ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

提出できなかった法案は出先改革、「後期高齢者」廃止、PKO協力法改正、農業者戸別所得補償法案など

2012年09月06日 20時45分02秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 第180回国会はあす2012年9月7日(金)、衆参両院の委員会で未成立法案の会期末処理(閉会中審査・継続審査あるいは廃案)、請願の採択などを終えて、事実上閉会します。私が2007年8月にこのブログを開設してから、初めて内閣総辞職と衆議院解散のいずれもない通常国会となりました。

 この国会では新規提出内閣提出法案(閣法)がおととしの鳩山内閣・小沢一郎幹事長体制による第174回国会を上回ることができたほか、衆法・参法の成立率がとても高い国会となりました。参議院にある、財政運営のための特例公債法案(180閣法2号内閣修正)、定数是正と定数削減法案(180衆法22号)、衆議院にある国家公務員制度改革法案などの会期末処理は改めて書くとして、ここでは、今国会に提出できなかった法案についてまとめます。

 内閣官房の内閣総務官室がまとめている「第180回国会内閣提出法案件名・要旨調」で提出を検討しているとした法案の中で、提出されなかったのは、内閣官房の「秘密保全法案」、内閣府の「国の出先機関の地方移管法案」、「PKO協力法延長法案」、農水省の「農業者戸別所得補償法案」、法務省の「人権委員会設置法案」と「人権擁護委員法の一部を改正する法案」など。このうち、マニフェスト関係では、直接支払い(農業者戸別所得保障法案)の法的措置(平成22年度当初から予算化済み)、出先機関の地方移管(マニフェストでは「原則廃止」)などが先送りとなりました。

 このほか、6月15日の3党合意(社会保障と税の一体改革法案の民自公修正協議)にもとづき、当初予算の年金交付国債を削除し年金特例公債を基礎年金の国庫負担部分に充てる補正を盛り込んだ第1次補正予算案は提出されませんでした。これはおそらく12月14日(金)の年金支給日には関係してくると思いますので、秋の臨時国会(召集未定)には確実に出てくるでしょう。

 それと、野田佳彦首相が提出する意向を答弁していた「後期高齢者医療保険制度を廃止し国民健康保険などを強化する法案」も提出されませんでした。これもマニフェストの重要案件でしたが、野党・民主党の直嶋正行政調会長が記者会見で「所要額数千億円の見込み」と発表するなど野党では情報把握と計算に限界がありました。2008年4月1日の開始から4年以上が経ってしまい、ものすごい数字のボリュームが必要な分厚い法案になるでしょうが、厚労省はぜひ頑張って計算して、遅くとも来年の通常国会には出してほしいところです。

 上述した「国の出先機関改革法案」が出なかったのは残念です。2009民主党マニフェストには「国の出先機関を原則廃止する」とだけ書いてあり、いかにも野党一筋11年間の政党が書いた絵に描いた餅でしたが、この問題の難しさがようやく分かってきたことでしょう。

 そこで私は提案があります。例えば、東北地方整備局は素晴らしい。東日本大震災のときの、東北地整による東北自動車道の啓開(けいかい)活動がなければ、自衛隊をはじめとする復旧活動がどうなっていたかと考えるとぞっとします。それはさておき、国土交通省の大臣官房には、全国の地方整備局の職員の名簿というのはあるんでしょうか。そして、各職員がいつ、どこの役所で採用されたのか、すべて備えているのでしょうか。そういった情報公開や事業仕分けをしてから、アクションプランをつくるべきではないでしょうか。例えば、国税庁の長官官房には、出先機関の職員の名簿も見事なまでに完備されているんだろうと考えます。

 大手町にある国税庁の出先機関は「東京国税局」ですが、隣には、農林水産省の出先機関「関東農政局」があります。なぜ「東京」と「関東」なのか。関東信越国税局は埼玉県にあります。さらに山梨県には東京国税局甲府事務所があります。こういった役所ごとの区割りこそが出先機関のやっかいさであり、この整理がない状態で、渡りに船で、地方自治体による広域地方公共団体である「広域連合」に移管しようとしたって、そもそも区割りが違うのだからうまくはまりません。法案より先に、こういった現状を「出先機関仕分け」で国民に理解してもらわないと現実には難しいと思います。第45期衆議院での成立はあきらめて、仕分けと法案作りをしたうえで、信を問い、選挙後の勢いで特別国会で官僚の抵抗をはねのけるようでないと、少し無理だと考えます。菅直人前首相が役人を怒鳴ってアクションプランをやり直させたのは良かったと考えます。

 これだけ見ると、秋の臨時国会はてんこ盛りのような気がしますが、ていねいな陣立ての上、十分に準備期間を置いて召集すべきだと考えます。

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衆議院本会議、衆規則112条にもとづき議題順番を変更 6法・4条約成立

2012年09月06日 13時46分20秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

【衆議院本会議 2012年9月6日(木)】

 議事日程が11本用意されていましたが、衆議院規則第112条、衆議院先例210にもとづき、議題の採決順が変更されました。

 まず、日程第1から第3までの池田元久・厚生労働委員長の委員長報告や趣旨弁明がありました。

 このなかで、「移植にもちいる造血幹細胞の適切な提供の推進法」(180参法35号)が可決・成立し、公明党の執念が実りました。

 この後、横路孝弘議長が「お諮りいたします。日程第四ないし(乃至)第十一は後回しに致したく存じますが、ご異議ありませんか」と述べ、承諾されました。「ないし(乃至)」とは広辞苑によると、数を示すときに上と下との限界を示して、中間を略すのに使う語で、・・・から・・・にかけて、という意味です。ですから「日程第四ないし第十一」とは「日程第四から第十一にかけて」という意味です。

 当然にして、日程第十二が議題となり、中山義活・経済産業委員長の報告で、「改正中小企業等協同組合法」(180参法33号)が可決・成立しました。今国会では議員立法による改正法案がとても多くなっています。

 この後、横路議長は「さきほど後回しにした日程第四を議題といたします」と宣告すると、野党が退席したようです。

 「改正金融商品取引法」(180閣法67号参先議)は起立採決の結果、1人だけ着席者がいたようで、参事や事務総長と相談のうえ、横路議長は「(全会一致ではなく)賛成多数で可決しました」と述べ、可決・成立しました。

 今国会でもともと提出法案が多かった上、前国交相の問責政局により、渋滞していた国土交通委員会ですが、「改正海上運送法」(180閣法39号参先議)、「改正海洋汚染・海上災害防止法」(180閣法40号参先議)、「改正船員法」(180閣法四十一号参先議参院修正)の3本が可決・成立しました。これも、横路議長が「ひとりすわっているね」と鬼塚誠事務総長と相談の上、賛成多数で可決を宣言しました。これで国交省は今国会に13議案(前国会の積み残しも含めた12法案と北朝鮮制裁1承認案件)のうち7本成立にこぎつけました。羽田雄一郎国交相の手腕です。二世議員というのは経験と時間的余裕からこういう手堅い仕事をする傾向がありピンチでの登板に向いている傾向があります。

 この後、条約の締結案件。

 田中眞紀子外務委員長は、「欧州復興開発銀行(EBRD)を拡大することにともなう設立協定の改正の受諾への承認」(180条約8号参先議)、「ACTA偽造品取引防止協定の締結への承認」(180条約9号参先議)、「海上労働条約の締結の承認」(180条約10号参先議)、「GATT関税と貿易の一般協定の譲許表第38表(日本)の修正と訂正に関する確認書の締結への承認」(第180条約11号参先議)の4本を報告し、可決し、両院の承諾で批准が決まりました。4条約とも、多国間条約なので、バイラテラルな国際社会と到来を感じさせました。

 なお、国交3法と条約4件は陽の当たる民主党1期生である阿知波吉信さんと山尾志桜里さんがそれぞれの持ち場で、汚れ役(強行採決のための質疑打ち切り動議の提出者)を買って出たために、時代を前に進めることが可能になった議案です。場合によっては、他党の支持者から悪く言われることをやっても、シオリン&アッチーはだれも気付かないところで時代を前に進めたのです。代表選などやっている場合ではないのです。

 このほか、「特定フィブリノゲン製剤および第9因子血液凝固剤の被害者への給付金支給特別措置法の改正案」(180衆法34号)、「母子家庭の母・父子家庭の父の就業の促進に関する法案」(180衆法38号)が可決し、参院に送られました。会期は土曜日まであるので、あすのうちに趣旨説明、質疑、採決をして、金曜日か土曜日の本会議で成立させて欲しいものです。

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