ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

[きょうの国会]民進党は参で農業競争力強化法案、衆で農村地域サービス業導入促進法案にともに反対、マイナンバー手直し法案が参で審議入り

2017年05月11日 17時34分07秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 議長(議運)が法案を審議する委員会を決めることを、付託する、おろす、と言いますが、参議院は独自性を示すために、意図的に衆議院と違う委員会におろすことがあります。過去の例では、たとえば、マイナンバー関連4法は、衆では内閣委でしたが、参では3本を内閣委におろし、地方公共団体情報システム機構法案だけ総務委におろしました。今国会では、マイナンバーカード発行遅れという不祥事による、マイナンバー法の初めての手直しの法案は、衆参とも総務委で審議されることになりました。

【衆議院本会議 平成29年2017年5月11日(木)】

 連休前最終日に委員会で可決しながら、おとといの本会議で採決が延期された3法案が可決しました。14日間かかって参に送られました。

 三菱自動車工業の不祥事を受けた、「道路運送車両法改正案」(193閣法42号)は全会一致で可決し、参に送られました。

 フリー(freee)などのクラウド会計サービスに対応した、「銀行法改正案」(193閣法38号)も全会一致で可決し、参送付。

 「学校教育法を改正して、専門職大学・専門職短期大学を新設する法案」(193閣法56号)は共社反対、自公民維賛成多数で可決し、参に送られました。きょう、参議院文教科学委員会が開かれなかったのは、この法案の処理が衆議院で遅れたからだと思われます。

 この後は、きのう、委員会を議了した法案です。

 「地方公務員法を改正する法律」(193閣法51号参先議)は共反対、自公民維賛成多数で可決。参議院先議ですので、これで成立しました。自治体の非常勤職員を会計年度任用職員と法的に位置づけ、期末手当を出せるようにする法律。私には、改革が骨抜きにされた気がします。

 「企業立地促進法改正案」(193閣法30号)は共反対、自公民など賛成多数で可決し、参送付。

 きょう参送付された4法案はすべて当初会期内に成立するだろうと思います。

 この後、趣旨説明と代表質問がありました。

 「中小企業に向けた、各県信用保証協会の業務拡大法案」(193閣法31号)が世耕経産相から趣旨説明され、民進党のみ代表質問を行いました。この法案は、かなり各県信用保証協会の業務が拡大しますので、注目されると思います。

●農協改革法案は衆参とも、民共が反対

【参議院農林水産委員会】

 「農業競争力強化支援法案」(193閣法21号)が民共反対、自公維賛成多数で可決しました。あす成立しますから、来年春には、政府として調査した、農協の肥料など資材の価格が発表されることになります。

【衆議院農林水産委員会】

 「農工法、農村地域工業等導入促進法改正案」(193閣法29号)の質疑が1日間6時間コースで行われました。

 前の衆院選で小選挙区で当選した自民党1期生は、数人しかいませんが、2014年初当選組の代表格と言える、新佐賀2区選出の古川康さんが質問しました。古川さんは県知事時代の農工法活用事例や、議員としての自民党内の事前審査への関与も披露しながら、質疑しました。この新佐賀2区は、民進党では大串博志さんが、前回、民進党の岡田克也代表代行の異例のテコ入れがあり、議席を維持していますが、なかなか、新佐賀2区は、今後も自民党の優勢は避けられない気がします。

 野党からは「安易な農地転用が増えるのではないか」との指摘が出ました。

 民進党の小山展弘さんは「農家が農業を止めたら、普通はそこから移り住む」と話していて、なかなか、私とは前提が違う議論だなと感じました。

 採決では、民共反対、自公など賛成多数で可決すべきもの、と決まりました。

●地方自治法改正案や、マイナンバーの総務省所管分の手直し法案が審議入り。

【衆議院総務委員会】

 本会議で成立した法案とタイトルが似ていますが、「地方自治法改正案」(193閣法55号)が高市総務相から趣旨説明されました。今次改正は、監査委員制度の手直しや、首長向け賠償請求の歯止めなど、お偉いさん向けの小幅な改正にとどまっています。

【参議院総務委員会】

 上述しましたが、マイナンバー法の一部手直しとなる、「地方公共団体情報システム機構法改正案」(193閣法45号)が趣旨説明されました。

 これに先立ち、一般質疑がありました。私は人の容姿には触れないことにしていますが、ゆうちょ銀行の長門頭取の記者会見のようすをつたえる新聞記事などで、俳優の長門裕之さんにそっくりだと思っており、インターネットで検索すると同じような感想を持った人が多かったようですが、きょうの質疑を見ると、似ていませんでした。長門頭取は「日本郵政の利益の8割はゆうちょ銀行。だが、融資できない銀行なので、その7割は投資。マーケットに敏感な経営をめざしたい」としました。国政府側から見て重要な株価については「きょうの株価は上場時より1円低いです」と答弁するなど、金融市場に敏感な姿勢を醸し出していて、期待がもてそうな気がしました。

●参議院財政金融委員会は開かれず 金商法改正案を審議する財金委は、3定例日連続で開かれていません。他の国会の空転、予算委開催、大臣の日程によるもので、来週火曜日は再開する予定。

【参議院内閣委員会】

 19日にも提出される運びの退位特例法案が審議される委員会で、きょうは一般質疑がありました。丸川珠代五輪相がさいきんでは珍しく答弁に立つ場面がありました。

【参議院法務委員会】

 「民法債権編(債権法)改正案」(189閣法63号及び64号)の参考人質疑。2部制で、各々、3人ずつ、合計6人の参考人が意見を述べました。内訳は、「弁護士兼教授」が1名、弁護士が2名、教授が2名、司法書士が1名でした。きょうはここまでで、次回に持ち越しました。

【参議院外交防衛委員会】

 2国間租税協定5本が審議入りしました。衆側と同じ議題の設定のしかたで、参側も審議する格好になりました。「日本スロバキア租税協定の承認案」(193条約15号)「ベルギー」(16号)「ラトビア」(17号)「オーストリア」(18号)、そして「日本バハマ租税協定の改定議定書の承認案」(189条約19号)です。質疑は次回。

●参厚労委は、精神保健福祉法改正案の採決がまた持ち越し。

【参議院厚生労働委員会】

 「精神保健福祉法改正案」(193閣法34号参先議)の質疑が一巡し、採決は次回以降に持ち越しました。この委員会の委員長は、丸川珠代さん、三原じゅん子さん、羽生田俊さんと続いてきていますが、野党の要求通り速記を止め、質疑時間を確保する姿勢を、参議院自民党が徹底しているようです。

【参議院経済産業委員会】

 「外為法及び外国貿易法改正案」(193閣法41号)が趣旨説明されました。質疑は次回。

【参議院国土交通委員会】

 「水防法改正案」(193閣法25号)が全会一致で可決しました。あす成立。

【参議院環境委員会】

 「土壌汚染対策法改正案」(193閣法43号)が共反対、自公民など賛成多数で可決しました。あす成立のはこび。

●参議院文教科学委員会は開かれませんでした。上述の通り、法案が衆から回ってきていないからだと思われます。

●衆議院憲法審査会は開かれませんでした。憲法記念日の朝の読売新聞と同日の集会で、安倍首相が「2020年までに憲法9条改正」と唐突に情報発信したことのあおりのようです。

このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2017年、宮崎信行。

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