[画像]衆法提出者として参院本会議に登壇した民主党の長妻昭・衆院議員、2012年7月11日、参議院インターネット審議中継から。
歴史に残る国会となりました。
第180回通常国会は、衆法の成立本数が24本(7日参本で可決・成立する改正薬害肝炎被害者救済金特措法と母子家庭の母父子家庭の父の就労支援法の2法入れる)となり、55年体制以降最多となりました。また、参法の新規提出本数は36本で、憲政史上(参議院発足以来)最多となりました。
今国会での新規提出法案は
閣法(内閣提出法案)が新規提出83本中51本で成立率61%。
衆法(衆院提出法案)が新規提出38本中24本で成立率63%。
参法(参院提出法案)が新規提出36本中 5本で成立率13%。
このうち、衆法の成立本数24本は、第22回特別国会(1955年3月18日から7月30日)の35本以来、久しぶりの20本台となり、55年体制(自民党衆参1党支配)1993年体制(連立内閣時代)を通じて最も多い本数。成立率も1本提出1本成立の場合もありますが、57%は極めて高い水準。
参法の提出は36本で、参議院発足以来最多。もともと閣法としてできた法律を、参議院農林水産委員長、厚生労働委員長、文教科学委員長、経済産業委員長らの起草で全会一致で通すケースが多くみられました。
参法の成立件数も、55年体制が発足した第24回通常国会での13本中7本成立、小渕連立内閣の第145回通常国会の22本中5本成立となっており、平成元年からずっと続く参院で第一会派が過半数を得ない状態での最多タイ記録となりました。
衆院委員長も同様で、農水、厚労、環境各省などは、手間がかかる閣法よりも、必要な修正部分を国会議員に根回しして提出してもらっているような気配を感じました。参法が増えた背景には、衆参ねじれにより予算成立後の序盤に衆院委員会で法案が渋滞しているさいちゅうに、参院がバックアップする「働きます国会」が、参院の一部委員会でありました。民主党の小川勝也・参院農林水産委員長、小林正夫・参院厚生労働委員長に加えて、自民党の野上浩太郎・参院文教科学委員長らが良い仕事をしました。やはり政務三役経験者が委員長である傾向があります。衆参ねじれと「余裕がない時代」の国会においては有力な手段となりそうです。ただし、起草から可決まで時間が短いことから、衆参両院のホームページの迅速化・充実を求めます。
衆法に関しては、3党協議や与野党協議で、閣法などを撤回したうえで、議員立法するケースが目立ちました。郵政見直し法(改正郵政民営化法)や、原子力安全委員会設置法が、3党の実務者が提出者になったり、衆院環境委員長が提出者になったりして、参議院でも答弁したうえで成立しました。
このほか、閣法を議院修正するケースも激増し、社会保障と税の一体改革関連8法案は衆院段階で修正し、衆法2本を新規追加したうえで、衆院で可決。参院でも成立しました。このため、修正案と原案をあわせて委員会での採決は15回起立を繰り返したことから、委員の10倍になる本会議メンバーが状況を把握できず、大量造反者を出すことにつながってしまいました。このほか、衆議院厚生労働委員会では、筆頭理事の民主党・岡本充功さんが3党合意にもとづく修正案発議者をたびたび務め、「岡本国会」の様相を呈しました。小選挙区導入後初めて首相経験者(海部俊樹元首相)を落選に追い込んで得た第45期衆議院の議席での岡本さんの活躍は、海部さんも喜んでいるのではないでしょうか。沖縄の本土復帰40周年にともない特措法2本を10年延長する法律づくりでは衆参与野党の沖縄選出・担当議員が会議室に集い閣法を修正(野党提出参法は撤回)しました。
参院先議の閣法では、「改正船員法」で参院修正がかかってから、衆院に送られるなど、衆参とも議員の自由度が高まりました。
新規提出参法が最多になった背景には、提出のハードルが衆議院より低いことで、みんなの党、公明党がおそらく第46回衆院選マニフェストに盛り込むねらいがある政策を参法として提出したことがかさ上げにつながりました。
これまでの議員立法の主流だった「議員連盟方式」では、通称「音(おと)議連」による、劇場法(劇場、音楽堂等の活性化に関する法律)が参法で、「古典の日に関する法律」が衆法でともに委員長提出で成立。しかし、やはり国会全体が「余裕がない」状態となっており、超党派議員連盟方式による新規立法は冬の時代を迎えそうです。
与野党問わず、実力ある衆議院議員が参議院で答弁し、実力ある参議院議員が衆議院で答弁する機会が増えました。一体改革法案では自民党の3期生が重要な修正者になったり、民主党の1期生が参院答弁者になったりしました。こういった両院の垣根が低くなったことが衆参ねじれの解消につながるでしょう。
二大政党激突時代に、衆議院任期中解散含みとなる3度目の通常国会ですから、閣法成立率の低下はある程度やむを得ませんが、政務三役経験者の増加により議員立法の成立が増え、政権交代をねらう野党が単独で「マニフェスト法案」を提出したことで提出本数が増えたという傾向がみてとれます。このように政権交代ある政治の果実は確実に増えています。
その一方で、法案提出者・修正案提出者が一部議員に偏る傾向がありました。ハッキリ言えば、能力のない議員が何もできない状況が続いています。そのため、両院とも委員会と本会議の垣根が高くなりそうです。それが、一体改革法案の衆院採決での大量造反につながったのでしょう。国会法では委員会の賛否に限らず、本会議での採決がすべてです。時代の速さに半歩以上遅れだして必死にあがく与野党議員に情けは無用です。私たち有権者はそういう議員を切らなければ、私たちの生活にかかわります。たしかに定数削減は必要ですが、極端なまでに、衆議院・参議院・国立国会図書館の総予算を切り込んでしまうのは問題ありでしょう。
付け加えると、成立衆法が55年体制以降最多、新規提出参法が参議院発足後最多となったことにふれずに、党首選に明け暮れる既存メディアに猛省を促したいところです。衆参各院の議事課、広報課、法制局は積極的・能動的に、これを記者発表すべきだったでしょう。
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