ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

[きょうの国会]共謀罪法案が参・委でも審議入り、衆・本では3度延期の特区法改正案が可決

2017年05月30日 20時30分24秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 残り3週間を切った、第193回通常国会ですが、昨夏の自民党衆参単独過半数で政権ペースで進んでいます。共謀罪法案も計算上は当初会期内に成立の見通し。一方、厚労省提出の水道法改正案は審議が間に合わない可能性が高まりました。

【参議院法務委員会 平成29年2017年5月30日(火)】

 15分ほどずれ込んで開会。

 「共謀罪法案」(193閣法64号衆修正)が審議入り。金田法相が政府案、維新の松浪健太衆議院議員が修正部分を説明しました。いきなり総理入り質疑がありました。その後、大臣への質疑。

 開会にあたり、秋野公造委員長(公明党)が政府参考人として、この法案審議中ずっと、林真琴・法務省刑事局長を呼びことをはかり、自民党と公明党の賛成多数で議決しました。この委員会の委員長は、半世紀、公明党議員が独占しており、創価学会への捜査に関する情報を集めることが狙いとみられます。我が国の司法は、起訴便宜主義と公訴独占主義がG7で唯一とられています。すなわち、不起訴なら一切罪は問われません。でも、起訴猶予と、起訴されて地裁で無罪ながら、どちらがいいか分かりません。閉鎖的な国で、東京一括採用の検察官(国家公務員)は、取り調べ段階から、所轄警察署で、警察官(47県警ごとに別々に採用された地方公務員)より威張っていることも多いようです。私が東京地裁を傍聴した限りでも、検察官というのは、まるっきり世間知らずだし、そのことに気づいていません。我が国での共謀罪の導入は極めて危険であり、また、創価学会がそれを先導するというのはあり得ないことです。

 総理入り質疑では、民進党の小川敏夫会長がまたまたトップバッター。シールズの重点支援で当選した小川さんですが、安倍晋三首相(自民党総裁)から、野党1期生時代に、学校法人加計学園グループで監事をつとめ、年14万円の報酬を受け取っていたことを明らかにしました。こういう不公正に感情的に激昂している人は、資産格差社会の頂点にある人の方が多いような気がします。結果の平等より、機会の平等こそ、未来への投資です。

【衆議院本会議】

 5月16日(火)に委員会議了しながら、本会議で3度延期動議が出た「特区法改正案」(193閣法54号)が民共反対、自公賛成多数で可決し、参に送られました。会期内成立の見通し。討論では、民進党の宮崎岳志さん、共産党の田村貴昭さんが、ともに前川喜平さんの招致を求めながら、反対しました。

 「文化芸術基本法改正案」(193衆法18号)が全会一致で可決し、参送付。施行日の規定は公布日。議員連盟のホームページはこちらです。

 「北朝鮮経済制裁のための、特定船舶入港禁止措置の承認案」(192承認1号及び193承認3号)は全会一致で承認し、参へ

 「改正化審法、化学物質の審査及び製造等の規制法を改正する法律」(193閣法52号参先議)は、全会一致で可決し、成立しました。施行日は、総量規制が3年以内、経産省・厚労省の所管の交通整理規定は1年以内。

【衆議院厚生労働委員会】

 「児童福祉法改正案」(193閣法48号)の参考人質疑がありました。次回は未定のまま、散会し、この後、理事会が開かれたようです。水道法改正案(193閣法49号)が今国会で成立しない公算が高まっています。

【衆議院国土交通委員会】

 意外と関心が薄いようですが、「民泊新法、住宅宿泊事業法案」(193閣法61号)の審議がありました。まず、参考人質疑では、各々の立場は別として、次のような意見が出ました。(1)民泊は新しい分野だが、いずれに融合して、一つの宿泊事業になっていくだろう(2)京都下鴨神社などに富裕層向けの分譲マンションが民泊向けに建っているが、シェアリングエコノミーの概念から反対だ(3)民泊新法は、旅館業法改正案(193閣法50号=厚労委ではまだ審議入りせず=)とセットにして成立しないと意味がない(4)民泊はこれまで、机の下の話が多かったが、新法で机の上に乗せることが必要ーーとの声がありました。参考人質疑の後、与党だけの質疑があり、散会。次回はあす午前9時から。

【参議院総務委員会】

 地制調答申をうけた「地方自治法改正案」(193閣法55号)。午前中は首長らから参考人質疑。午後は法案審査。慎重審査ということで、次回も審議することになりました。

【参議院外交防衛委員会】

 まず、岸田文雄外相から「日印原子力協定の承認案」(193条約3号)の趣旨説明を聞きました。政府側はこれだけでさっそく退室し、教授らの参考人質疑があり、散会しました。

【参議院厚生労働委員会】

 一般質疑の前に、厚労相が「臓器移植法の付帯決議にもとづく報告」をしました。この後、一般質疑で、自民党の三原じゅん子さんに対して、「受動喫煙禁止法案の提出は会期末ぎりぎりまで(自民党・政府内の調整を)がんばりたい」との答弁がありました。

 この後、病院ホームページの誇大表現などを規制する、「医療法等包括改正法案」(193閣法57号)が趣旨説明されました。散会しました。

 これに伴い、先に衆議院から受け取った「厚労省設置法を改正して医務技監を設ける法案」(193閣法16号)の審議順を飛び越しました。上述の秋野公明党議員は、医学部准教授→厚労省医官→医学部教授→参議院議員という、いわば王道ルートを通っています。「医官」という課長級ながらも、医学部教授の箔付け出向ポストの頂点として、次官級の「医務技監」を設ける法案ですが、省内でも5人位しか関心ないでしょうし、成否は確定的に言えない状況となりました。

【参議院経済産業委員会】

 一般質疑の後、「信用保証法改正案」(193閣法31号)が趣旨説明されました。ところで、世耕弘成さんがクールビズでノーネクタイなのに、三つ揃えのスーツを着ていて、これはいったい何を意味するのか、なぜ自分を理知的に見せたいのか、疑問が残りました。なんかスキャンダルでも出て、失脚させたいものですが、なかなか出てきません。

【参議院国土交通委員会】

 まず一般質疑で、森友学園の土地(もともとは、国交省航空局所有)の問題が出ました。これとは別に、生活の党の青木愛さんは地元の千葉県内の圏央道などを一般質疑の場で聞きました。青木愛さんの今の議席は全国比例ですが、週刊誌などの影響もあってか、青木さんを悪く言う人が多いのですが、衆でも参でも比例のギリギリで勝てる青木さんのオーソドックスな手法はお手本にしてほしい、と考えます。

 この後、「港湾法改正案」(193閣法60号)が趣旨説明され、散会しました。

【参議院環境委員会】

 「廃棄物処理法改正案」(193閣法62号)と「バーゼル法、特定有害廃棄物輸出入規制法改正案」(193閣法63号)と「環境省福島地方環境事務所の設置の承認案」(193承認2号)が審議入りしました。委員会の審査方法は、議長(議運)から付託された後、順番は委員長が決めることになっています。今国会ではほとんど、衆側と同じ審議順になっています。参考人質疑の手続きをして、質疑は後日にして、散会しました。

【衆議院総務委員会】

 まず、一般質疑がありました。

 この後、「電子委任状促進法案」(193閣法46号)が審議入りしました。次回は6月1日(木)9時から。総務省提出法案は、すべて当初会期内に成立する見通し。

【衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会】

 野党期の公明党の要望を、当時の与党議運理事、松野頼久さんが受け止めて設置された委員会です。松野委員長が、6月6日(火)午前10時からの参考人質疑の手続きをとり、散会しました。

【衆議院議院運営委員会】

 佐藤勉委員長、高木毅与党側理事、泉健太、山尾志桜里、塩川鉄也理事らが本会議の段取りを向大野新治事務総長から説明を受けながら、確認したのでしょう。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宮崎信行が週刊金曜日、皇国ニッポンに載ってます!

2017年05月30日 15時49分25秒 | その他

 週刊金曜日の臨時増刊号の、2017年5月30日号に、特別編集皇国ニッポンに宮崎信行が書いた記事が載ってます。3月3日号の再録です。定価700円です!

  官邸発の不公正を許すな!

   原稿執筆依頼、お待ちしています!

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◎安倍晋三さんは学校法人加計学園の監査の役員(監事?)として、年報酬14万円受領 野党1期生の1993年頃か

2017年05月30日 10時53分28秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 安倍晋三首相(自民党総裁)は、初当選直後の、野党1期生時代だった、1993年から1994年ごろに、学校法人加計学園の監査の役員を務めて、年間で14万円の報酬を受けていたと明言しました。

 平成29年2017年5月30日(火)の参議院法務委員会で、小川敏夫・参議院民進党会長の質問への答弁。

 現行私立学校法の第35条には、「学校法人には、役員として、理事5人以上及び監事2人以上を置かなければならない」としており、総理の言う「監査の役員」は、「監事」のことだと思われます。同法38条第5項は、理事又は監事は、1人以上は、学校法人の社員以外から採用しなければならない、と定めています。

このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

公明党が死んだ朝 共謀罪法案で、林真琴刑事局長の政府参考人としての常時出席を強行採決の暴挙

2017年05月30日 10時23分39秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

[画像]法務省刑事局長の、林真琴前仙台地検検事正の常時出席を強行採決する、秋野公造参議院法務委員長(公明党)=中央、と、詰め寄る、民進党の真山勇一理事(委員長向かって右)ら、2017年5月30日、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 創価学会への刑事捜査に関する情報を得る目論見で、公明党が委員長ポストを半世紀以上持ち続けている、参議院法務委員会の秋野公造委員長(公明党=比例全国・九州重点)は、平成29年2017年5月30日(火)、委員会を開会。

 理事会が延びたようで、定刻から15分遅れた、午前10時15分前後に会議を始めました。

 共謀罪法案(193閣法64号)の趣旨説明に先立ち、秋野委員長は、政府参考人として法務省刑事局長の林真琴・前仙台地方検察庁検事正の常時出席を図りました。多数決となり、自民党と公明党の賛成多数で強行採決しました。

 これには、民進党の真山勇一筆頭理事が「理事会で反対した」、小川敏夫委員(参議院民進党会長)が「今、何を諮ったんですか、聴こえないかった」「質問の準備をしていた(ので分からなかった)」と委員長席に詰め寄りました。ここで、秋野委員長は審議を止め、「今諮ったのは」として、読み原稿を再度読み直す、異例の措置を取りました。

 与党の国会対策に言いなりになる、公明党が死んだ朝と言えるでしょう。

 この後、自民党の金田法相、衆議院修正案提出者の維新の松浪健太衆議院議員から趣旨説明。


このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解雇の金銭解決を「労働契約解消金(仮称)」と定義づけるも、法改正には否定的 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」報告書(案)

2017年05月30日 09時48分21秒 | 第194回臨時国会(国難突破冒頭解散2017年9月)

 厚生労働省労働基準局内に設けられた「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」

 は、2017年5月30日(月)の会議で最終とりまとめ案を提示し、次回の会合で最終決定することにしました。

 「労働契約解消金(仮称)」について、定義づけが多くのページを割いてなされました。

 この労働契約解消金という言葉は、私は聞いたことが無く、定番である「菅野和夫著 労働法」にも出てこないようです。解雇の金銭解決を、労働契約解消金と呼ぶことにしたようです。ただ、とりまとめ案を読むと、裁判で、解雇の無効などの地位確認とあわせて実現すべきだとの声が労使とも多い「解雇の事後の金銭解決」と、安倍自民党官邸で、企業経営者が提唱した「解雇の事前の金銭解決」が混在しているように感じます。とりまとめは、この「労働契約解消金」について、その必要性は認めながらも、一定の計算基準を設けるのは難しい、改正民法債権編(来月公布)の施行状況を見極めるべきだとの声が出ており、法改正には慎重、先送りの方向性となりそうです。

 上記とりまとめ案から、該当部分を以下に引用します。長文になります。

透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会の、最終報告案から抜粋引用はじめ]

(イ)労働者が金銭の支払を請求する権利

a 権利の発生要件
労働者が金銭(それが支払われることによって労働契約が終了する効果を伴
うもの。以下「労働契約解消金」(仮称)という。)の支払を請求できる権利(以
下「金銭救済請求権」という。)の発生要件については、後述の権利の法的性
質にもよるが、例えば、①解雇がなされていること、②当該解雇が客観的合理
的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと(解雇権濫用法理)
(※)、③労働者から使用者に対し、労働契約解消金の支払を求めていること
といったことが考えられる。
※ 労働契約法第 16 条の要件に加えて、禁止解雇を対象とする場合については、例えば
「労働基準法等の法律によって禁止されている解雇と認められること」という要件も含
むよう設定することが考えられる。
b 権利の法的性質
(a)金銭救済請求権の法的性質については、労働契約解消金の支払請求後の取
り下げができない仕組みと位置付けること(形成権的構成)が考えられるほ
か、取り下げができる仕組みと位置付けること(請求権的構成)も考えられ
る。
※ 一度提起した訴えを取りやめることを民事訴訟上「取り下げ」というが、ここでは、
労働者が労働契約解消金を請求した後、何らかの理由で翻意した場合等にその請求を
取りやめることをいう。
(b)これについては、
・ 解雇を不当と考えた労働者が、地位確認等の選択肢を考えることなく使
用者に対して金銭を請求した場合であっても、取り下げができないまま、
金銭が支払われたときに労働契約が終了することとなり、労働者保護に欠
けることから、取り下げができる仕組みとするべきという意見があったが、
・ これに対しては、そうした仕組みとした場合、
➢ 「現に継続して労働者が一定額の金銭の支払を求めていること」を要
件とすると、金銭の支払を求めている間は権利があるが、その後求める
意向がなくなっている期間があればその間は権利が喪失するというよ
うに、権利関係が不安定になり
➢ 「金銭の支払を求めたこと」を要件とすると、取り下げを認めない仕
組みとした場合と同様の課題が生じ得る
17
➢ 労働者が十分な情報を得て熟慮したうえで金銭救済請求権を行使す
る必要がある
等の意見があり、権利関係の早期安定の観点からは、支払請求後の取り下げ
ができない仕組みとすることが考えられる。なお、この点については、様々
な選択肢について更に検討すべきとの意見もあった。
(c)その上で、そうした仕組みとした場合の課題については、
・ 労働者による慎重な権利行使を求める観点から、裁判上でのみ権利行使
できるものとして設計すべきであり、権利行使を裁判上に限れば労働審判
制度への影響も少ない
・ 広く国民に利用してもらうという今回の制度趣旨に鑑みると、裁判上の
請求に限ることは望ましくなく、また、裁判外の請求は、当該解雇が客観
的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないこと(解雇
権濫用法理)との要件があるためそもそも事実上それほど行使されない可
能性があることも踏まえると、裁判上の請求に限る必要性も高くはない
・ 労働審判は当事者間の権利関係を確認して行うものであり、この金銭請
求の権利の行使を裁判上の請求に限ると、労働審判では行使できなくなる
ことから、裁判上に限るのは適当でなく、書面により請求することに限る
ような方策を考えるべき
等の意見があった。
(d)労働契約解消金の支払請求後の取り下げができない仕組みとした場合の課
題への対応については、権利行使を裁判上での請求や書面など一定の形式に
よる請求に限ることから、権利行使についての周知広報によって対応するこ
とまで、様々な選択肢が考え得るが、労働者保護を図る観点から、どのよう
な対応が望ましいか、引き続き、議論を深めることが考えられる。
※ このほか、例えば、労働者が金銭救済請求を行ったときに、解雇した使用者が、解
雇の意思表示が無効であって労働者が労働契約上の地位を有することを自ら認めた
上で、労働者に対し労務提供を求めた場合において、
・ 労働者は使用者に引き続き金銭救済を求めることができるのか
・ 使用者が金銭支払を拒否して労働者に労務提供を求め、労働者が労務提供を拒
んだ場合、使用者は、労働者の労務提供拒否(債務不履行)を理由に再度解雇を
行うことが可能か
等の指摘もあった。
(ウ)使用者による金銭の支払及び労働契約の終了
a 金銭の性質
(a)労働契約解消金の構成
イ 労働契約解消金については、①職場復帰せずに労働契約を終了する代わり
18
に受け取る「解消対応部分」(+その他慰謝料的な「損害賠償的部分」)及び
②「バックペイ分」(解雇が無効な場合に民法(明治 29 年法律第 89 号)第
536 条第2項の規定に基づき発生する未払い賃金債権に相当するもの)とい
う要素が考えられる。
ロ 労働契約解消金は、このうち、解消対応部分(+損害賠償的部分)が基本
となるものと考えられる。
ハ バックペイ分については、
A 労働契約解消金には含めず、これまでと同様に民法第 536 条第2項に基
づき発生する未払い賃金債権として位置付ける
B 労働契約解消金に含める
という2つの構成の仕方が考えられる。
ニ このうち、Aについては、
・ 簡素でわかりやすい仕組みとすることを考えると、B案は非常に複雑な
設計になるため、A案のようにバックペイは従前どおりの扱いとする考え
方もあるのではないか
・ バックペイを含めない場合には、労働者がバックペイの支払を受けた後
に労働契約解消金を請求するという行動を取り、紛争が長期化するといっ
た懸念がある
・ バックペイを含めないこととした場合には、労働契約解消金請求訴訟と
は別にバックペイ請求訴訟を提起することが可能であり、紛争の一回的解
決の観点からは裁判所の審理上の工夫として弁論を併合するといったこ
とが考えられる
等の意見があった。
ホ 一方、Bについては、
・ 現状では、解雇無効を争う場合には、一般的に和解でもバックペイを考
慮しており、例3の仕組みによる金銭救済制度でも労働契約解消金にバッ
クペイを含めて考えるのは当然
・ バックペイは裁判が長引くほど積み上がっていく性質のものであり、金
銭水準の予見可能性の観点から問題がある
・ バックペイを含めるとすると、労働者の再就職に対するインセンティブ
が阻害され、不適当
等の意見があった。
ヘ また、Aについてはバックペイ分が含まれず、別途未払賃金が請求される
ため、労働契約解消金に係る判決確定後に訴訟が蒸し返され紛争が長期化す
る可能性があり、Bであってもバックペイ分のうち「相当額」が含まれるに
留まる、又は「全額」を含めて上限を設定する場合には、別途、残余のバッ
クペイに係る請求が行われる可能性があって、いずれも紛争の迅速な解決の
観点からは問題があることから、Bのうちバックペイ分を全額含める構成と
19
することが適当との意見もあった。
ト これとは別に、欧州諸国においては、バックペイを考慮せずに解決金額を
算定している国もあり、裁判の長期化や申立の遅れ等によりバックペイ額が
膨らむ可能性があることも考慮すると、予見可能性の観点からも、解雇時に
労働契約が終了することと整理した上で、労働契約解消金は解消対応部分
(+損害賠償的部分)のみによって構成されることとし、バックペイを考え
るべき事案であれば考慮要素として勘案すべきといった意見もあった。
チ こうした意見を踏まえ、労働者の保護を図りつつ、紛争の迅速な解決に資
する観点から、どのような整理とすることが適当か、引き続き、議論を深め
ることが考えられる。
(b)バックペイの発生期間
イ バックペイについては、使用者による解雇が解雇権濫用等により無効であ
る場合、民法第 536 条第 2 項の規定に基づき、使用者の責に帰すべき事由に
よって労働することができなかった期間に係る未払い賃金債権が発生する
こととなるが、使用者の責に帰すべき事由によって労働することができない
と認められるには、労働者が就労の意思を有していることが必要と考えられ
る。
ロ 例3の仕組みによる金銭救済制度において、この就労の意思が認められ、
バックペイが発生する期間をどのように考えるかについては、
・ 労働契約解消金の支払時点まで労働者は就労の意思を有しており、解雇
時点から労働契約解消金の支払によって労働契約が終了するまでの間バ
ックペイが発生するとする考え方と、
・ 金銭救済請求権を行使した後は基本的には就労の意思が失われており、
解雇時点から労働契約解消金の支払を請求するまでの間バックペイが発
生するとする考え方
という複数の考え方があり得る。
ハ これについては、バックペイは、民法第 536 条第2項に基づき支払われる
ものであることを基本としつつ、例3の仕組みによる金銭救済制度における
労働契約解消金の中にバックペイをどのように位置付けるか、労働契約の終
了との関係等によってその発生期間が定まってくるものであることから、労
働契約解消金の性質等を踏まえ、引き続き、議論を深めることが考えられる。
ニ なお、これについては、
・ 労働者の救済の観点からは、金銭が支払われて初めて労働契約は終了
し、労働者の就労の意思もなくなったとするべきであり、解雇から金銭
支払い時までは未払いの賃金が認められてしかるべき
・ バックペイについては、「解雇から判決時」または「解雇から金銭支払
時」まで認めるとなると、裁判が長引くほど解決金額が増大することが
懸念されるが、迅速に解決する制度とすることが労使双方にとってメリ
20
ットがあるため、バックペイの発生期間については、「解雇から金銭請求
時」までとすることが適当
等の意見があった。
b 労働契約の終了
(a)労働契約解消金の支払により労働契約が終了する根拠は、合意等による労
働契約の終了とは異なり、実定法に新たな契約の終了事由が規定されること
によるものと考えられる。
(b)例3の仕組みによる金銭救済制度において解雇権濫用法理と同様の要件や、
当該解雇が法律で禁止されていること等解雇等が無効となる要件を課すの
であれば、労働契約解消金請求訴訟においてもそれらの要件該当性が問題と
なり、要件該当性が認められた場合には、客観的には解雇が無効である場合
と同様の状況にあることが確認されるため、解雇後も労働契約が存続してい
ると解される。
(c)このため、例3の仕組みによる金銭救済制度において、労働契約が終了す
る時点をどのように考えるかについては、
・ 労働審判や和解においては、解雇時点に遡って契約が終了するとするの
が一般的との意見もあったが、
・ これに対しては、
➢ 労働契約の終了時点が解雇時点まで遡るとすれば、それは限りなく事
前型に近くなる
➢ 労働者保護の観点からは、金銭が支払われた時点で労働契約が終了す
るとすることが穏当
等の意見があった。
(d)こうした意見を踏まえ、労働者保護を図るとともに、原職復帰に代えて使
用者からの金銭の支払を求めるという金銭救済制度の趣旨に鑑みれば、使用
者から労働者に対して労働契約解消金が支払われた場合に、労働契約が終了
することとすることが考えられる。
※ 分割払い等により労働契約解消金の一部しか支払われなかった場合には、契約は終
了していないと考えられる。
(エ)労働契約解消金請求訴訟と他の訴訟との関係
a 労働契約解消金請求訴訟と他の解雇に関係する訴訟(地位確認訴訟や解雇を
不法行為とする損害賠償請求訴訟等)との関係については、労働契約解消金の
性質にもよるが、訴訟物が異なると整理できる場合には、二重起訴には該当し
ない(却下されることなく、内容審理が行われる)と解されることとなり、併
合して訴訟を提起することも可能になり得ると考えられる。
b なお、この点については、
・ 労働契約解消金請求権と地位確認請求権の訴訟物が異なると整理した上で、
21
訴訟が錯綜する制度になってしまうという点をどのように考えたらいいの

・ 地位確認訴訟の途中で労働契約解消金請求権を行使することや、労働契約
解消金請求権で裁判を提起したけれども、途中から地位確認訴訟を追加的に
訴えることができるのかといった問題について、どのように考えるか
・ 金銭支払の判決が出た後に使用者側が金銭を支払わないと、労働者は地位
確認請求に乗り換えることも想定されるが、撤回が問題になるということは、
一度労働契約解消金請求を行った場合、改めて地位確認請求はできないので
はないか
といった懸念点が示された。
(オ)金銭的予見可能性を高める方策
a 金銭的予見可能性を高める方策の在り方
(a)労働契約解消金の予見可能性については、
・ 解雇の事案は多様であり、現在の実務では個別事案に応じて金額が決め
られていることから一概にルール化することは難しい
・ 労働者側には必ずしも金銭的予見可能性を高めてほしいというニーズは
ない。そうしたニーズは、いくら支払えば解雇できるのか、ということを
知りたい使用者側にあるのではないか
・ 金銭救済制度は判決によって解決金の金額が決まるものであるが、金銭
の考慮要素は多様であるから、上下限をはめることは不可能であり、労使
合意によって決めざるを得ないのではないか
等の意見があったが、これに対しては、
・ 紛争当事者である労働者や使用者にわかりやすい形で金銭的予見可能性
を高めるためにも何らかの枠が必要
・ 労働審判制度が事実上の金銭解決制度として有効に機能し始めているこ
とは事実だが、金銭解決の水準に大きなばらつきがあること、どの程度の
金銭解決になるかということが知られていないという意味で、当事者にと
っては予見可能性が低いという問題点があり、その意味で、金銭水準につ
いて何らかの基準を作るべき。透明、公正で迅速な解決が可能な仕組みと
なるためには、ある程度予測可能なルールの形成が必要
等の意見があった。このほか、問題は、金銭的予見可能性を高めるために、
何を犠牲にしなければならなくなるかということであり、この点の如何によ
り、導入が可能な規律の限界が定まることになるとの意見もあった。
(b)また、金銭的予見可能性を高める手法については、
・ 透明で公正な運営をしていくためにも上限、下限、ガイドラインなどの
設定が必要であり、ガイドラインには、勤続年数、年功賃金の程度、退職
金制度の状況なども考慮に入れる必要がある
22
・ 非常に低い金額で泣き寝入りしているような労働者を救うためには下限
額が必要
・ 現状、労働審判においても解決金額には幅があり、労働部がある裁判所
ばかりではないことからすれば、上下限がなければ裁判所も判断ができな
いと考えられるので、混乱を回避するためにも考慮要素に加えて上下限を
設定することが必要
・ 労働審判の解決金額に幅があるのは事案が多様であることに鑑みれば当
然であり、裁判所の判断が難しいからこそ、労使の審判員がいる
・ 労働契約解消金の金額の予見可能性という点では、類型的な考慮要素を
定めておくことは、権利の性質を明らかにするという意味でも必要だが、
金額に上限及び下限を定める方策については、場合によっては、本来考慮
すべき要素を切り捨てることにつながり得るものであり、「紛争の迅速な
解決を図る」ことに資することは事実としても、それだけでそうした規律
を正当化できるかについては、慎重な検討が必要
・ 下限については、労働者保護の最低限度を示すという説明が可能と思わ
れるが、上限については、本来認められるべき超過額部分を切り捨てる機
能を持ち得るのだとすれば、かかる権利の縮減を正当化するに足りる十分
に合理的な説明が要求される。上限については、原則は一定の上限が課せ
られるものとした上で、例えば、「前項に定める金額を超えないものとす
ることが、当事者間の衡平を著しく害することとなる特別の事情があると
きは、この限りでない」といった例外規定を設けることも1つの選択肢
・ 限度額を定めるとしても、上限を設けることは、金銭救済制度の利用を
抑制するため不適切
・ また、上限を定めると、使用者側としては解雇してもその程度の金銭を
支払えばよいのかというモチベーションが生じ、不当な解雇を誘発する可
能性もある
・ 解雇不当であることを認められた後に退職を希望した場合に、金銭で解
決するということであれば、希望退職制度において支払われる、会社都合
退職金+αというのが妥当であるため、希望退職制度類似の基準を設けれ
ば足りるものであり、それに上限、下限をつけるというのは少しおかしい
・ 金銭水準の算定根拠を明確にすることは賛同するが、解雇に至った背景、
労使の責任の度合い、企業の支払能力など個々の事情もあり、企業横断的
に一律に定めるのは難しいのではないか
との意見があった。
(c)紛争の迅速な解決を図るとともに、裁判等における金銭の算定について予
見可能性を高めることが重要であり、そのため、解消対応部分(+その他慰
謝料的な「損害賠償的部分」)については、上記の金銭の性質を踏まえ、一
定の考慮要素を含め、具体的な金銭水準の基準(上限、下限等)を設定する
23
ことが適当であると考えられる。この点については、今後の議論において、
事案は多様であり上限、下限等を含め金銭水準の基準を設定すべきではない
との意見や、上限設定は不当な解雇を誘発しかねないとの意見、本来考慮す
べき要素を切り捨てることにつながり得るとの意見があったことを斟酌す
ることが適当である。
(d)この場合、解消対応部分(+その他慰謝料的な「損害賠償的部分」)の考
慮要素としては、労働契約解消金の性質を踏まえ、年齢、勤続年数、解雇の
不当性の程度、精神的損害、再就職に要する期間等が考えられるが、その具
体的な内容やどこまで考慮要素を明示化するか等については、引き続き、議
論を深めることが考えられる。
(e)また、具体的な限度額については、
・ 現行の都道府県労働局におけるあっせん、労働審判及び民事訴訟におけ
る和解の解雇事案の金銭水準や、早期退職優遇制度及び希望退職制度にお
ける割増額の水準等を考慮して設定すべき
・ 下限の水準については、現行の労働紛争解決システムにおいて、解雇有
効の可能性が高い場合であっても、1~3か月という数字が出ていたので、
今後議論する際の目安になるのではないか
・ 今回の金銭救済制度は、解雇無効の場合のことを考えているので、その
金銭水準等を考える場合は、解雇有効と思われる場合での3か月は遥かに
超えるのではないか
・ 今回の金銭救済制度における労働契約解消金のうち解消対応部分は、解
雇無効という労働者に帰責性がない状況で労働契約を解消することの代
償であるから、早期退職優遇制度の割増額が参考となり、その平均値が
15.7 か月分であることから、例えば下限を6か月、上限を 24 か月とする
ような考え方があり得る
・ 労働契約解消金が高額になり過ぎると、中小企業で支払が難しくなり、
折角の制度が機能しなくなるおそれがあるため、中小企業の負担や雇用に
係るコストにも十分配慮したものとすべき
・ 金銭補償額は、賃金の半年分から1年半分の範囲内とし、裁判になった
場合は、裁判所が事案に応じて判断することとすべき
等の意見があったが、その具体的な内容については、引き続き、議論を深め
ることが考えられる。
(f)バックペイ分に限度額を設定するかについては、
・ 未払い賃金が支払われるのは当然であり、そこに上限を設けることは適
当でない
・ バックペイに限度額を入れると、長期化によるリスクが減少し、使用者
側が徹底的に争うため、審理が長期化するおそれが大きい
・ バックペイに限度額を設けない場合は、審理の長期化を招くことになり、
24
金銭的予見可能性という点からも問題があり、弊害が大きい
等の意見があり、労働者保護の観点からも限度額を設定しないこととするこ
とも考えられるが、引き続き、議論を深めることが考えられる。
b 労使合意等の取扱い
(a)法律等で考慮要素等を定めた場合でも、別途、労使合意等によって労働契
約解消金の水準に関するルールが定められた場合の取扱いをどのように考
えるかについては、
・ 法定の金銭水準はデフォルトとして、労使が集団的に合意した場合に、
それが裁判所を拘束するという考え方もある
・ 一律の限度額(上限・下限)を設けるとしても、労使合意により一定の
金銭水準を定めることができる余地を残すことで、柔軟性を持たせること
ができるのではないか。なお、その場合であっても下限を下回る水準は設
定できないこととすべき
・ 労働組合がない場合に労働者の代表が適切に選任されるのでなければ、
そのような仕組みは難しい
・ 労使協定または労働協約で労使があらかじめ労働契約解消金の水準を決
めておくということは現実的ではないと考える
・ 労働契約解消金について労使合意により定めるイメージが沸かないのは、
現時点でそのような制度がないから当然であり、仮に制度があれば、その
ような労働契約解消金の水準に関する団体交渉が行われるのではないか
等の意見があった。
(b)法律等で考慮要素等を定めた場合でも、企業の実情等に応じた柔軟な対応
を可能とするためには、別途、労使合意等によって別段の定めを置くことが
できることとすることも考えられるが、その場合、労使合意等の範囲をどう
考えるか、法定の水準との関係をどう考えるかといった課題があるため、引
き続き、議論を深めることが考えられる。
(カ)時間的予見可能性を高める方策
a 時間的予見可能性を高めるとともに、権利関係を早期に安定化させ、紛争の
迅速な解決を可能とするため、労働契約解消金の支払を請求することができる
権利に関する消滅時効の在り方について検討することが適当であると考えら
れる。なお、この点については、労働者の権利を制限する出訴期間制限のみを
議論するのでは、諸外国において使用者に対する様々な解雇制限があるのに比
して、バランスを欠くのではないかという意見があった。
b その具体的な期間については、
・ 迅速性という制度趣旨に鑑みれば、賃金債権の消滅時効の期間(現行2年)
に合わせることが考えられる
・ 民法の改正も踏まえると、一般債権の原則である「権利者が権利を行使す
25
ることができることを知った時から5年」より短くすることはあり得ない
・ 解雇の有効・無効の立証の観点からも、5年という期間設定は人的・物的
な立証上の問題から困難。解雇に関する重要な書類の保存期間も、現在は3
年とされている(労働基準法第 109 条)
等の意見があったが、消滅時効の期間の統一化等を内容とする民法改正の動向
を踏まえつつ、労働者の権利保護を図り、迅速な紛争の解決に資する観点から
どのような期間が適当か、引き続き、議論を深めることが考えられる。
(キ)他の労働紛争解決システムへの影響
a 金銭救済制度の制度設計の仕方によって、都道府県労働局のあっせんや労働
審判制度など、既存の労働紛争解決システムに影響を与える可能性については、
・ 金銭救済制度が創設され金銭の水準が定められた場合、都道府県労働局の
あっせんなど ADR における解決金額の水準も底上げされるのではないか
・ 裁判における金銭補償の水準が明確になることにより、行政のあっせんや
労働審判もより上手く機能するのではないか
・ 仮に金銭救済制度が労働審判より著しく有利なものとして設計された場合、
これまで労働審判で解決されていた事案まで裁判に流れてしまう
・ バックペイは使用者が和解を決断するインセンティブとなっており、バッ
クペイに上限を入れると、現状の調停や和解に大きな影響を与え得る
・ 金銭解決制度という新たな選択肢を設けることになれば、結果として労働
審判制度が上手く機能している現状からすると、既存の紛争解決システムへ
の影響が大きいのではないか
・ 新たに金銭救済制度を導入することにより制度的に労働審判制度が使えな
くなるといった影響がある訳ではなく、もし影響があるとすれば、金銭水準
の有利不利による影響のみではないか
・ 審判や訴訟の進め方への影響については、解消金の考慮要素・算定基準が
どの程度のものかによる。従来の解雇紛争において問題とされていた要素と
それほど異ならないのであれば、紛争の解決に係る期間が従来と大きく変わ
るということはないのではないか
・ 個別労働関係紛争が発生したとき、何でも裁判に持ち込まれることになら
ないよう、金銭救済制度を設けるのであれば、都道府県労働局において迅速
かつ的確に解決される措置等も同時にとるべき
・ 金銭救済制度が創設された際に、裁判所が対応できないような件数の申立
がされて混乱が生じることは避ける必要がある。金銭水準等の設計について
は、その観点から考慮する必要がある
等の意見があった。
b また、金銭救済請求権の行使を裁判上に限った場合や、裁判外でもできるこ
ととした場合の影響については、
26
・ 労働審判は裁判外・裁判上のどちらに入るのかという問題を考える必要が
あるが、非訟事件であるから、裁判外の解決と見るべきではないか
・ 裁判上の請求に限った場合には、双方の合意に基づき個々の事案に応じて
柔軟に解決できる労働審判と、裁判所が一定の枠の中で解決金額を決定する
金銭救済制度と棲み分けができ、当事者本人のニーズに応じて選択すること
ができる
・ 裁判上の請求に限った場合、労働審判への影響はないとは言えないが、現
在、労使ともに迅速な紛争解決を以前にも増して求めていることからも、簡
易・迅速な仕組みである労働審判から流れてくるとは限らず、心配するほど
の影響はないのではないか
・ 裁判上の請求に限った場合でも、裁判外で合意により金銭解決するという
こともあり得、その際、仮に訴訟に行った場合にどうなるかということを勘
案することとなることから、当然事実上の影響を受ける。その意味で、金銭
救済請求権の行使を裁判上に限るか裁判外でもできることとするかは、本質
的な違いはないのではないか
・ 裁判外での請求を認める場合には、法定の下限よりも低い額での金銭解決
を図ることが脱法行為に該当しないかについても論点として検討する必要
がある
等の意見があった。
c 仮に金銭救済制度を創設する場合であっても、既存の紛争解決システムが引
き続きその趣旨・目的に沿った形で有効に機能するよう制度設計を検討すると
ともに、仮に金銭救済制度を創設した場合の他の労働紛争解決システムへの影
響については、迅速な紛争の解決を図る観点からは、可能な限り、引き続き都
道府県労働局におけるあっせんや労働審判制度が有効に機能するよう、金銭救
済制度を前提とした都道府県労働局におけるあっせんのルール等を構築する
などの方策について、引き続き、議論を深めることが考えられる。
(ク)その他(就労請求権)
上記のほか、解雇無効時の金銭救済制度の検討に当たっては、「解雇は結局
は金銭問題」という規範にならないよう、解雇が無効で労働者が復職を望んで
いるときには使用者が拒んだ場合でも就労を継続させる仕組みとして、就労請
求権を考えるべきではないかという意見もあった。

[透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会の、最終報告案から抜粋引用おわり]

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成30年税制改正法案(地方税)に固定資産税改正項目、商店街の空き店舗の住宅特例措置を自治体が解除へ、自治体が特に定める重点的な地域

2017年05月30日 09時34分30秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

[写真]総務省、東京都千代田区霞が関、2017年5月、筆者・宮崎信行撮影。

 2018年2月にも国会に提出される、「平成30年税制改正法案(地方税)」に、固定資産税の改正項目が盛り込まれる見通しとなりました。

 商店街の再開発に向けて、「自治体が特に定める重点地域」で、自治体が固定資産税の住宅特例を外して課税し、空き店舗併用住宅の税負担を重くする内容です。

 これは、その前年、2017年5月30日に案が示され、6月に決定する安倍晋三首相(自民党総裁)が自ら出席する官邸内のまち・ひと・しごと創生会議で示されました。

 まち・ひと・しごと創生基本方針2017案では、次の内容が盛り込まれました。

内閣官房ホームページから抜粋引用はじめ]

②空き店舗、遊休農地、古民家等遊休資産の活用

<概要>
地方における遊休資産を活用することにより、都市・まちの生産性向上や地
域の魅力を引き出し、地域の活性化を図る。地方公共団体が特に定める重点的
な地域(商店街等)において、空き店舗の活用に向けた仕組みを構築する。
既存施策に加え、農村地域工業等導入促進法(昭和 46 年法第 112 号)の改
正等により、遊休農地も活用しつつ農村地域における雇用と所得の創出を推進
する。
地域に残る古民家等の歴史的資源を上質な宿泊施設やレストランに改修し、
観光まちづくりの核として再生・活用する取組を、重要伝統的建造物群保存地
区や農山村地域を中心に 2020 年までに全国 200 地域で展開する。

・機能4:より短時間での輸出関連手続のワンストップ化・迅速化の実現
(16) 地方公共団体、スポーツ団体、民間企業(観光産業、スポーツ産業)等が一体となり、スポーツツーリズムの
推進、イベントの開催、大会や合宿・キャンプの誘致など、スポーツと地域資源を掛け合せたまちづくり・地
域活性化に取り組む組織。
(17) 次世代に誇れる有形・無形の遺産を指す。
11
【具体的取組】
◎空き店舗の活用等による商業活性化
・空き店舗活用に積極的に取り組む地方公共団体・商店街を支援するた
め、商店街の空き店舗に関する状況の精査や、各地における優良事例の
取組を踏まえつつ、地方創生推進交付金を含む関係府省による地域全体
の価値を高めるための重点支援措置や、固定資産税の住宅用地特例の解
除措置等に関する仕組みを検討し、平成 29 年内に結論を得る。

[内閣官房ホームページから抜粋引用おわり]

このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

文化庁の地方移転へ、文部科学省設置法改正案を、2018年通常国会に提出、まち・ひと・しごと創生基本方針2017

2017年05月30日 09時22分41秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

[写真]文化庁や、文部科学省、スポーツ庁が入るビル(左側)、中央は会計検査院、右手前は内閣府・内閣法制局、東京都千代田区霞が関、2017年5月、筆者・宮崎信行撮影。

 安倍自民党官邸内に設置された会議は、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」の案をまとめました。5月29日の会議で案を示し、次回の会議で決定する見通し。

 この中で、平成30年2018年1月に始まる、来年の通常国会に、文部科学省設置法改正案を提出するはこびを盛り込みました。

 文化庁の地方移転(京都を念頭)を盛り込むため。

 首相も出席して官邸4階で開かれた会議では、次の内容が盛り込まれた案が決定されました。

[まち・ひと・しごと創生基本方針2017の案から抜粋引用はじめ]

中央省庁の地方移転について、文化庁については、地域の文化資源を活用

した観光振興や地方創生の拡充に向けた対応の強化、我が国の文化の国
際発信力の向上、食文化など生活文化の振興、科学技術を活用した新文化
創造や文化政策調査研究など、文化庁に期待される新たな政策ニーズ等
に対応できるよう機能強化を図りつつ、京都に全面的に移転する。まず、
平成 29 年4月に京都に設置した文化庁地域文化創生本部において、新た
な政策ニーズに対応した事業について、地元の知見等を生かしながら移
転の先行的取組を実施する。こうした先行的取組と並行して、文化庁移転
協議会における検討を経て、平成 29 年8月末を目途に本格移転の庁舎の
場所を決定する。また、文化庁の機能強化及び抜本的な組織改編を検討
し、これに係る文部科学省設置法(平成 11 年法律第 96 号)の改正案等
を平成 30 年1月からの通常国会を目途に提出する等、全面的な移転を計
画的・段階的に進めていく。

[まち・ひと・しごと創生基本方針2017年の案から抜粋引用おわり]

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]

Miyazaki Nobuyuki 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする