【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【5/22】「スーパーシティ」は内閣法制局に弾かれた片山さつき前大臣も質問し森裕子さんは「一人一人に文春砲が向けられている」から転じて「黒川弘務」を法務副大臣に質問

2020年05月22日 20時19分31秒 | 第201回通常国会(2020年1月から6月)「コロナ感染症」
[画像]森ゆうこさん、きょうの参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 若い人を潰そうという気はありません。コロナ渦によるテレワークでの動画配信などの量的拡大から、国会を題材にして情報を配信しようとすることはいいことです。しかし、私は13年このブログをやり、うち9年11カ月有料媒体をしてきましたが、アメリカが議会に予算編成権があるのに対して、日本では政府に予算編成権があり国会は川下ですので、情報を発信したところで、商業コマーシャルベースでは成り立ちません。「国会ニュース」より「薬事審議会ニュース」の方がいいでしょう。私が商業的に遊離して政治ジャーナリストをしていることは業界内で知られているので、まったく締め付けようがないこわい人物であることも定着しています。そのため、若い方で、発信媒体の多様化から自分もやろうという方がでてくるのはいいのですが、とにもかくにも、経済的に成り立たない、高校球児3年間のようなものだとよく理解していただきたい。

 前置きが長くなりましたが、霧が晴れたような終盤国会。残り3週間半となります。解散後3度目の通常国会ということもあり、個人的にも仲が良い、小選挙区で通っている野党議員は、バンバン修正案を出していて、会派幹部の顔色も忖度しないで、伸び伸びやっているようすです。

【衆議院本会議 令和2年2020年5月22日(金)】

 法案の審議入りはフィニッシュしており、あとは第2次補正予算案の提出を待つだけです。

 委員会での審査が終了した「あがり法案」。

 「改正外弁法外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」(200閣法12号今国会は参先議)が共反対、自公立国社維などの賛成多数で可決し、成立しました。この法案は先の第200回国会の政府提出法案で唯一成立せず、継続審議になっていました。これにより、先の国会では衆議院を通過し参議院でも審議日数があったのに審議が止まり森山裕国対委員長は「政府提出法案成立率100%」を逃しました。安住淳国対委員長はこれにより、昨年末は本当に誰も気づいていなかった「検察庁法改正案の罠」が大炸裂する火種を得ていたことになりました。

 「第10次地方分権一括法案(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案 )」(201閣法32号)は全会一致で可決し、参議院に送られました。

 「公益通報者保護法改正案」(201閣法41号)は全会一致で「修正議決」として可決し、参議院に送られました。

 「復興庁を10年延長する復興庁設置法及び特別会計法改正案」(201閣法33号)は賛成多数で可決し参議院に送られました。

【参議院地方創生及び消費者問題に関する特別委員会 同日】

 「スーパーシティー国家戦略特区法改正案」(201閣法5号)が立国社共反対、自民・公明・維新・NHKから国民を守る党の賛成多数で可決すべきだと決まりました。来週成立。

 きょねん、内閣法制局の審査が通らず、審議時間が確保できる時期の提出ができませんでした。

 片山さつきさんが「あの、実は、おととしの秋になりますか、私が地方創生担当大臣を拝命し、安倍総理から岩盤規制の改革が踊り場に来つつあるので、ステージが違うパンチの違う法案をつくってほしい」と言われたものだとしました。


[画像]片山さつき前地方創生担当大臣、きょうの参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 この後の質疑で、共産党の大門実紀史さんは「さきほど片山前大臣が質問したが、その後委員会室から出てどこかに行ってしまった。前大臣ならせめて、野党の質疑を聞いたらどうか」と苦言を呈しました。大門さんは「企業側の意見のみ聞いた法案で、個人データをAIで結びつけてプロファイリングするものだ」と批判しました。

 森ゆうこさんは45分という長い持ち時間で登場。「森さんは、一人一人に文春砲が向けられているような特区だ」と批判し、義家弘介・法務副大臣に法務省の見解を問いました。ここで話が展開。「せっかく法務副大臣に来ていただいたから、黒川弘務さんについて聞きたい」とけさの閣議で更迭された黒川弘務・前東京高検検事長について質問。森さんは2012年5月に出版した自著にふれ「私が検察の罠を出版したときに、義家さんは本買ったよ良かったよ、と言ってくれた。あの本の後半はほとんど黒川さんの話だ」とし、当時の与党・森議員が、法務省官房長を呼び出した時に、「小沢一郎さんを有罪にさせる」と恣意的な裁判結果を引き出せることを明言して牽制された話を持ち出しました。森さんは「検察は公訴を独占しているばかりか、検察審査会も手の内にしている。小沢一郎さんの陸山会事件では、石川知裕元衆議院議員の調書とは似ても似つかない偽物の捜査報告書を検察官が作成して検審に提出した。冤罪事件だ」としました。また法務省の調査では、産経新聞記者2人と朝日新聞社員から話を聞いていないことも分かりました。8年間にわたった森さんと黒川さんの因縁。この因縁をご存じなかった方も多いでしょう。この8年間に黒川さんの肩書は、法務大臣官房長、法務事務次官、東京高検検事長と3つしかありません。しかし、検事総長を目前にして、麻雀賭博の常習者という公訴独占主義を逆手にとった大胆な所業で、きょうをもって失脚。森さんの土俵際大逆転完勝となりました。

●参議院本会議は定例日ですが開催されませんでした。

【衆議院外務委員会 同日】

 岡田克也さんも質問しました。後日、まとめます。

 「日本スウェーデン社会保障協定」(201条約12号)「日本フィンランド社会保障協定」(201条約13号)「日本ベトナム受刑者移送協定」(201条約14号)「専門機関特権・免除条約付属書18」(201条約15号)「国際獣疫事務局東京事務所の特権・免除条約」(201条約16号)が全会一致で承認すべきだと決まりました。

 外務省が今国会に提出した条約承認案は、すべて議案番号順に3分類で審議され、会期内両院承認が確実となりました。昨秋の国会では日米FTAだけ出して署名した順に出していないとされましたが、通常国会も含めて、国会連絡室や大臣官房の国会対策が功を奏したようです。松本剛明委員長との事前の打ち合わせもあったのでしょうか。

【衆議院厚生労働委員会 同日】

 重要広範議案の衆議院では最後の総理入り質疑がありました。

 「社会福祉法など改正案」(201閣法43号)。総理入り質疑では、黒川弘務・前東京高検検事長のけさの閣議での更迭に質問が集中しました。

 法案は立国社共反対、自公維賛成多数で可決すべきだと決まりました。厚労省関連はすべて衆議院委員会を通過しました。

 「野党対案3法案」(201衆法11、12、13号)は採決されませんでした。

【衆議院文部科学委員会 同日】

 「著作権法改正案」(201閣法49号)。川内博史さんが元気よく修正案を提出し否決されました。この後、政府原案が採決されたところ、全会一致で可決すべきだと決まりました。

【衆議院法務委員会 同日】

 一般質疑。報道によると、山尾志桜里さんの質問に対して川原隆司法務省刑事局長(平成元年採用慶大法)が「社会の実情から見て必ずしも高額ではない」とし、黒川・前東京高検検事長の賭けマージャンが立件されない範疇だという趣旨の答弁をしたそうです。警視庁はどう考えるのか。

 「自動車運転処罰法改正案」(201閣法42号)が趣旨説明されました。社会問題になった高速道路でわざと減速するあおり運転の法案。参考人質疑を次回の審議ですることにして、散会しました。

【衆議院国土交通委員会 同日】

 「賃貸住宅管理適正化法案」(201閣法44号)は合計3時間の質疑を経て、全会一致で可決すべきだと決まりました。質疑では、赤羽一嘉大臣は、シェアハウス・サブリース問題について「スルガ銀行は詐欺そのものだから別として、問題のある業者も多い」と答弁。スルガ・かぼちゃの馬車事件が「別として」というのは当事者意識が疑われる答弁で、赤羽さんの能力には前任者の石井啓一さんと比較して大いに疑問符が付きます。

【衆議院経済産業委員会 同日】

 「電気事業法改正案」(201閣法26号)。これも斉木武志さんら野党から修正案が出ました。政府原案が賛成多数で可決すべきだと決まりました。 

【衆議院内閣委員会 同日】

 「個人情報保護法改正案」(201閣法48号)の対政府質疑が続きました。

【衆議院決算行政監視委員会 同日】

 「平成28・29年度決算承認案」の全般的質疑がありました。

●衆議院財務金融委員会は金曜日も定例日だとされていますが、おそらく大臣が決算委員会に出席したため「金商法改め金融サービス法改正案」(201閣法40号)の質疑はありませんでした。

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