渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

海江田万里ネクスト首相が代表質問、安倍首相「エールを贈りたい」として道路特定財源さっそく撤回

2013年01月30日 15時55分20秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[写真]代表質問にたった海江田万里ネクスト首相、2013年1月30日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

【衆議院本会議 2013年1月30日(水) 首相の所信表明演説に対する各党代表質問】

 首相の所信表明に対する各党代表質問があり、民主党代表の海江田万里さん(ネクスト首相)がトップバッターを務めました。

 海江田さんは「安倍晋三総理が第96代内閣総理大臣にご就任されました。まずもってお祝いを申し上げます。おめでとうございます。立場は違いますが互いに切磋琢磨し、日本の未来を切り開いていきましょう」としました。

 そして、締めくくりに、アメリカ先住民に伝わる言葉を紹介。

 「私たちの土地は、先祖から相続したものではなく、子孫から借りているものなのです」。

 海江田さんは「私たちの日本は、今の世代で自由勝手にしていいものではありません。よりよい日本にして、次の世代に受け渡す義務が今の世代にあります。実はこの精神こそ、民主党の政策の底流に脈々と流れるものであります。それゆえにわれわれは、国債の大量発行により次の世代へ負担を押しつけるのではなく、現在の世代が負担を分かちあう苦渋の判断を下したのであります」として社会保障と税の一体改革(消費税増税)を決断したとしました。まったくもって、その通りです。


[画像]安倍晋三首相(自民党総裁)、2013年1月30日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 安倍首相は答弁で「まず初めは国難の中で、民主党代表になられた海江田万里議員にエールを贈りたい」と述べ、「(「私たちの土地は先祖から相続したものではなく、子孫から借りているものなんです」という)最後の言葉は私たちも全く同感だ」として社保・税一体改革の3党合意を推していく考えを強調しました。

 ちなみに、第1次安倍内閣の時に、首相はNHK国会中継の中で、「NC(えぬしー)」という言葉を歴代首相のなかで初めて使ってくれました。衆議院本会議場を改造して、首相ら閣僚の後ろに自民党と公明党の議員、対面する格好で、民主党NC(ネクスト・キャビネット、次の内閣)と民主党、日本維新の会、みんなの党の議員が相対峙する会議室にしてしまった方がよいのですが、財政難なので、現総理がそういってくれたのはよかったです。この後、質問にたった、平沼赳夫・日本維新の会国会議員団長に対する答弁には、政党名や就任を祝う発言はまったくありませんでした。

 海江田さんは政府と日本銀行の物価上昇目標2・0%の共同声明について、野田政権下の2012年10月に「1%ですでに実施していた」としました。

 自民党の税制改正大綱に「自動車重量税は道路の維持管理などにあてる」と道路特定財源の復活が盛り込まれたことについて、「民主党の要求に応じて福田康夫内閣が決断したことに背いた」とし、きのう、本予算案とともに閣議決定した政府の税制改正大綱にないことの矛盾をただしました。安倍首相は「自動車重量税は一般財源であり、道路特定財源では全くない」と断言。福田さんと安倍さんは同じ派閥「清和会」で、党税調との間で党内のプロセスが不透明であることを感じました。とはいえ、これで「5年前のガソリン値下げ隊の成果と福田康夫首相(自民党総裁)の決断をふみにじる自民党の先祖返り、道路特定財源復活」という今国会の争点は一気に火消しされたのかもしれません。まあ、自民党らしいし、国家のためには良かった。

 自民党の高村正彦副総裁は「与党・民主党は足の引っ張り合いを繰り返した。自民党は自由闊達な議論のもと、所定の手続きによって政策を決める」と演説。今回の道路特定財源騒動の党税調と官邸の連動をみていると、うなずけます。ただ、もっともらしいことを言っていると、段々とむりやりな自己主張の世界に入っていくのがインチキ政党・自民党ベテランの特徴で、「事前防災などの公共事業への歳出は、単年度は別として、中長期的には財政負担が軽くなる」 と支離滅裂な理論を開陳すると、自民党が大喝采。安倍首相(自民党総裁)も「公共事業は悪であるという旧来の考え方から脱却しなければならない」と応じました。高村さんは申し合わせの時間を大幅に余らせて演説を終えたようで、本会議は予定より大幅に早く散会しました。自民党が与党期にはよくあることです。

 ここで、2時間が過ぎたので、議長席が伊吹文明議長から赤松広隆副議長に交代しました。


[画像]議長席に座る赤松広隆・衆議院副議長(左)、2013年1月30日(水)、衆議院インターネット審議中継から。

 日本維新の会国会議員団代表の平沼赳夫さんは、防衛費の大幅増や男系皇族が悠仁親王殿下がお生まれになる前の8人が内親王でいらっしゃったことを「男児はほぼ5割の確率というのが学説なのに」と述べるなど、タカ派色・タブー色の強いテーマに踏み込み、大変好感が持てました。


[写真](本人からみて)右を向く、平沼赳夫・日本維新の会国会議員団代表、2013年1月30日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 ただ、日本国憲法はハーグ陸戦条約43条(国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない)に反しているので、「憲法改正」ではなく「新憲法制定」すべきだとの論。それとアメリカが覇権国でなくなったのでG20はG0(ゼロ)になったとの論は、行き過ぎていると感じました。しかしベテランらしいバランス感覚を見せ、TPPの事前交渉参加については「最大の同盟国であるアメリカから要求されているのだから参加すべきだ」とし、条約締結には「是は是、非は非として国益にのっとって対応すればいい」との考えはまったくその通りです。そもそも「事前交渉参加の是非」が政治日程(議題)になっていることがナンセンスとしかいいようがありません。

 とにかく、私も「民主中道勢力の結集」とか行ってきましたが、私は一貫して保守だしタカ派だし右翼なので、日本維新の会にはしっかりとKeep Right、右向きになってほしいし、民主党も負けじと保守を競ってほしいと考えます。私は海江田さんと細野さんは保守で右翼だと信じています。平沼さんの質問に安倍首相が「未来に渡って皇室をお守りする」と述べましたが、そのために民主党次の内閣があすにでも臨時でリアル内閣ができるような体制を政府が財政的な意味も含めて支援することが、長期的に皇室と国家財政を守ることであることは言うまでもありません。

 平沼さんの演説時間が申し合わせの時間が大幅にオーバーしたので、赤松副議長が2度ほど、発言をまとめるよう促したほか、議場内交渉係が交渉スペースで協議する場面もあり、予算委はまだありませんが、さっそく第46期衆議院が巡航速度に乗り始めました。

 なお、今国会での議事進行係は東京6区の自民党の越智隆雄さんが務めています。一体改革の300時間審議をこなして明治以来の懸案である幼保一体化を実現したのに、どういうわけか完全落選してしまった小宮山洋子・前少子化担当大臣は東京6区から出馬せずに政界を引退する意向であると、一部で報道されています。

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◎平成25年度予算「農業者戸別所得補償」から「経営所得安定対策」改名、自民党猫の目農政復活を許すな!

2013年01月30日 07時40分17秒 | 第183通常国会(2013年1~6月)附則・附帯決議

[写真]郡司彰ネクスト農相(前リアル農相)、プレス民主から。

 インチキ政党=自民党。

 平成25年度本予算書は2月末ごろに国会に提出され、中身が分かるところです。その前段階として財務省主計局が書いている「予算のポイント」を読むと、許し難いことに、「農業者戸別所得補償制度」の名称を「経営所得安定対策」に変更することになりました。

 自民党2012政権公約の25ページには「多面的機能直接支払い法」と書いてあり、名称からして公約違反の気配があります。

 何よりも問題なのは、「所得安定」や「担い手育成」などの名称で(国交省に比べれば)少額の予算メニューを細かく作り、補助金申請で農業者、田んぼと票田に縛り付ける自民党猫の目農政がはやくも復活したことです。

 予算額は385億円減額するとのことですが、これは毎年予算が余っていたので、問題ないでしょう。

 農業直接支払いは、初当選直後の篠原孝さんのアイディアが2005マニフェスト(岡田克也ネクスト首相)で「農業の直接支払い」として入りました。その後2007年の参院選マニフェストで代表の小沢一郎氏が「農業者戸別所得補償制度」に名を変え第21回参院選で勝利。参院第1党となり、参議院の平野達男さんが筆頭発議者として、参院先議の議員立法で参院で可決し、衆院でも審議入りしました。しかし、政権交代後に、衆参がねじれてしまったため、農水省はついに一回も「農業者戸別所得補償法案」を提出できずに任期が切れました。そのため、根拠法がありません。なので、予算書の書き換えだけで、名称は簡単に変更できます。

 岡田克也さんは2012年11月27日の副総理記者会見で「今まで減反をいわば行政指導というか、法的根拠なくやってきた」と述べました。私このとき、初めて知って驚いたのですが、「生産数量目標」(減反)はずっと農水省の行政指導、裁量行政でやってきたんです。そこに農業者が政府与党の奴隷になる仕組みがあったわけです。

 これを農民分権として、しがらみから解き放ったのが民主党による農業者戸別所得補償(農業の直接支払い)法案ですが、参院で可決したことにあせった第2次与党期の自民党は「品目横断的安定対策」として先取りして横取りしました。そのあがきを軽蔑され、ついに農村票(票田)が崩壊し、政権交代。民主党が農業者戸別所得補償を予算書のなかで実現しました。2010年8月4日の参・予算委では、自民党参院議員である山田俊男JA元専務理事が山田正彦農相に「加入率が高く、良い方向に進んでいる」「私は農相がおっしゃる戸別所得補償が必要だということには、異議を挟みませんが・・・私も必要だと思います」(山田・山田問答)と白旗を上げて、自民党は屈しました。

 ところが、自民党が日本を取り戻したとたんに、「経営所得安定対策」に名称を変えることは「猫の目農政」への先祖返りです。

 民主党としては一つだけ光明があり、おととし8月9日の民自公3党合意には「農業戸別所得補償の12年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証を基に、必要な見直しを検討する」と書いてあります。この実務者協議は、民主党から郡司彰さん、自民党から宮越光寛さん、公明党から石田祝稔さんが参加しましたが、合意にいたりませんでした。その後、昨年3月1日の衆・予算委に民主党の玉木雄一郎さんがNHK国会中継に初登場し、「与野党による政策効果の検証ですので、あえて(身内である野田内閣に対して)改善点を指摘します」とし、「戸別所得補償制度と言ったが、私は「戸別」の名前を改めるべきだと考えている」とし「法制化を含めて恒久化をすべきだ。それを3党協議でやりましょう」と呼びかけました。 


[画像]NHK国会中継で、身内である総理ら閣僚に背を向け、テレビカメラ(国民)に向かって農業直接支払いの意義と法制化を訴える玉木雄一郎さん、2012年3月1日(木)、衆議院インターネット審議中継

 予算措置と法制化をセットにした3党協議で政権交代に関係ない恒久制度にすべきです。自民党公約の「多面的機能直接支払い法」は良い名称だと感じます。

 衆院農水委員には、自民党宮越さん、公明党石田さんも、民主党玉木さんも名を連ねています。

 極端に言えば、日本農業が生きるか死ぬかの問題です。米だから、御神酒もつくれなくなるし、日本が生きるか死ぬかの問題になります。しかし、そこに私たち日本人が自民党に足下をみられて、米価審議会などの行政指導によるコメ農家の奴隷化が完成しました。国が戸別補償すれば、JA共済に加入するかどうかも農家の自由です。

 今こそ平成の農地改革、平成の農民改革です。

 猫の目行政から、篠原・郡司・玉木法としての農業直接支払い法の制定を。男子一生の仕事です。

[参考] 2012年11月27日(火)の岡田副総理の発言

 個別のことは、個々に評価するつもりはありませんが、直接支払いということについては自民党も否定していないと。実際にどういう形でそれを行うかというのは、名前は変わりましたが、実態はどう違うかというのははっきりしません、中身は、これから議論していけばいいことだと思いますが、ただ直接支払い制度を入れたということは同じですから、これは非常に大きな転換だったのですね。そのことのやはり必要性というのは認めざるを得なかったと、彼らもいい制度だから基本的には変えられないということだと思っております。
 今まで減反をいわば行政指導というか、法的根拠なくやってきた結果、減反を守らない人は守らない、ある意味では正直者は損をするというような仕組みもありましたが、この戸別補償とセットにすることで、実効性が上がって、そしてそういう意味では、そういう生産調整の率も上がるようになって、それがすべてと言うつもりはありませんが、今年米の値段が少し下がらずに、むしろ上がっているというのも、そういったことの一つの結果ではないかというふうに思っております。
 別に上がることがいいことばかりではありませんが、どんどん過剰生産になって下がり続けるという、そういうことの歯止めにもなっているわけで、やはり私は戸別所得補償方式の意義というものは、改めて確認されていると思います。もちろん内容的に、更にいいものにしていく、特に集約化に向けて、今もそういう集約効果はあるのですが、更にそういったことについて、インセンティブをつけていくというような改革は必要だというふうに思います。

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