共謀罪法案で、委員外質問をしていた議員が「もういいでしょう」と採決を促した異例の展開で、「委員外質問」とはなにか、関心が集まっています。
国会法第46条は、委員会の人数は、各党の議員数の比率に応じて、割り当て、各党が決めることになっています。このため、現在、すべての委員会に委員を出せるのは、衆参ともに、自民党、民進党、公明党、共産党、日本維新の会の5つだけになっています。
衆議院規則第46条や、参議院規則第44条は、「委員でない議員」から意見を聞いたり、発言を許したりできるとしてます。委員長が理事会に諮って決めます。
きょうは、衆議院法務委員の割り当てが「1」の維新が、修正案提出者が答弁席にいるため、もう1の議員が法務委で発言を許されたことになります。この委員会は、自由党と社民党がいないので、通例、質疑順は、衆議院の他の委員会と同様に、自民党(与党第1会派)、公明党(与党第2会派)、民進党(野党第1会派)、共産党(野党第2会派)、維新(野党第3会派)。そのため、法案に賛成している維新の順で質疑が終わり、与党が採決を求める動議が出せることになります。
委員外質問は比較的良くあることで、とくに少数会派を重視する、参議院ではよくあります。
一つは、元自民党厚生労働大臣で、少数会派新党改革の代表だった舛添要一参議院議員に、新型インフルエンザ対策法改正案で、内閣委員会が意見を求めた例(2012年4月17日)。議事録では、舛添さんは「○委員以外の議員(舛添要一君) まず、この委員会に出席して質問をこのようにさせていただく機会をいただきましたこと、委員長始め委員会の皆さん方に心から感謝申し上げます。ありがとうございます。(中略)私が厚生労働大臣のときにこの新型インフルエンザが起こりました(後略)」と語りました。
消費税増税法案をめぐって、小沢一郎さんらが離党してつくった「生活の党」に属していた主濱了参議院議員は少なくとも7回以上、委員外質問をしています。花形の予算委員会(2015年7月15日)では、議事録によると、「○委員以外の議員(主濱了君) 生活の党の主濱了であります。まずもって、山崎委員長を始め各派の皆様には、委員外発言をお認めいただきまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。早速質問に入ります」と語りました。少なくとも7回以上あった主浜さんの委員外質問のうち1回、私は委員会室で見たことがありますが、けんか別れした民進党議員である理事に深々とお礼のお辞儀をしていたのを見ました。その後、2016年7月の参院選では、主濱さんの後継者である、生活の党系列の木戸口英司さんが、民進党などの支持も得て、当選しました。委員外質問が野党共闘につながったケースです。
委員外質問は、与野党理事の信頼関係のもと、委員長が決めていることであり、強行採決のために、委員外質問が使われたのは初めてであることは確実で、今後の与野党の信頼関係に影響を与えることは必死と言えそうです。
参考文献「新・国会事典」(有斐閣)、「衆議院委員会先例集」(衆議院)。
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残り会期は4週間。今国会最大の対決法案となった「共謀罪法案」(193閣法64号)が強行採決され、維新のアシストで「自公維修正」となりました。2年前の改定労働者派遣法から続く手法ですが、労働者派遣法は民共の「正社員ゼロ法」との批判通り、今は、大企業正社員も給与は上がらず、という状況。今回は、委員外発言を許された、維新の丸山穂高さんが「もういいでしょう」と採決を急ぐよう絶叫するシーンがありました。これは懲罰案件になるかもしれません。昔から、こういう連中は一定数います。維新は「大阪都構想」でテレビCMを打ち過ぎて一時5億円相当の買掛金で金欠になったところで、安倍官邸の援助があったとみられます。維新には、「いくら貰ったんだ?」と聞きたいところです。
【官報 平成29年2017年5月19日(金)】
おさらいもかねて、既に決まったことから先に振り返ります。
1週間前、5月12日(金)の参議院本会議で成立した法律5本が公布されました。
平成29年5月19日法律31号として公布された「改正水防法」は議案番号は193閣法25号として審議され、全会一致でした。史上初めて東北太平洋側から上陸した昨夏の台風での岩泉町「たまゆら園」での水死事故を受けた改正。3か月以内に施行。
法律32号の「改正福島復興再生特別措置法」は直ちに施行されました。議案番号は193閣法19号で、復興大臣の交代で参・委員会採決の直前で処理が遅れました。共産党と希望の会が反対し、自民党、民進党、公明党などが賛成しました。
法律33号の「改正土壌汚染対策法」は193閣法43号で共産党が反対しました。5年以上ぶりの改正法で、条項により、きょう、1年後、2年以内にの間に、政令などで順次施行。
法律34号の「平成31年4月に選挙を迎える阪神・淡路大震災被災自治体の首長・議員の特例任期2か月間を放棄させる法律」は議員立法で、193衆法14号でした。4月20日の衆・特別委で審議入りし、共反対、自公民維賛成で成立しました。
法律35号は「農業競争力強化支援法」で193閣法35号。農業競争力強化プログラムの法律化で、民進党と共産党が強硬に反対しました。3か月以内に施行。
【参議院本会議】
「改正道路運送車両法」(193閣法42号)は投票総数236、賛成236、反対0の全会一致で可決し、成立しました。
「改正土地改良法」(193閣法28号)は、投票総数237、賛成224、反対19で成立しました。予算関連法のため、来年度の農水省の概算要求などに反映されるでしょう。
以上2点で、10時6分頃散会。
午後12時半から、参議院議院食堂で、参議院創立70周年記念祝賀会が開かれました。あす、あさっては、参議院特別参観です。なお、大型連休中の衆議院特別参観は見込みの半数である、およそ1万人(2日間)にとどまりました。
【衆議院法務委員会】
「共謀罪法案」(193閣法64号)の政府原案と、自公維修正案、「民進党別案」(193衆法17号)が審議されました。
野党も出席して、委員長職権の4時間コース。ちなみに、重要広範議案ながら首相入り質疑はありませんでしたが、野党の抵抗のあおりであり、そもそも、国対紳士協定に過ぎませんから、問題ないでしょう。
この委員会の維新への割り当ては1名。その1名が修正案提出者として答弁席に座っているため、委員外質問が認められました。ただ、丸山穂高さんは委員外質問に立つ経緯を説明し、お礼しておきながら、途中から「もういいでしょう!」と採決を促す絶叫。時間が終わり、いったん、静穏になりましたが、自民党の土屋正忠理事が打ち切り動議を提出。この後、委員長のマイクがとられたようですが、自公維修正案が、民共反対、自公維賛成多数で可決したもようです。別案(193衆法17号)はおそらく採決されていないと思いますが、後日確認してい見ます。附帯決議が採択されました。
【衆議院環境委員会】
「廃棄物処理法改正案」(193閣法62号)が全会一致で可決しました。
「バーゼル法、特定有害廃棄物輸出入規制法改正案」(193閣法63号)も全会一致で可決しました。
そして、「環境省福島地方環境事務所の設置の承認案」(193承認2号)は、共反対、自公民など賛成多数で承認すべし、と決まりました。
共産党は反対討論で「福島復興基本方針にもとづき、環境省本省に環境再生・資源循環局を設け、出先を福島地方環境事務所に格上げする。ただし、東電の汚染者負担原則を薄める内容であり、賠償の意味合いが薄れて、公共事業のようになってくると、費用対効果の考え方がでてきて、全エリアの除染が進まなくなるのではないか」との懸念を示しました。
【衆議院経済産業委員会】
「中小企業信用保証協会法改正案」(193閣法31号)が、共反対、自公民維の賛成多数で可決しました。
【衆議院厚生労働委員会】
「医療法など包括改正法案」(193閣法57号)の質疑をし、次回以降に採決を持ち越しました。
●国会審議に対する初のフラップか。
なお、今次改正法案の「宣伝の規制」条項について、今週の委員会での質疑を受けて、翌日、名指しされた美容クリニック院長が1000万円の損害賠償請求を当該議員に対して起こす、とSNSで発表しました。これは、「フラップ訴訟」と言って、資金力に勝る企業が個人を相手に高額の訴訟を起こすことで、相手を委縮させる「平手打ち(英語の隠語)」訴訟であり、国会審議に対して、衆議院委員会採決前のフラップは初めてでしょう。今後の動向を注視したいところです。
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Miyazaki Nobuyuki
[画像]2017年5月19日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
衆議院法務委員会は19日、午後1時10分頃、「共謀罪法案」(193閣法64号)を強行採決しました。政府原案ではなく、形だけの自公維修正案を議決しました。
この採決では、委員が1人だけの維新が、民進党らの配慮で、修正案提出者が答弁席にいる状態で、委員外質疑をあしらえました。しかし、その特別配慮の委員外の丸山穂高議員が「もういいでしょう」と採決を促す、暴言。この後、自民党の土屋正忠理事が打ち切り動議を発議しましたが、これは、インターネット中継でみたかぎり、動議の読み原稿を、民進党の階猛さんにとられる間抜けぶりを発揮したようです。土屋さんは口頭で動議を出したようで、自公維の賛成多数で可決。さらに、このあとの採決では、修正案が可決し、政府原案も可決。「自公維の賛成多数で修正議決すべし」との答えになったようです。
世論調査では、法案の中身を4割が理解しておらず、金田法相も与党議員も理解しておらず、刑事法があいまいなまま広がってしまったことは残念です。47県警の組織犯罪対策のおまわりさんは、「特別危険指定暴力団」「半グレ集団」など勝手な組織を規定して、同じような風貌で猿芝居を繰り返す仕事であり、おまわりさんも活用に困る法案です。仮に半世紀前に共謀罪があれば、北朝鮮工作員組織による拉致被害を防げたのでしょうか。テロ等準備罪の美名の下に、忖度議員たちの挽歌が繰り広げられました。
[画像]委員外質疑なのに、「審議は尽くされた」「採決を」と主張する丸山穂高さん、2017年5月19日の衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
[画像]質疑の打ち切り動議を読み上げる自民党の土屋正忠理事(起立している人物のうち一番左側)と、その動議の読み上げ原稿を、あっさりとうばう、民進党の井出庸生理事(左から3人目の背中の人物)、2017年5月19日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
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