宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

谷垣さんが落ちた問責落とし穴にちらつく小沢一郎氏の影 やはり可決したのは14号議案だった 参議運議事録

2012年09月19日 08時01分02秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]自民党の谷垣禎一総裁。

 報道によると、驚くべきことに、自民党総裁選(9月26日水曜日投開票)は石破茂候補がリードしているという情勢分析があります。いったい自民党の国会議員団と地域組織になにが起きているのか分かりませんが、ひょっとすると、自公民3党の党首がすべて新進党結党メンバーになる可能性も出てきたわけで、2016年夏の参院選までの当面、自公民路線で懸案を処理していく体制をつくれるかもしれません。

 さて、谷垣禎一総裁が立候補を断念することになった8月29日の内閣総理大臣野田佳彦君問責決議可決にいたる本会議を前に開かれた、参院議院運営委員会の議事録がこのほど、ホームページで公開されました。

 やはり、私が指摘したとおり、本会議で可決した決議(案)は、当日に出し直した180参決議14号議案でした。第180回国会では、参議院に、6号、7号、9号、14号の合計4本の「内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案」が提出されるという、問責乱発国会となりました。このうち、6号は当初会期末にみんなの党が単独提出。7号は8月10日の参院での社会保障と税の一体改革関連法の採決の3日前に、衆院での内閣不信任決議案の直後に、国民の生活が第一やみんなの党ら7会派が提出したもの、9号は8月28日に自公が提出したものでした。そして、国民の生活が第一・みんなの党案と自公案が両立したため、鶴保庸介議院運営委員長が、29日早朝に、「4会派」に一本化を指示しました。このとき、参議院内には「4会派ってどこ?」とささやかれましたが、これは、自民党、公明党、国民の生活が第一、みんなの党の4会派。議運理事を出している5会派のうち、与党・民主党を除く4会派ということでした。このように会期末に衆参両院議長があいさつの中で不快感を示したように、通常国会中に院の構成が変わるというのは、民主的な議会政治において大変な問題があります。国民は、参院議員のほとんどが「4会派」の意味が分からなかった、ということに怒るでしょう。参院議員が理解できていないことが間接民主制で別に仕事をもつ有権者が理解できないのは至極当然。しかし、一部有権者の「小沢先生に手を突っ込んでかき混ぜてほしい」「政権交代よりも政界再編」などという甘い声が、小沢一郎さんに作っては壊し、作っては壊しで、都合の悪い情報は捨て、お金だけ抜き取る20年間の日本の空白をもたらしたことの十字架は有権者が一生背負い続けなければなりません。自民党の地方組織も、石破さんが反小沢だからって、石破さんの中にも、党を出たり入ったした過去を投票日直前までによく精査して、知った上で、投票にのぞんでほしいと希望します。

 ところで、議運委員長の鶴保さんですが、私は二階俊博さんの秘書だったと誤解していたのですが、東大法学部卒業後、小沢一郎さんの秘書だったようです。自由党公認で、二階さんが強い参院和歌山選挙区(1人区)で勝ち上がった猛者で、その後、二階さんとともに、小沢さんと袂を分かち、自民党へ。新しい波(二階派)に所属していましたが、同派は第45回衆院選で二階会長1人しか当選できない大敗北を喫して、志帥会(伊吹派)に身を寄せる格好となっているようです。ご存じの通り、石原伸晃幹事長(総裁候補)は、志帥会出身です。ひょっとすると、鶴保さんが石原幹事長が有利になるようにしながら、小沢秘書時代の人脈もいかして立ち回ったのではないか、という憶測が議事録から浮上します。谷垣総裁は、昨年、民主党内小沢グループで組んで、菅内閣不信任案を出して失敗しましたが、またしても、小沢さんにだまされたのではないでしょうか。鶴保委員長が一本化命令を出した後、みんなの党の水野賢一理事や国民の生活が第一の主浜了国対委員長(2016年改選)と議員会館内で頻繁に文面を精査していると聞きました。ただ、国民の生活が第一の議運理事は藤原良信さんで、この人は小沢秘書軍団の最古参ですから、鶴保さんと縁が太いはずです。


[写真]問責政局では、やや謎めいた運営をした、鶴保庸介・参議院議院運営委員長(自民党所属)。

 そして、一部報道では、国民の生活が第一・みんなの党案を修正して本会議で採決した、とありますが、これは私が以前から指摘した通り、当日の午後になってから、14号議案という4本目の野田問責案でした。そして、国民の生活が第一・みんなの党が出した14号議案は、7号議案とわずか2行半しか書き換わっていなかったようです。そして、6号と7号は撤回されたため、議運では、自公による8号議案が先決問題となり、14号議案は後に採決されました。このため8号議案の上程が、自民党と公明党の理事・委員のみ11人(議運の理事・委員は24人)しか挙手せず、賛成少数で上程否決。この後、14号議案の上程に関する採決となりますが、その前に、公明党の長沢広明理事が発言を求めました。発言は次の通り。

 「この後、国民の生活が第一など七会派提出の問責決議案の取扱いについて採決を行う運びとなっておりますので、それに当たり、我が公明党の意見を表明させていただきます。(略)自民党、公明党提案の問責決議案が今採決により本会議に上程できなくなったこの段階で、もう一方の七会派提案の問責決議案を委員会審査を省略して上程することについては、これを認め、賛成いたします。しかし、七会派の決議案の提案理由には、税と社会保障の一体改革に対する一方的な批判や、三党合意に関連して到底納得できない批判が理由とされており、我が党はこうした提案理由を肯定することはできません。よって、本会議への上程は認めるものの、本会議での採決には参加しないことをあらかじめ表明させていただきます」。

 公明党は議運の段階で決議案をよく読んで事前に本会議での退席を宣言しています。この後、自民党、公明党、国民の生活が第一、みんなの党の4党の14人が挙手して、上程が決まり、本会議で可決されることになりました。

 本会議での民主党の反対討論(武内則男さん)は冒頭から、「自民党の諸君は、決議文を読んだのか」から始まりました。では、自民党は決議文を読んでいたのか。参院の一部では、「自民党の脇雅史・参院国対委員長は主文だけ読んで、理由を読まなかったのではないか」という噂が立ちましたが、脇さんをよく知る人は官僚出身らしく業界団体の仕事をていねいに役所につなぐ比例選出参院議員としてそつなくこなす人だそうで、理由は読んでいたはずだと口を揃えます。脇さんは平成研(額賀派)所属と言うことで、同派も石原候補を応援しているようです。とはいえ、参議院自民党だけに、石原応援のために谷垣さんを落とし穴に落とすような人ではない、と脇さんを知る人は口をそろえます。それよりも、全委員会・理事会の運営を細かく頭に入れ、当然のことながら現場にも口を出す脇国対委員長が、会期末に自分の独裁的権力をいかんなく炸裂させたのが、この問責政局だったようです。そして、鶴保さんや脇さんの仕事について、参議院自民党の中曽根弘文会長と溝手顕正幹事長が任せっきりなのが、3党合意を批判する問責決議を自民党が賛成してしまう訳が分からない後味の悪い問責政局となってしまったと恨み節が出ています。こういうのは、実に参議院らしいエピソードです。


[写真]独裁的な権力をいかんなく発揮しているとされる、脇雅史・参議院自民党国対委員長、本人公式ホームページから。

 いずれにしろ、衆議院での不信任決議案の採決も、参議院での問責決議案の採決も、筆頭発議者である国民の生活が第一が趣旨弁明にも賛成討論にも立たないという小沢流ステルス戦術がとられ、気味悪さが残りました。自民党は、衆議院での不信任決議案を起立表決にしてしまうことも可能でしたが、記名投票表決にしました。自民党はまたしても小沢一郎さんに騙されて、落とし穴に落ちました。みんなの党も本会議での趣旨弁明の甘言に誘われて、国民の生活が第一が影響力を増してしまいました。

 さいわい国会閉会中で自公民党首選のさいちゅうで国民の生活が第一の支持率が大きく下がっています。仮に自公民3党が新進党勢の党首でそろうというチャンスがあれば、まずは小沢一郎さんを倒す。国民の生活が第一への政党助成金は2013年4月19日(金)に年間平均額で25億円相当が出る予定。しかし、半年以上運転資金がない状態なので、10月下旬に党政治資金パーティーを開きますが、これもパー券を1万枚以上売ってやっと現職の公認料(仮に500万円とする)をまかなえる程度の収入にしかなりません。

 自公両党の強い賛同を踏まえて、総理は来年4月19日前に第46回衆院選の投票日が来るように、毅然とした態度で信を問うてほしいところです。地方分権を進めるためにも、日本維新の会との連携も一案でしょう。

 両院議長がともに、院の構成が変化したことに言及して第180国会が閉幕したという事実を重く受け止める必要があります。

[参議院会議録(30日以内に開かれた会議)から引用はじめ(国会議事録データベースにも近く掲載)]

第180回国会 議院運営委員会 第28号
平成二十四年八月二十九日(水曜日)
   午後四時四十三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 八月二十三日
    辞任         補欠選任
     松浦 大悟君     櫻井  充君
     石井 浩郎君     片山さつき君
 八月二十四日
    辞任         補欠選任
     相原久美子君     広田  一君
     櫻井  充君     松浦 大悟君
     吉川 沙織君     石橋 通宏君
     片山さつき君     石井 浩郎君
 八月二十七日
    辞任         補欠選任
     石橋 通宏君     吉川 沙織君
     広田  一君     相原久美子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         鶴保 庸介君
    理 事
                川合 孝典君
                川崎  稔君
                榛葉賀津也君
                古川 俊治君
                松山 政司君
                長沢 広明君
                藤原 良信君
                水野 賢一君
    委 員
                相原久美子君
                梅村  聡君
                中谷 智司君
                藤本 祐司君
                松浦 大悟君
                水戸 将史君
                吉川 沙織君
                石井 浩郎君
                磯崎 仁彦君
                上野 通子君
                大家 敏志君
                中原 八一君
                水落 敏栄君
                渡辺 猛之君
                石川 博崇君
                谷  亮子君
   委員以外の議員
       議員       紙  智子君
        ─────
       議長       平田 健二君
       副議長      尾辻 秀久君
        ─────
   事務局側
       事務総長     橋本 雅史君
       事務次長     中村  剛君
       議事部長     吉岡  拓君
       委員部長     郷原  悟君
       記録部長     小野 伸一君
       警務部長     秋谷 薫司君
       庶務部長     美濃部寿彦君
       管理部長     阿部 芳郎君
       国際部長     花谷 卓治君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○決議案の委員会審査省略要求の取扱いに関する
 件
○本日の本会議の議事に関する件
    ─────────────
○委員長(鶴保庸介君) ただいまから議院運営委員会を開会いたします。
 まず、決議案の委員会審査省略要求の取扱いに関する件を議題といたします。
 事務総長の報告を求めます。
○事務総長(橋本雅史君) 本日、鶴保庸介君外八名から李明博韓国大統領の竹島上陸と天皇陛下に関する発言に抗議する決議案が、鶴保庸介君外七名から香港の民間活動家らによる尖閣諸島不法上陸を厳しく糾弾し、厳重に抗議する決議案が、また、昨二十八日、愛知治郎君外八名から内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案が、また、本日、広野ただし君外六名から内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案が提出されました。
 これらの決議案には、それぞれ発議者全員から委員会の審査を省略されたい旨の要求書が付されております。
 この要求につきまして御審議をお願いいたします。
○委員長(鶴保庸介君) これより採決を行います。
 まず、私、鶴保庸介外八名発議の李明博韓国大統領の竹島上陸と天皇陛下に関する発言に抗議する決議案及び私、鶴保庸介外七名発議の香港の民間活動家らによる尖閣諸島不法上陸を厳しく糾弾し、厳重に抗議する決議案の委員会審査を省略することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴保庸介君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 次に、愛知治郎君外八名発議の内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案の委員会審査を省略することに賛成の諸君の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴保庸介君) 少数と認めます。よって、本決議案の委員会審査省略要求の件は否決されました。
 ここで、長沢理事から意見表明の希望がございます。長沢広明君。
○長沢広明君 この後、国民の生活が第一など七会派提出の問責決議案の取扱いについて採決を行う運びとなっておりますので、それに当たり、我が公明党の意見を表明させていただきます。
 既に二百二十日にも及ぼうとする本通常国会での議論の結果、我が党として、野田民主党内閣には政権担当能力が著しく欠如するなどの理由から、問責に値するとの結論に至りました。そのため、自由民主党とともに問責決議案の提出に踏み切り、問責に値するとの認識を共有する他の野党会派との決議案を一本化すべく努力してまいりました。しかし、それが実らなかったことは誠に残念の極みでございます。
 自民党、公明党提案の問責決議案が今採決により本会議に上程できなくなったこの段階で、もう一方の七会派提案の問責決議案を委員会審査を省略して上程することについては、これを認め、賛成いたします。
 しかし、七会派の決議案の提案理由には、税と社会保障の一体改革に対する一方的な批判や、三党合意に関連して到底納得できない批判が理由とされており、我が党はこうした提案理由を肯定することはできません。
 よって、本会議への上程は認めるものの、本会議での採決には参加しないことをあらかじめ表明させていただきます。
 以上でございます。
○委員長(鶴保庸介君) 次に、広野ただし君外六名発議の内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案の委員会審査を省略することに賛成の諸君の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴保庸介君) 多数と認めます。よって、さよう決定いたしました。
 この際、お諮りいたします。
 広野ただし君外六名発議の内閣総理大臣野田佳彦君問責決議案に対して、日本共産党、社会民主党・護憲連合及びみどりの風から討論の要望がございました。
 これを認めることに賛成の諸君の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴保庸介君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条の規定に基づき、委員長において本件に対する可否を決します。
 本件については、委員長はこれを可と決します。
    ─────────────
○委員長(鶴保庸介君) 次に、本日の本会議の議事に関する件を議題といたします。
○古川俊治君 本日は、今お手元に配付しております資料のとおり議事を進めることの動議を提出いたします。
○委員長(鶴保庸介君) ただいまの古川俊治君提出の動議に賛成の諸君の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(鶴保庸介君) 多数と認めます。よって、古川俊治君提出の動議は可決されました。
 なお、予鈴は午後四時五十五分、本鈴は午後五時でございます。
 暫時休憩いたします。
   午後四時四十九分休憩
   〔休憩後開会に至らなかった〕

[引用おわり]

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