[写真]野田首相と安倍首相、あなたはどっちを選ぶ? ともに首相官邸ホームページの写真から。
自民党(自由民主党)は2012年9月26日(水)、谷垣禎一総裁(シャドウ首相)の任期満了に伴う総裁選を党本部で開き、新総裁に安倍晋三元首相(清和会)を選びました。総裁経験者と言っても、今回が新しい任期ですから、2015年9月30日の任期後も、もう一度立候補することもできますが、まずは第46回衆議院議員総選挙(来年10月までに施行)が正念場となります。ですから「近いうち解散」で負ければ、今年中に辞任し総裁選になる可能性もあります。私たち有権者の声がダイレクトに届く、なんともダイナミックな時代になりました。
自民党は第45回衆院選で負けて、第2次野党期に入りました。麻生太郎総裁が潔く辞任し、谷垣禎一総裁がよく党を守りました。新進党は第41回衆院選で負けた小沢一郎党首が引責辞任を嫌がりいじきたなく居座り、党内に遠心力を包含してしまい、ボロボロと離党者が出ていったのは対称的。健全な議院内閣制は野党を育ててこそ。谷垣さんには万雷の拍手を贈りたいと思います。
自民党総裁選挙は、第45期衆議院での引退を表明している大野功統さんが選挙管理委員長を務めました。党員投票(県連ごとにドント方式で配分)と議員投票で行われました。1回目の投票は、議員投票、党員投票の順に、
石破 茂候補が、34票、165票で合計199票。
安倍晋三候補が、54票、87票で合計141票。
石原伸晃候補が58票、38票で合計96票。
町村信孝候補が27票、7票で合計34票。
林芳正候補が24票、3票で合計27票。
このため、速やかに議員投票だけの決選投票となり、
安倍晋三候補が108票、
石破 茂候補が 89票
となり、安倍さんが当選しました。
この党員投票と議員投票のねじれが、今後の国政選挙や、党組織の活性化にどう影響するか興味深いところです。とはいえ、民主党は完全に土俵際に追い込まれて、有権者が「野田総理か安倍総理か」という、おそらく日本で初めての国民の直接投票に近い判断で総理を選ぶことになりますが、1分9分という状況になってきたように思えます。「与党は双葉山だ」と言われますが、受けた立つ与党も、50代の総理経験者が新総裁(シャドウ首相)ということで、完全に土俵際まで追い込まれました。
安倍候補の筆頭推薦人は、連続5回当選のシャドウ文科大臣で元官房副長官・文科副大臣の下村博文さん。選挙責任者は甘利明元経産相。推薦人には佐田玄一郎元行革相が名を連ねましたが、それ以外の17人の推薦人は閣僚未経験ですから、次期国政選挙に向けて活力になります。うち、民自公3党協議に参加した経験があるのは、加藤勝信さんと礒崎陽輔さんの2人だけで、他陣営より少なく、これは今後の野田政権の運営で不安材料が浮上しました。
やはり、今世紀に入ってからの自民党は、弱小派閥「清和会」が力を持ち、福田赳夫総裁以来4半世紀ぶりに森喜朗総裁が誕生した後、小泉純一郎総裁、安倍晋三総裁、福田康夫総裁と4代連続で清和会から首相が出て、麻生太郎総裁も清和会の基盤に乗って政権を運営していたというのが実情のようです。
経世会・平成研に勝るとも劣らぬ責任派閥である宏池会から谷垣総裁が出ましたが、病気で退陣した池田勇人総裁、ハプニング解散で亡くなった大平正芳総裁、「和の政治」で再選不出馬だった鈴木善幸総裁、宮澤嘘つき解散の宮澤喜一総裁、政治改革関連法成立に協力しながらも首相になれなかった河野洋平総裁と、宏池会はついていません。
そして、またしても、清和会に良いところをとられてしまいました。
ただ、安倍新総裁も、この3年間に地方周りをしていたとの情報があります。「元内閣総理大臣」の肩書きで回れば、集音マイクはより大きくなります。安倍新総裁(シャドウ首相)は次期総選挙の顔として、具体的に総理のイメージを有権者が想像しやすいこともあり、極めて手強く、わが党と野田佳彦総理は土俵際まで追い込まれ、絶体絶命になったと気を引き締めております。
自民党の機関紙「週刊自由民主」が報じるところでは、安倍さんは「私たちが政権を取ったら、政府に日本経済再生本部を創設し、英知を結集して力強い成長戦略を実行していきます」「成長なくして財政再建はありません。成長していく精神を失った国に未来はないと思います」としています。民主党政権はいかんせん経済政策がないに等しく、民主党国会議員も午前8時50分に連日発表される各種経済統計もチェックしていないようですから、どうにもなりません。経済戦略も選挙の大きな争点となりそうですし、シャドウキャビネットの顔ぶれも気になるところです。
ところで。自民党総裁選挙では、各陣営が自民党本部に7500万円ほどの「党員党友名簿貸出料」を支払っているようです。これがどういう経緯で、これだけの巨額のマネーが必要であるかどうかは、幹事長経験者も含めて、国会議員で正確なところを知っている人はいないというのが実情のようだ、という話もあります。来年11月末に公表される2012年の自民党本部の政治資金収支報告書に、この収入があるかどうか、かなり先ですが、興味を持っていきたいところです。たしかに、谷垣さんも、石破さんも、1回休みが入って、2度目の総裁選出馬をしています。なぜ1回休んだのか。今回は5候補全員が二世議員(うち石原伸晃さんを除く4候補が世襲議員)でしたが、この7500万円がなければ立候補できない(事実上、党員党友名簿を借りずに当選するのは不可能と思われます)ということだと、自民党総裁というのは、これからも、現代の世襲貴族に限定された仕事だと断じざるをえません。
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