5年ぶりに、「内閣総辞職」ないしは「衆議院解散」がない安定した国会となった第180通常国会で、野田内閣の支持率下落が5・1%(ポイント)に踏みとどまりました。時事通信社の世論調査で、読売新聞が電話に切り替えてからは、現在唯一、個別面接方式で毎月調査しています。ちなみに個別面接方式と言っても、口頭ではなく、政党支持などは紙に書いてもらって回収する方式だと思います。
与党12年、野党38年と野党の経験が豊富な公明党の機関紙「公明新聞」は2012年9月8日付の第180通常国会(229日間)の振り返り特集で、答弁に窮する総理の似顔絵にあわせて内閣支持率が「19・8%」になったとしました。そして、召集の同1月からマイナス8・6%だ、としましたが、閉会日の8日に前後する7日~10日の調査では3・5ポイント増となりましたので、229日間というロングランでありながら、野党からの攻撃に耐える与党民主党の野田内閣が、「わずか5・1ポイント下落」に踏みとどまったということになります。辛抱強い善戦だと言えます。
内閣支持率は私は目を通すだけで、それについて多くを語ろうとは思いません。
国会は野党が政府与党を攻撃する場ですから、開催中は与党・内閣の支持率が下がり、野党全体の支持率は上がります。ただ、当初予算が可決すると5%前後、補正予算が可決すると2~3ポイント前後上がる傾向があります。やはり予算編成権も政府が持っていることは強いのですが、不思議なことには、当初予算が衆議院を通過すると5%前後上がるのに、参議院で可決・成立しても2~3ポイントしか上がらないことです。30日ルールの存在は有名なんでしょうが、とはいえ、やはり心理的な側面も強いといえるでしょう。財源がなく厳しいですが、景気対策の補正予算が衆参で可決すると、東京・千代田区近辺の飲食店は繁盛している傾向がみられますので、やはり心理的な意味合いが強いと言えます。
昨年は、特例公債法案の成立と見返りに、菅直人首相・民主党代表が総辞職しました。この連鎖を断ち切るために、安住淳財務相、野田首相、城島光力・国対委員長、岡田副総理らは「特例公債法案の第180通常国会会期内の成立」を自民党に迫りながら、安住財務相が衆院決算行政監視委員会で河野太郎さんの質問に対して突然、「(9月8日の会期末から2ヶ月後の)11月には国庫が空っぽになる」と答弁し、総理のクビないしは解散を第180回国会で差し出さなくてもいいとの見解を突如示唆しました。このように、野田、安住、岡田、城島のインテリヤクザの前に、谷垣禎一・自民党総裁は衆院で賛成した一体改革法案に参院で反対すると言いだし、総理から「近いうちに信を問う」との誠実な言葉をもらったうえで、参院で法案に賛成。そして、その後、国民の生活が第一が提出した「3党合意を批判する」という問責決議に賛成してしまい、落とし穴に落ちて行きました。谷垣自民党は一体改革法案の採決を記名投票表決にすることで、民主党非主流派を揺さぶり、民主党会派の国会議員数を「マイナス63人」と大きく減らすことができたので、自民党と公明党は第46回衆院選勝利に近づきました。
特例公債法案を成立させないことで、首相のクビを差し出す連鎖を断ち切れたというのが、トリッキーですが、第180回国会の最大の功績でした。この特例公債法案のマジックについて、私が安住答弁を受けて、責任感と実力のある複数の民主党を動かしている人たちに「あれ、特例公債法案今国会で成立させないでも大丈夫らしいですね」と話を差し向けると、みんな爆笑していました。過去に与党経験を含めて、この3年間、政権の重荷を背負うなかで、ことしも特例公債法案とひきかえに総理のクビをとられるか、それとも解散に打って出た方がいいかと半年間、頭を悩ましてきたところで、「会期中に成立させないで大丈夫」ということが分かり、緊張感がほどけた大爆笑。そして、谷垣総裁が落とし穴に落ちたことも爆笑の延長線上ですが、それは失礼だし谷垣総裁はよくやったと思いますが、椅子から転げ落ちそうな大爆笑の中に、表面上の数字よりずっと少ない人数で政権の重荷を背負い続ける民主党主流派の緊張感を許していただきたいものです。まあ、衆院選のふたが開くまで、あと1年以内ですから、最後までしっかりとやりましょう。
自民党総裁選が始まりました。「次の総理に誰がいいか」で谷垣さんが1%前後という状況で、「次の総理の顔」で次期総選挙を戦う野党期にある二大政党(女王陛下の反対党)においては、総裁の交代はやむを得ない面があったと感じます。また小沢氏の悪い作戦に毎年引っかかる「谷垣総理」に日本の外交を任せられたかと言えば疑問符が付くでしょう。しかし、3党合意をはじめ、谷垣総裁はよくやったと思います。ただ、自民党は「与党を早期の解散に追い込む」のではなく、「総理(与党代表)を低支持率で低迷させ、任期満了近くまで衆議院解散をできないように追い込む」ということを肝に銘じるよう、野党経験の先輩として申し上げたい。
とはいえ、責任感と力のある民主党関係者も「このまま3月31日まで特例公債法案を成立させなくてもいいんじゃないか」と確認をとったり、「秋の臨時国会を開かずに自民党新総裁をデビューさせずに、来年の通常国会に予算を提出した後、定数是正法を成立させ次第、解散してしまう」と、少し悪のりをし過ぎかなあという気がします。いずれにしろ、民主党非主流派も、脚を引っ張ることだけはやめていただきたい。なかなか、与党で3度目の通常国会となると、政権の重荷を背負える人も、1人あたりが重すぎるし、2年~3年間背負い続けて走っていますから、しっかりこの閉会中に鋭気を養いたいものです。
ただ、第181臨時国会は、特例公債法案と定数是正法案の成立のメドが付いてから、召集すべきでしょう。「秋の臨時国会を召集しないといけない」という法律・規則などどこにもありませんから。
ところで、恒例の会期のニックネームの命名をここまでしておりませんでしたが、私は第180回通常国会を「野田国会」と命名致します。
「首相再選を」民主支持層で6割=内閣支持率23%―時事世論調査(時事通信) - goo ニュース
時事通信が7~10日に実施した9月の世論調査によると、民主党代表選(21日投開票)について、同党支持層のうち「野田佳彦首相の再選を望む」と答えた人が6割を超えた。国会議員票で優位に立つ首相が、地方の党員・サポーター票でも有利な情勢であることが裏付けられた。一方、野田内閣の支持率は前月比3.5ポイント増の23.3%で、2カ月ぶりに2割台に回復した。不支持率は同5.1ポイント減の56.0%だった。
調査は全国の成人男女2000人を対象に、個別面接方式で実施した。有効回収率は64.9%。
民主党代表選での首相再選について、「望む」32.0%に対し、「望まない」48.1%で、内閣支持率と同様の傾向を示した。ただ、民主党支持層に限ると「望む」は63.5%。「望まない」の26.0%を大きく上回った。無党派層では「望む」29.2%、「望まない」48.8%だった。
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