宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

自民党は決算委員長の仕事をしないで解散風を吹かすな 【追記あり】

2011年11月25日 21時31分27秒 | 第179臨時国会(2011年10月)議員立法

[写真]衆・決算行政監視委員長の新藤義孝さんと参・決算委員長の山本順三さんの2人の自民党議員。背景の自民党本部写真は筆者が撮影した物。

【衆参とも決算委員長を務める自民党は、決算審査を終えてから解散風を吹かすべきだ】

 政府は、会計検査院の意見をつけて、2011年11月22日(火)に、衆議院と参議院に別々に「平成22年度決算(案)」を提出しました。財政法では通常国会冒頭に出すことになっていますが、最近では会計検査院が頑張っていて、秋の臨時国会に提出しています。

 衆院決算行政監視委員会は、24日(木)に10分ほど会議を開き、「平成21年度の予備費」の国会での事後承諾を求めるという議案について、安住淳・財務大臣から趣旨説明を聴取しました。予備費とは、 当初予算に通例1兆円盛り込まれていて、その範囲内で災害の復旧工事などで、閣議の決定で歳出することができるお金で、翌年度に国会の事後承諾を受けることになっています。

 今後、この予備費の使用調書を審査して、その後に平成21年度の決算(一般会計、特別会計、政府関係機関など)の審査をします。そして、そのまた後に、平成22年度の決算の審査をするのでしょう。

 夏休みの宿題が溜まった小学生時代を思い出すのは、私だけではないでしょう。 

 ちなみに、日本中のほとんどの地方議会はすでに平成22年度の決算審査を終えています。

 平成21年度決算(案)は、自民党麻生政権が当初予算を編成し、4月に第1次補正で14兆円増額し、政権交代後の10月に民主党鳩山内閣が第2次補正で歳出の減額などの補正をしたものです。ですから、審査が難しいのは分かっていますが、それとこれとは別です。

 衆・決算行政監視委員長は新藤義孝さん(埼玉2区)、参院決算委員長も、自民党で、山本順三さん(愛媛県選出)が務めています。衆参とも決算委員長は自民党なのですから、第46回総選挙での政権交代をめざすうえで、平成21年度決算は当然として、平成22年度決算も府省別の審査や総理への総括質疑をし、議決したうえで、解散を求めるのが当然でしょう。衆参とも平成22年度決算審査が仕上がっていない状態で、選挙をやっても、どちらが勝っても、その政権は上手く行かないでしょう。仮に決算審査が意味のないセレモニーだとしたら、国会など不要です。

[追記 2011年12月7日(水) 午後1時]

 補足します。参・決算委員会は3月11日に平成21年度決算(案)の全般質疑をしましたが、これが震災のため、休憩・散会となり、5月から審議を再開しました。その後、省別審査を終えて、12月7日の決算委員会でしめくくり総括質疑となります。一方、衆・決算行政監視委員会は平成21年度決算(案)について、趣旨説明を受けていない段階です。衆参での審査の進捗度に関する認識が私の中で違っていたことに気付きましたので、補足しました。[追記おわり]


 決算(案)は他の議案と違い、衆院先議などが該当せず、両議院が別個に審査し、別個に議決(認定、不認定)することができます。

【第179臨時国会は延長せず12月9日(金)で閉会すべきだ】

 第179臨時国会は会期末まで残り2週間となりました。第3次補正予算(東日本大震災復興、原子力被害の賠償や研究など、全国自治体の防災対策、年金財源の安定化、台風19号復旧、B型肝炎賠償の基金の新設など)を成立させることができました。また、本来は一体的(同時)に成立させるべき歳入関連5法案(復興債発行、平成23年度税制改正積み残し、地方交付税増額法案、全国防災費のための地方税措置)が参院本会議できょう25日審議入りしました。5法案は衆院段階で3党修正が入り、賛成多数(日本共産党が反対)ないしは全会一致で可決していますので、参院でも過半数を上回り成立する運びです。

 東日本大震災復興基本法にもとづく、3点セット、復興債・復興特区・復興庁は、復興債が上述の通り、参院で審議入りし、参・財政金融委員会(尾立源幸委員長=民主党)が審議していて、成立の見通し。復興特区は、衆・復興特別委(古賀一成委員長=民主党)が審議していますが、衆参与野党による修正協議がまとまっており、修正可決のうえ、参院に送られ、おそらく会期内に成立するでしょう。復興庁設置法も衆院本会議で代表質問が済みましたが、閣法の「本部は東京」「他府省に勧告できる」という部分が「本部は仙台」「他府省を上回るスーパー官庁に」という意見がでており、難航しています。

 それと、2大政党と7中小政党が話し合っている衆院の定数是正・定数削減・選挙制度改革の3点を協議する会合(座長は民主党幹事長代行の樽床伸二・衆院議員)がもめています。ただ、内閣府にある「衆院選挙区区割り画定審議会(村松岐夫会長ら7委員)」の設置法にある「1人1枠方式」を定めた条文では、民主党の樽床座長と自民党の細田博之さんの間で削除することが合意できていますので、議員立法で今国会中に改正区割り審設置法が衆参で過半数以上で可決します。しかし、民主党参院議員会長と民主党幹事長を兼ねる輿石東さんが、慎重な姿勢をもっています。定数削減と選挙制度改革は来年に持ち越しになるでしょうが、定数是正に関しては、今年中でないと、来年2月25日の総理への新区割りの勧告に間に合わないでしょう。ぜひ今国会中に成立させるべきです。なお、新区割りの勧告の後、衆参で公職選挙法改正案が成立させる作業が必要です。しかし、区割り審の村松会長が総理の野田さんに勧告した時点で、第46回衆院選の区割りは分かるので、改正公職選挙法が成立すれば、周知期間をおかずに、すぐに総理が解散しても合憲合法だという学説や解釈が有力です。さらにいえば、現在第1党の民主党にとっては、抜き打ち的に解散した方が有利である可能性が高いと考えられます。

 このように様々な神経戦が行われている大震災イヤー納めの第179臨時国会です。今週辺りでは、野田総理や、安住財務大臣の答弁は安定しています。しかし、川端達夫大臣などはかなり答弁がキツイ状態になっています。おそらく文科大臣のときは、文部科学省という一つの役所でしたが、現在は、総務省と内閣府地域主権本部、内閣府北方対策本部、内閣府沖縄振興局を兼ねているので、優れた組織人である川端さんには、かえって手の抜き所や大づかみな議論が分からなくなっているのかもしれません。このほか、自民党議員が「質問通告しましたよ」としながら、民主党大臣が「質問通告は受けていないと思いますが・・・」と口ごもる場面がより増えてきました。

 私は第179臨時国会は当初会期通り12月9日(金)で閉会すべきだと考えます。そのうえで、衆参決算委員会は閉会中審査で決算審査をすべきでしょう。いずれにしろ、大臣は土日も閉会中も東京にいなくちゃいけないので、予算編成・税制改正に余り関係ない大臣、例えば、人件費が中心の法務省や外務省の大臣を衆参で午前と午後のたすき掛けで呼んで、ドンドン府省別審査を進めればいいでしょう。

【野田首相が4次補正を組まない可能性に言及、できれば時間の余裕ある年始に】

 また、野田佳彦首相がきょうの参院本会議で、二重ローン軽減法(片山さつき法)などの追加財政需要を予備費で対応し、今年度はもう補正予算を組まない可能性に言及しました。その方が、年越し後、じっくり準備してから、第180通常国会にのぞむことができます。私はその方が賛成です。

 解散風が吹くとどうしても、あわてふためく人がいますが、こういうときこそ、君子は本を務む、本立ちて道生ず。しかっり決算を審査して、たっぷり時間をとって来年の計をはかる。二大政党どちらが勝とうと、しっかり日本を立て直すには、それしかありません。


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政権交代のキーマン菅義偉・自民党組織運動本部長「解散すべきではない」

2011年11月25日 07時49分04秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗


 政権交代のキーマンとも言える、神奈川2区の衆院議員で、自民党組織・運動本部長の菅義偉さんが2011年11月24日(木)夜のBS11「インサイドアウト」に出演し、「私たちは解散すべきではなく、民主党のやっていることを議会でキチッと突いていきたい」と述べ、早期解散に否定的な考えを示しました。

 菅さんは同日の自民党役員会での谷垣禎一総裁(影の首相)らとのやりとりを披露。

 「私は組織運動本部長として、党員(獲得)のお願いで、各県連の幹事長を回っているが、きのう会った県の幹事長も、自民党をしっかり立て直してくれ、と言っていた」、「私は国民の自民党に対する期待は、民主党を倒してくれ、ではないと思うんです。国民は自民党に、変わってくれ、と思っているんだと考えています」としました。同日の役員会でもその趣旨の発言をしたところ、数人の党幹部から同調の声が続いたそうです。これは、来年4月~6月の早期解散をねらう石原伸晃幹事長らをけん制した発言だと思われます。

 実際に、菅さんが代表を務める「自民党神奈川県連」では、県議である幹事長が、昨年の第22回参院選で「自民党神奈川県連はこのたび、チーム神奈川に生まれ変わりました」と演説していました。「ご紹介したように支部長もドンドン決まっています。小泉進次郎さんらを筆頭にホップ、ステップ、ジャンプ・・・この参院選がホップ。来年春の統一地方選がステップです。そして次の衆院選でジャンプ、と政権交代していきます」という趣旨の演説をしていました。ホップ、ステップは順調に来ましたが、ジャンプはどうなるでしょうか。

 正直、「自民党神奈川県連はチーム神奈川」(たぶん表記はチームKANAGAWA」に変わりました」というのは訳が分からない話で、たんに自民党という古い看板を出したくないだけでは。それはさておき、壇上の小泉進次郎さん(現在は自民党青年局長)らフレッシュな面々が注目を集める中、ビラを配る男性の一人が第45回衆院選で小沢ガールズ(岡本英子さん)に敗れた、自民党神奈川3区支部長で元経産副大臣(当選5回)の小此木八郎さんだということに認めました。途中で移動したので演説会の最後まで聞いたわけではありませんが、小此木さんの名前の紹介はなかったと思います。浮き足立っているようで、しっかりと地に足をつけた自民党のまとまりを感じました。


[写真]演説会でビラをまく、小此木八郎さん。

[写真]すぐに知り合いに声を掛けられ談笑する小此木八郎さん。

 その一方、第45回衆院選敗北の責任を取って辞任した二階俊博さんのあとを継いで自民党選挙対策局長になった河村建夫(かわむら・たけお、衆院山口3区)さんは、ドジョウのようにもぐってしまって姿が見えないですね。でも、新聞の地方版を読むと、けっこうしっかりやっているようです。


[写真]着実に衆院総支部長を擁立している河村建夫・自民党選対局長。

 例えば元国交相の馬淵澄夫さんの地元の奈良1区の自民党支部長。馬淵さんは第44回郵政選挙で近畿ブロックの1区(都市部が多く風に流される傾向が強い)の中ではただ一人、勝っています。その対抗馬になるので、以下の毎日新聞記事だと、公募にはわずか4人だけだったようです。そして選んだ人が辞退してしまい、党本部にお願いしたようですが、河村選対局長は「もう少し地元で努力してほしい」と言ったようです。こうやって、地道にやっているんですよね。もう少し、民主党もマスコミも、こういうところに目を向けてほしいものです。ホントTPPとか、税制改正とか、「偉い人」だけの話でしょ。

[毎日新聞記事から引用はじめ]

自民県連:次期衆院1区候補者、公募で決まらず 四役に擁立一任 /奈良 - 毎日jp(毎日新聞)

自民県連:次期衆院1区候補者、公募で決まらず 四役に擁立一任 /奈良
 自民党県連(奥野信亮会長)は30日、奈良市内で選対本部会議を開き、公募していた次期衆院1区の候補者について、応募者の中からは決まらなかったことを報告した。今後、候補の擁立は幹事長ら四役に一任することを決定。改めて候補をリストアップし、本人に打診して11月末までに選定したい考えだ。

 公募には4人が応募していた。選考では40歳代男性に絞ったが、男性が9月の最終選考直前に辞退した。また、その後、党本部にも候補擁立を要請したが、河村建夫・党選対局長から「もう少し地元で努力してほしい」などと注文されたという。【阿部亮介】

[引用おわり]

 やはり党内の上下関係で、下にある人がしっかり物を言えるというのが自民党です。

 自民党が堅調に支部長を擁立していることを考えると、民主党にとっては来年度予算を成立させたら、すぐに解散した方がいいかもしれません。

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