[写真]大久保勉ネクスト経産相(参院議員)。
安倍晋三首相(自民党総裁)はきのう2013年1月11日(金)に記者会見し、緊急経済対策・追加景気対策である「日本再生に向けた緊急経済対策」を発表しました。3連休明けに「平成24年度第1次補正予算案」を決定。さらに、総選挙で作業が遅れている「平成25年度税制改正大綱」も今月策定。25年度当初の政府関係機関予算などにも反映されるでしょう。そのなかで、補正予算案提出が28日の召集日ではなく所信表明に対する代表演説が終わる31日ごろにずれ込むという予想も出てきており「ロケットスタート」に懸念が出てきました。
ペーパーは全文読みました。
「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/01/11/20130111keizaitaisaku.pdf)
まあ、経済対策のパッケージとしては、そこそこ悪くないかなあというのが正直なところ。とはいえ、それをまとめたエントリーのようなものを書いて清和会安倍ちゃんを助けることは本意ではありません。リンク先か、新聞でご確認いただきたいです。
どうしても書きたい感想と、民主党は国会でどう対応すべきかだけ書きます。
【本当に景気が回復するのか】
まず、「本当に景気が回復するのか?」という疑問を持つ読者には、これは、政府支出をした分は必ず景気は上向きになります。ですから、上向くでしょう。
野田佳彦・民主党最高顧問は首相として「政治生命をかけて」社会保障と税の一体改革法をつくりました。建設国債、国庫債務負担行為、繰越明許費で、来年4月からの消費税増税分を先食いしないか。今月から復興増税が始まり、筆者に振り込まれた原稿料も源泉徴収税上乗せで、天引き後の手取りが減りました。消費増税分の先食い財源や前倒し発注の総額について、国会がしっかりと予算の実施状況を調査すべし。
【雇用60万人拡大目標はできないと思う】
「雇用60万人拡大」について。私はできないと思います。「60万」という個別の数字についてあれこれ議論しません。雇用は拡大してほしいです。
が、一つ懐疑的な面があります。それは建設業に集中している点です。建設業界から介護業界への雇用のシフトは長期的にみられました。その後、復興需要により、現在、建設業での優秀な親方は人手不足感があるようです。しかし「アベノミクス緊急経済対策」のパッケージに盛り込まれた雇用創出は建設業が中心です。
例えば、象徴的な部分を抜き出せば、「医療関連イノベーションの促進」の最初にあるメニューが「iPS細胞を用いた再生医療研究加速のための施設・設備整備など」となっています。施設の整備なんですから、これは「建設業」です。復興庁の「復興再生に向けた農地・農業用施設の整備」も、国土交通省の「全国ミッシングリンクの整備」(ミッシングリンク整備とは大分県と宮崎県間や紀伊半島などの高速道路がつながっていないところに高速道路を建設する政策のこと)も建設業。トンネルの事前防災・減災も、国交省・総務省から自治体への各種交付金も建設業です。「同じ建設業での専門が違う」と指摘があれば、私は「それこそ、その専門性を持つ人材はどこから調達するのか」と反論します。
大工は人材難で、日雇いの警備員が増えるだけに感じます。ならば、セーフティーネットを厚くする民主党路線の方が良かったことになります。フルタイムでなく日雇いで警備員をしても実績にはならないし、持続可能な経済・雇用はできません。
【国会は予算審議よりも、予算の実施状況の調査に力を入れるべきだ】
人手不足であれば、予算が執行できず、景気回復は遅れます。自民党系首長が基金を積みまして喜ぶようなことがあると地獄におちます。
私はながく政治(国会・首相官邸・横浜市・神奈川県庁)を見てきて、予算の編成、予算の審議にしか興味がありませんでした。しかし、3年3ヶ月の民主党第1次与党期に、「予算の執行」に興味を持ちました。それはなんといっても東日本大震災のがれき(災害廃棄物)処理。環境省の2011年度予算が当初0・2兆円が最終補正後1・4兆円になり、0・6兆円を繰越明許をかけた。年度中には自民党の茂木敏充政調会長(現在はリアル経産相)から「5000分の1しか執行できていない」との指摘が出て、三権の長経験者から環境大臣に回った江田五月さんが「本省から職員を現地に送って不眠不休で対応させている」と答弁する姿がありました。予算の執行状況をもっとしっかり国会が監視しなければならないと感じた問答でした。
予算の実施状況の調査は、第183通常国会での予算成立後も会期末まで断続的にやらないといけない。ここで、民主党が与党経験をいかせるか、台無しにするか。党の存亡がかかった命題だと考えています。また、参議院予算委員会のように委員会に委嘱調査するしくみも、衆議院でも採用すべきだと考えます。衆参の決算・行政監視委員会も大事です。
緊急経済対策には、「信用金庫・信用組合による会員・組合員(である会社)の海外子会社への融資などの解禁」が盛り込まれました。「融資(枠)」について、「民間」の力を引っ張り出す「規制改革」「税制改正」を盛り込んだことで、真水10・3兆円に対して、事業規模20・2兆円を実現していることで、さすがにこれは敵ながらあっぱれとしか言いようがありません。
【カギ括弧を忘れるな】
「15ヶ月予算」というのは、小渕内閣から使われた言葉ですが、行政府は別として、立法府にとっては、明確に憲法・財政法違反です。ですから、最低でも「」(カギ括弧)は必ずつけないといけません。国難のときこそ、本来の意味で言葉を使うべきです。
経済通が使う言葉の本来の意味と違った比喩の使い方が気になります。菅直人最高顧問は第1次野党期から、我が党内で「グリーン・ニューディール」という言葉を使っている頃から、ひとり、「グリーン・イノベーション」と言っていました。イノベーションは「技術革新」のことです。では、ライフ・イノベーションの中核がiPSであることは言うまでもありませんが、iPSはイノベーションでしょうか?あれは「発見」でしょう。あるいは、「介護は日本の成長産業」という場合の成長産業は比喩であり本来の意味ではありません。「介護はフロンティア」のフロンティアも同様です。そして介護分野にイノベーションがあったら、雇用は増えるどころから減るでしょう。このように菅最高顧問は、本来の意味を知らずに比喩的に使うことで、経済政策は言葉使いが混乱していました。反省してください。
ある民主党政策調査会・経済産業部門にかかわるスタッフ同士がお酒を飲みながらワイワイと経済政策を語り合いました。経産省のクールジャパンについて論じました。気のおけない仲間で、ストレス発散のために政策談義をする、政策オタク、サラリーマン的組織である民主党らしい雰囲気。そこで「アニメや、(秋葉原のコスプレなどの)オタクはクールジャパンでない。経産省は予算を減らすべきだ」と一致。ところが、これは「クールジャパン」の意味を「冷たい日本」だと思いこんでいたようです。民主党スタッフも高学歴なわりにどうかと感じます。が、経産省も1億人納税者へのアカウンタビリティー(説明能力、説明責任)への意識があれば、「「クール」ジャパン」というように、「クール」の部分だけにカギ括弧をつける謙虚さが必要です。経産省、「クール」ジャパンがんばってください、応援しています。
なお、民主党のネクスト経済産業大臣には参議院から元リアル財務副大臣の大久保勉さんが就任しました。
緊急経済対策、事業費20.2兆円=公共事業復活5.2兆円―GDP2%押し上げ(時事通信) - goo ニュース
政府は11日午前の閣議で、「日本経済再生に向けた取り組みの第1弾」と位置付ける緊急経済対策を決定した。国の支出10.3兆円に地方自治体や民間企業などの負担を合わせた総事業費は20.2兆円。衆院選で自民、公明両党が増額を主張した公共事業に5.2兆円を充てた。大規模な財政出動に規制緩和などを組み合わせ、官民一体で早期のデフレ脱却を目指す。
安倍晋三首相は閣議後に首相官邸で記者会見し、緊急対策について「従来とは次元の違うレベルで、一体かつ強力に実行する政策パッケージだ」と強調。実質GDP(国内総生産)が2%程度押し上げられ、約60万人の雇用が創出されるとの試算を明らかにした。財源捻出へ5.2兆円の建設国債を追加発行するため国の借金が膨らむが、「財政規律は極めて重要。基礎的財政収支の黒字化を目指す」と、中長期的な財政健全化目標は堅持する考えを示した。
緊急対策は「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」を重点3分野に掲げた。復興・防災では、中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、老朽化したトンネルの点検・改修などを盛り込んだ。公共事業費の総額は、2012年度当初予算の公共事業関係費5.1兆円とほぼ同額。民主党政権下で減少傾向が続いた公共事業の復活を印象付けた。復興関連には国費で1.6兆円を配分した。
経済成長に向け、民間企業を支援するファンドの創設が目立つのも今回の景気対策の特長だ。新規ビジネスの創出や海外での企業の合併・買収(M&A)などを後押しするファンドに出資する。暮らしの安心では、電線の地中化などに予算を配分した。
[お知らせ1はじめ]
「国会傍聴取材支援基金」を設けました。他メディアにはない国会審議を中心とした政治の流れをこのブログで伝えていきます。質素倹約に努めていますが交通費など諸経費がかかります。
「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い
ご協力ください。どうぞよろしくお願いします。
[お知らせ1おわり]
[お知らせ2はじめ]
会員制ブログで今後の政治日程とそのポイントを解説しています。
今後の政治日程 by 下町の太陽
最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。取材資金にもなりますのでご協力下さい。
[お知らせ2おわり]
tags 政治日程 http://regimag.jp/b/sample/list/?blog=65