(13日午前11時半投稿で、12日付にバックデート)
[写真]自民党本部、2015年11月、筆者・宮崎信行撮影。
報道によると、平成29年2017年5月12日(金)、自民党本部内で、安倍晋三さんが、保岡興治さんに、憲法改正原案(改憲発議原案)を作成するよう指示しました。自民党ホームページによると、憲法改正推進本部は総裁・幹事長部局で、政務調査会とは別系統。
先週、2017年5月3日の憲法記念日に、安倍さんが読売新聞と日本会議で、突如「2020年施行で憲法9条第3項を新設」というメッセージを発信。報道によると、12日の同本部幹部会で、首相補佐官の柴山昌彦さんが「自公が先行して調整してほしい」との首相の意向を伝達。これを聞いた保岡さんが、高村正彦副総裁に「首相とアポがとれない」と話したところ、その場から、首相に電話。当日、党本部で都議選のビデオメッセージ撮影を予定していた安倍さんが、党本部内で保岡さんに会いました。また、当日夜には、下村博文幹事長代行がテレビ番組で「2018年通常国会発議」のスケジュール感を示唆しました。
衆議院憲法審査会は、民進党の蓮舫代表・野田佳彦幹事長の派閥「花斉会」の幹部、武正公一さんが意図的に審議を遅らせていることから、安倍首相らが業をにやして、2014年7月1日の解釈改憲「国の存立を全うし切れ目のない安保法制のための憲法解釈の再整理」の事前調整にあたった、自公協議会の高村正彦座長、北側一雄座長代行のコンビに活路を見出したものと思われます。
ただ、改憲には、衆参、各々の発議が必要。参議院憲法審査会は参議院自民党もあまり積極的でない姿勢をかもしだしています。参に限れば、自公だけでなく、維新と、数人の無所属議員の協力が本会議で必要になるので、自公協議のあと、維新と参自の賛同と、数人の参議院議員の切り崩しが必要となりそうです。
自民党内では「3分の2があるうちの発議」を求める声が半数を超えつつありますが、この場合は、解散が遅れることも考えられます。仮に、「3分の2にこだわったために追い込まれ解散となり政権を失う」という事例になると、日本の政治史では初めてのシチュエーションとなります。
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[画像]共謀罪法案の、自民党・公明党・維新の3党修正案を朗読する、維新議員、2017年5月12日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
参議院本会議では農業競争力強化支援法や、改正福島復興再生法が成立。衆議院では、本会議はなく、委員会を開催しました。
【衆議院法務委員会】
「共謀罪法案」(193閣法69号)の政府原案の質疑、7時間コース。
2日の委員会で質疑が中断した、自民党の赤沢亮正さんが何事もなかったかのように質問を始めましたが、「維新の提案は有益だ」。
民進党の山尾志桜里さんは、花見の際に、弁当とビールを持っている人と、地図と双眼鏡を持っている人をどのような手法で見分けるのか」と問いましたが、金田法相から答弁はなく、井野俊郎・法務大臣政務官は「警察官の職務質問などだ」と答えましたが、山尾さんらは不十分だとしました。
●自公維の修正案、民由の別案が審議入り。
この後、「自民党・公明党・維新の3党協議による修正案」が委員会に提出されました。続いて、民進党と自由党が衆議院に提出した「組織犯罪防止条約(パレルモ条約、TOC条約)の国内実施のための、共謀罪法案の別案」(193衆法17号)がこの委員会に付託され、趣旨説明されました。
修正案は、松浪健太さんの朗読によると、共謀罪法案の対象犯罪のうち、もともとの法律で「親告罪」となっているものについて、この法案の本則にも親告罪であることを明記すること。そして、2年前の通常国会(安保国会)で延々と議論した「改正刑事訴訟法など司法制度改革法」(平成28年54号)が定めた可視化について共謀罪では特に「可及的速やかに検討する」ことを付則に盛り込むこと。そして、先日の最高裁判決で違憲とされた、全測位システムGPSの捜査について検討するよう付則に盛り込むーーという内容のようです。3年連続で、連休明け国会の定番となっている「維新修正」ですが、いつも通り、噴飯物のお粗末さです。
この後、「別案」が、民進党の逢坂誠二さんから趣旨説明されました。
[画像]別案を説明する、逢坂誠二さん、2017年5月12日、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
別案は、TOC条約の早期発効が必要だとして、人身売買に関する規定を法律に落とし込む内容になっているようです。
自公維修正については、これまでも、農協法なら「法律成立後に、政府と農協は、集会を開くなどして法律の周知につとめる」などという本筋から遠く、法律の文章としても見かけない、訳の分からない修正が続いており、それでいて、公明党幹部などはどや顔で「野党の修正も得た」と説明するお粗末な国会が、3年連続で、5月に繰り広げられています。なぜ、維新の国会対策委員が、連休明けに態度を豹変させるのか、大阪府知事・大阪市長らを応援する支持者のみなさんは分かっているんでしょうか。とくに今回の可視化の部分は、改正刑事訴訟法の円滑な施行に向けて各地検・各県警を戸惑わせることになるし、最高裁が違憲行政だと断定し、県警の捜査令状の申請が止まっているGPSの問題は、本来、国会が調整すべき案件ではないでしょうか。国政府が検討するにしても、衆議院議員発議の修正で、政府に検討させると法律に書き込むことは、やるべきでない修正です。この「3党修正だから」との説明を繰り返す、公明党幹部などを信用してはいけません。
改めて、法案の対象事件を読んでみましたが、例えば、高校野球部の夏合宿や、大学サークルの男性会員の打ち合わせなどは「強制わいせつ罪の共謀罪」で全員逮捕されそうな話です。この場合、私が知っているだけでも、超有名議員の長男だってしょっ引かれていたかもしれません。あるいは、有印公文書偽造、有印私文書偽造が共謀段階で検挙されるのなら、士業の人はどうするのか。失礼ながら、誰か一人立件されて、業界が消極的になれば、士業の存在価値そのものがなくなってしまうのではないでしょうか。
来週、採決をめぐる攻防になりますので、緊張感が高まりそうです。
【参議院本会議 平成29年2017年5月12日(金)】
●改正福島復興再生特措法が成立。
「改正福島復興再生特別措置法」(193閣法19号)は投票総数236、賛成215、反対21の賛成多数で可決し、成立しました。桜井充さんは委員長の審査報告で「18項目の付帯決議がついた」と語りました。
「次の統一地方選で選挙する、阪神・淡路大震災被災自治体の首長・議員の特例任期2か月放棄法」(193衆法14号)は、投票総数238、賛成224、反対14の賛成多数で可決し、成立しました。
史上初めて東北太平洋側から日本に上陸した台風での、岩手県内陸の岩泉町たまゆら園事故を受けた、「改正水防法」(193閣法25号)は投票総数238、賛成238、反対0の全会一致で可決し、成立しました。施設・自治体に対してかなりていねいな対策が盛り込まれています。
●農業競争力強化支援法が成立。
「農業競争力強化支援法」(193閣法21号)は投票総数238、賛成166、反対72の賛成多数で可決し成立しました。渡辺猛之委員長は「低廉な農業資材の安定な供給が可能になる」と報告しました。討論では民進党、共産党が登壇し、反対を呼びかけました。自民党の小泉進次郎さんが党本部内のとりまとめで実現した農業競争力強化プログラムの法制化で、来春には、JAが販売する農業資材の価格が発表され、民間が参入します。民進党はかなり反対していましたが、私としては、小泉さんらの路線を強く支持します。
「改正土壌汚染対策法」(193閣法43号)は投票総数237、賛成221、反対16の賛成多数で可決し、成立しました。
●衆議院本会議はありませんでした。定例日で上がり法案が1つありますが、開催されませんでした。
【衆議院外務委員会】
●日印原子力協定は、金曜抗議活動の前に可決(承認)。
「日本インド(日印)原子力協定の承認案」(193条約2号)。質疑の後、採決され、民共由反対、自公賛成多数で承認されました。きょうは金曜抗議活動ですが、午後2時16分前後に承認すべし、と決まりました。
この後、2国間条約4本が審議入り。今国会提出の条約承認案がすべて衆委の趣旨説明を終えました。
「日本ケニア投資協定の承認案」(193条約11号)
「日本イスラエル投資協定の承認案」(193条約12号)
「日本スロバキア社会保障協定の承認案」(193条約13号)
「日本チェコ社会保障協定の承認案」(193条約14号)。
の2か国間条約4本で、次回から審議することになりました。
【衆議院国土交通委員会】
●通訳案内士が事実上廃止される方向の法案が可決、政府主導での国家資格整理の時代が到来の予感。
「通訳案内士法と、旅行業法の一括改正法案」(193閣法59号)。
通訳案内士の緩和、というよりも、廃止の方向性について、インターネット上で反対署名活動がなされているようです。このところ、議員立法でどんどん国家資格が増設されましたが、国家資格の廃止の方向性の法案というのは新しい流れのように感じます。旅行業法の改正案は、ランオペ(ランドオペレーター)を登録制にする条項。
けっきょく、きょう、採決されました。まず、他の法律の成立にもとづく技術的な修正案を、自公民維が提出。討論では、共産党の清水忠史さんが「通訳案内士は資格保持者の3割しか就労しておらず、その収入の平均は年200万円だ」としながらも「無資格の違法な案内士を法制化することで、外国人客へのぼったくりなどが増える」と反対。ただ、「ランオペを登録制にする旅行業法改正条項には賛成だ」としました。けっきょく、共反対、自公民維の賛成多数で「修正議決すべし」と決まりました。
この後、次の法案の趣旨説明がされました。
「港湾法改正案」(193閣法60号)。
石井国土交通大臣が説明しました。この法案について、公明党が、大臣の説明通りに横浜港に大型クルーズ船の視察に行っています。ただ、私はこの法案のねらいは、非常災害時に限っての国による港湾管理の代行を、その次以降の改正で、平時から国が港湾管理できるようにすることではないかとみています。私は従来から主張している通り、港湾管理者は国に移すべきだと考えており、けっこう、私も持論を変えることがあるんですが、これは、元・横浜港経済記者の観点からも、国ががんばってほしいと思うところです。法案審査は、来週17日(水)午前9時から。
【衆議院環境委員会】
「廃棄物処理法改正案」(193閣法62号)、「バーゼル条約にもとづく特定有害廃棄物の輸出入規制法を緩和する改正案」(193閣法63号)の質疑。来週16日(火)に再開。
【衆議院厚生労働委員会】
まず「医療法の包括改正法案」(193閣法57号)について、塩崎厚労相から趣旨説明を受けました。
この後、一般質疑。散会後に理事会が開かれ、今後の日程を協議。水道法改正案の審議入りは遅れています。
【衆議院経済産業委員会】
きのうの本会議で質疑された、「中小企業信用保証法改正案」(193閣法31号)が、趣旨説明されました。次回は17日(水)で参考人質疑をすることになりました。
【官報 平成29年2017年5月12日(金)】
条約が1本、法律が3本公布されました。
「WTOガット新関税譲許表(1994年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第38表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書)」は「平成29年5月12日条約8号」。国会では、193条約4号として審議され、3週間前の先月21日(金)の参議院本会議で全会一致で両院承認。スピード公布となりました。発効したんだと思います。新型半導体、半導体製造装置、医療機器などの関税が下がるようです。
法律が3本公布されました。
●改正都市公園法が公布さる。
「都市緑地法及び都市公園法を改正する法律(都市緑地法等の一部を改正する法律)」は平成29年5月12日法律26号。施行は、公布日~2か月以内の政令で定める日など順次施行。都市公園内での、カフェなども指定管理者にできます。都市緑地法改正条項は、生産緑地の規制などで、おそらく税制改正に今後からんでくると思います。
「電波法及び電気通信事業法の一部を改正する法律」は平成29年5月12日法律27号。国会では193閣法27号として審議されました。3年に1回の電波利用料の改定法律。公布から9日以内の政令で定める日に施行。
●医療ビッグデータ法が公布さる。
「医療ビッグデータ法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)」は平成29年5月12日法律28号。施行はきょうから起算して1年を超えない範囲内の政令で定める日。政府機関のビッグデータを匿名加工情報として売ることができる法律は、ほぼ毎国会成立していますが、今度は医療機関にも広げる改正。なお、4月12日(水)の衆議院内閣委員会の自公民合意のプライバシー配慮規定などを入れた修正案が成立しました。政府原案とは一部異なった法律として公布されましたから、関係者はご確認ください。国会では、193閣法53号として審議されました。
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