、『民主党が否決した』と騒ぐのではないか」と勘ぐっていましたが、国会支持率があまりにも下がってしまったので、与党・民主党も通さざるを得なくなりました。ねじれという構造を、震災というエンジンが押し通したわけで、ドリルのようにねじれを力に変えたことになります。ただ、いかんせんスピードは遅いですが、衆参ねじれは直近の民意(2010年7月11日の第22回参院選)ですから、しかたありません。それがデモクラシーです。

 法案は衆院で修正したので、参院で再度議決(同意)します。このことを「回付(かいふ)」といいます。今週中には成立すると思いますが、とにもかくにも、こういった形で、片山さん、桜内さんの名前が残ったのは良かったと思います。棋士の羽生善治さんは7冠王になったとき、「タイトルよりも、後世に残る棋譜を残したい」と言っています。衆院はすでに任期が折り返し、次の国会で解散する見通しですから今さら間に合いません。が、参議院議員はぜひ任期中に1本ぐらい議員立法を出してほしいと考えます。例えば、岡田克也幹事長の下で副幹事長を務めた参院議員は、予算委員会でのヒット質問だった、外資による森林の買い占めに関するプロジェクトチームをつくっています。これなんかは、「日本版エクソン・フロリオ条項」のような議員立法をつくってほしいと考えます。別に民主党が与党でも野党でもいいわけですが、発議者はしっかり答弁もできないといけません。

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