[写真]内閣府8号館(右側)きょねん「六本木ヒルズ」から宮崎信行撮影。
コロナ禍で拡大した「ウーバーイーツ」に代表されるギグエコノミーや、芸能界などフリーランス労働者をめぐる論点について、法案改正が進みそうです。
これは、先週金曜日(令和2年2020年5月22日)に首相官邸で開かれた「全世代型社会保障検討会議」(安倍晋三議長)で、初めて提示された「2ページの論点メモ」に書かれました。
コロナ禍で3カ月ぶりとなった同会議で、「2ページの論点メモ」は突然出てきました。安倍晋三首相らが控えるテーブルに配布されました。筆者は不明。小泉内閣以降の「民間委員」では無さそう。「名無しの権兵衛」は、公正取引委員会委員長への転出既に国会同意済みの、官邸官僚・古谷一之・内閣官房副長官補(昭和53年旧大蔵省入省)だと推測されます。
コロナ禍では、フリーランスが契約書面の交付を受けていないため発注キャンセルを証明しづらく、持続化給付金を受け取りにくい問題に直面しています。
論点メモは、発注者がフリーランスなどに契約書面を交付しないことは「不適切だ」と「独占禁止法改正案」として書き込むことを「明確化してはどうか」と方向性も含めて論点提示。発注者が優位な地位を悪用して、報酬の支払いを遅らせたり、取引条件を一方的変更したりすることも「独禁法上問題となることを明確化してはどうか」と書いています。仲介事業者の規制追加も提案。
公取所管の「独禁法」だけでなく、公取と経済産業省中小企業庁が共管する下請代金法の規制もあると整理。資本金1000万円以下の企業の発注について「下請代金法の改正を含めた立法的対応の検討」を主張しました。
発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合は「労働関係法令が適用されることを明確化してはどうか」ともされました。
法改正に先立ち「ガイドライン」を内閣官房・公取・中小企業庁・厚労省の「連名で策定してはどうか」と書かれました。さらに「公取の定員を増員する必要があるのではないか」との方向性まで示されました。「名無しの権兵衛」はまもなく官邸を去る、古谷次期公取委員長だとみて、間違いなさそうです。
先週成立した「銀行とバスの独禁法特例法」(201閣法31号)でも一貫してプロセスから遠ざけられたとみられる公取。伝統的に国会対策が苦手で、今の任期で自民党部会で唯一承認されなかったこともあり、10年前の民主党政権でも全省庁で最も長い1年半国会で店晒しになり成立が遅れたこともあります。このため、内閣官房や金融庁に主導権をうばわれましたが、官邸官僚が委員長に就くことで、逆に、経産省、厚労省と横串をさす企画調整機能を試される好機到来かもしれません。
論点メモには「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた社会保障の新たな課題」との記述も。介護での訪問型支援、オンライン診療、オンライン面会、高齢者のテレワーク、SNSの活用や子ども食堂を通じた子どもの見守り体制の強化、住宅確保給付金の拡充、新卒者に対するハローワークの相談体制の整備など、予算措置が必要となる論点も打ち出されました。
検討会議の最終報告に盛り込まれるかどうかは不透明です。
かなり大事だと思いますので、2ページのPDFを下に全文コピペして、この記事は終わります。
[首相官邸ホームページから全文コピペはじめ]
論点 (資料3)
1.フリーランスの政策の方向性
○ フリーランスについては、ギグエコノミーの拡大による高齢者雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手の増加などの
観点からも、その適正な拡大が不可欠。このため、ルールの整備が重要。
○ さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、フリーランスの方に大きな影響。発注のキャンセル等が発生する中、
契約書面が交付されていないため、仕事がキャンセルになったことを証明できない、といった声もある。
○ こうした状況も踏まえ、政府として一体的に、以下のような政策を検討してはどうか。
• 取引条件が明確になっていないことが取引上のトラブルにつながることが多いため、発注事業者が契約書面を交付しない
又は記載が不十分な契約書面を交付することが独占禁止法(優越的地位の濫用)上不適切であることを明確化してはどうか。
• 取引条件を明記した書面の交付は下請代金法上で義務付けられているものの、資本金1000万円以下の企業からの
発注などの問題について、下請代金法の改正を含め立法的対応の検討が必要かどうか。
• 発注事業者が不当に取引条件の一方的変更や報酬の支払遅延・減額を行う場合があるため、独占禁止法(優越的地位の濫
用)や下請代金法上問題となることを明確化してはどうか。
• 仲介事業者が取引条件の一方的変更を行う場合もあることから、仲介事業者とフリーランスの取引についても、独占禁止法
が適用されることを明確化してはどうか。
• フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、
現行法上「雇用」に該当する場合は、契約形態にかかわらず、労働関係法令が適用されることを明確化してはどうか。
• 独占禁止法や下請代金法、労働関係法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインを
内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省連名で策定してはどうか。
• 発注事業者とフリーランスとの取引におけるトラブルに迅速に対応できるよう、中小企業庁の取引調査員(下請Gメン)や公正
取引委員会の職員の増員など、独占禁止法や下請代金法に基づく執行を強化する必要があるのではないか。
• また、ガイドラインの内容を下請振興法に基づく下請振興基準にも反映し、業所管省庁による執行を強化してはどうか。
○ あわせて、フリーランスとして働く人の保護のため労働者災害補償保険の更なる活用を図るべきではないか。
2.新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた社会保障の新たな課題
○ 高齢者の「通いの場」の閉鎖等により、高齢者の外出・運動や社会的交流の機会が減少していることを踏まえ、屋外におけるプ
ログラムや、通いの場に通うことができない高齢者への訪問型の支援など、感染防止に配慮した支援の提供を進めるべきでは
ないか。
○ 感染リスクがある中で、医療、介護、障害等の分野で働く方が安全に就労できるよう、マスクや消毒液等の衛生用品の確保や
換気設備の設置等を支援すべきではないか。
○ 感染リスクを恐れて、病院・診療所や介護事業所等において利用を控える動きがあることを踏まえ、オンライン診療やオンライン
面会、運動アプリなどの非接触サービスの利用を促進するため、介護施設や医療機関等におけるタブレットやWifi等の導入支
援を強化すべきではないか。
○ 高齢者も、テレワークによって安全に働くことができるよう、事業主によるテレワーク設備の導入や研修等を支援すべきではない
か。
○ 感染症への対応の長期化に伴い、生活不安やストレスによる児童虐待、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害、自殺者の増加
等が懸念されることを踏まえ、電話・SNSを活用した悩み相談等による相談体制の強化やこころのケアの充実、子ども食堂・子
どもへの宅食などを活用した子どもの見守り体制の強化等を進めるべきではないか。
○ 経済情勢の悪化に伴い、失業者の発生が懸念される中で、雇用調整助成金の拡充による雇用の維持やハローワークにおける
就職支援、住居確保給付金等による住居・生活支援を強化すべきではないか。
○ また、新卒者の就職活動への影響や内定取消し事案が懸念される中で、新卒応援ハローワークによる就職支援や内定取消し
にあった学生への相談体制を強化すべきではないか。
[首相官邸ホームページから全文コピペ終わり]