ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

少年院・少年鑑別所法案が参院でまったく審議されず廃案 審査順のプロセス透明化が必要だ

2012年09月13日 05時41分08秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 委員会での法案審査の順番に関しての情報公開、プロセス(過程)の透明化も必要です。

 第180通常国会の法案のうち、継続審査(閉会中審査)になった案件と、廃案になった案件を復習していたら、「少年院法案」と「少年鑑別所法案」、それに加えて、「両法律の施行に伴う関係法律整備法案」の合計3法案が、参議院法務委員会でまったく審議されないまま廃案になっていたことが分かりました。

 参院では会期末処理で「閉会中審査」にすると、次の国会召集当日に自動的に「参院先議法案」になってしまうことから、「閉会中審査」にしないのですが、本予算審議が参院で始まった3月6日に同院先議で提出するという法務省の国会対策にも疑問が残るところです。

 法案審査を業界団体の手から一般国民の手に取り戻す。それは国会議員にとっても、有権者にとっても、国会にとって一回の政権交代よりももっと重要な、政治を国民の手に取り戻すうえで最重要の心持ちです。

 その意味では、第180回国会で、幼保一体化(幼保一元化)法(子ども・子育て新システム関連3法)が成立したのは大きな歴史的な意義があります。もちろん、業界団体の支持をえる自民党議員らによって、参院特別委で19本という厖大な数の附帯決議が付きましたが、それほどまでに業界団体に配慮しながらも、最終的に法律が成立したことについて、野田佳彦首相、そしてそれ以上に谷垣禎一・自民党総裁の偉業は大きい。

 ところで、谷垣さんは自転車が好きですが、宏池会(自民党古賀派)は長年自転車利権につよく、事務所もその関係団体が所有するビルに入居していることは有名な話です。第180回国会では、衆参経産委が審査した「自動車競技法および小型自動車競争法の改正法」が3月31日、参院で可決・成立しました。この法律は、ケイリンとオートレースの経営をテコ入れするもので、予想が当たったときに配当を高くもらえるようにするという、かなり単純で効果的なテコ入れをする法律です。さらに、ケイリンとオートレースの法律整備を1本にしています。そうした方が審議・採決がやりやすいからでしょう。これが「日切れ法案」となり、実際に年度内3月31日に成立しました。とはいえ、同じ日切れ法案でも特例公債法案はいまだに成立せず廃案となりました。衆参財金委が審査した「中小企業者等金融円滑化法」を1年延長する法律も日切れ指定で成立しましたが、同時に成立した銀行を支援する特別措置法は5年延長です。中小企業者や住宅ローン者は1年延長で、銀行は5年延長というところに、違和感をもちました。民主党であれ、自民党であれ、国会や霞が関の近くにいる、ケイリン、オートレース、金融業の声というのは素速く反映するというのが実態でしょう。

 少年院や少年鑑別所に関係する人の各種団体はあるのでしょうか。おそらくないでしょう。

 この少年院法案と、少年鑑別所法案は、2009年の広島少年院で法務教官が在院者に暴行したり、トイレに行かせなかったり、腕立て伏せを1000回やらせたりしていた事件を受けて、在院者が法相に不服申し立てをする制度を法制化するものです。現行の少年法から少年鑑別所法(案)を独立させるという抜本改革を盛り込んでいます。

 ところが、第180国会の議事録を読むと、大臣の所信聴取の中で、小川敏夫法相や滝実法相が法案名を読んで成立をお願いしていますが、法案の趣旨説明もされていないし、与野党議員から一般質疑で話題になることもなく、提出から半年後に会期末処理がなされず、自動的に廃案になりました。

 このように少年院や少年鑑別所に関係する人の声というのは国会には届きにくいようです。

 229日間にわたる通常国会をみるなかで、「法案の審議順」があまりにも不透明であることに気付きました。委員会理事会もインターネット審議中継すべきでしょう。現在も参院の委員会は扉を半分開いたままやっており、官僚や記者が聞くことができますし、国会内のケーブルテレビでは放送されています。その内容はとくに秘密にするようなものに思えないし、第3党などはむしろ理事会を中継してくれた方がアピールにつながるでしょう。

 あるいは、英国議会のように「第1読会」として衆参事務局職員が政府提出法案の短縮法案名を朗読し担当大臣がうなずくという本会議をする。形式的ですが議事録が残るので、各委員会の理事には法案審査をしなければならないという有形無形のプレッシャーがかかるでしょう。 

 通常国会の2月・3月に解散されたことは過去半世紀一度もありません。2月は衆院予算委員会、3月は参院予算委員会が当初予算を審議しているからですが、国会議員全体のなかで予算委員になるのは1割の議員ですし、答弁にあたる政務三役を入れても全国会議員の1割に過ぎません。残りの9割はSNS媒体でも分からないようにしていますが、実際は遊んでいる人も多いです。この時期に二大政党の政調会は、各役所が国会提出法案の説明会をやっています。これは提出を予定していてまだ書き上がっていない法案も説明しているわけですが、必ずしも党内で閉鎖する情報とは思えません。二大政党が情報公開したり、国会というヒラバで、会期冒頭に各委員会を開き、大臣から提出予定法案について説明を受け、主に委員会の運びについて質疑応答をすることも現行法でできるでしょう。

 衆院内閣委員会は、17法案が継続審査(閉会中審査)となりました。第45期衆議院では民主党政権失敗の本質は、内閣委員会にあると言っても過言ではありません。最初の通常国会の終盤におきた「三宅雪子議員転倒事件」は第22回参院選が予定され、会期延長ができないこととあいまって、政治主導確立法案(国家戦略局設置法案)を含めて、多くの統治のしくみを改革する法案がほとんど廃案になり、現在まで成立しない事態となった第45期衆議院における与党・民主党失速の象徴的事件だったと言えます。

 ところがその内閣委員会で、警察庁が第180回国会に提出した法案の成立率は100%でした。「(インターネットの)不正アクセス防止法の改正法(案)」が2月21日に衆院に提出され、3月16日に衆院を通過し、3月31日に参院で可決・成立しています。暴力団対策法(暴対法)改正法(案)は2月28日に参議院に提出、6月20日に可決・衆院に送られ、7月26日に衆院本会議で可決・成立しています。衆院先議と参院先議を使い分け、延長会期末まで1ヶ月以上前の7月26日に仕事を終えたことになります。さすがは元内務官僚、さすがはカミソリ後藤田正晴さんの出身官庁だと感じます。

 農水省はねじれ国会のなか、参院農水委員長や衆院農水委員長の議員立法に助けられました。それにひきかえ、厚労省提出法案は「国民年金法の一部を改正する法案」という趣旨のタイトルの2本が未成立で継続審査となりました。一つは物価スライドであり、もう一つは年金交付国債を年金特例公債に取り替えるという3党合意にもとづく財政の技術的な法案です。どちらが何の法案だか、混同するでしょう。厚労省は「一事不再議の原則」を理解していないのではないかという絶望的な閉塞感を感じます。

 やはり理事会を公開するというのが、法律・規則の改正もいらず、委員長の判断でできますから、簡単にできる国会改革の第一歩ということになるでしょう。事務局職員の雇用も確保できるし、二大政党がともに次の衆院選で衆参両院の支配権をとれないことが確実である以上、第3極以下にとっても悪くない話だと思います。

 ちばてつやさんの漫画、アニメ、「あしたのジョー」は少年鑑別所・少年院を出てから世界チャンピオンを競うまでになりました。が、震災後の余裕のない中で、業界団体のない分野の立法は審議すらされないナミダ橋。衆参両院の情報公開による立法過程(プロセス)の見える化に向けて、当ブログの闘いもあしたのジョーのごとく、まだまだ続きそうです。

 [お知らせ]

 衆議院解散はいつか。その答えはこの日程表にある。会員制ブログ(月840円)。

今後の政治日程 by 下町の太陽

 最初の1ヶ月は無料で試し読みできますので、気軽に登録してみてください。取材資金にもなりますので、ご協力をお願いします。
 
「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 「新党結成」の煽り報道で食べている既存メディアは恥を知れ。国権の最高機関である国会を中心に地道に、本質を見抜いた政治報道を続けられるようご支援をお願いします。

[お知らせおわり]
tag http://www.kantei.go.jp/jp/fukusouri/press/ http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする