【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【11/8】岸田政権、解散総選挙中に「超・骨太の方針」いきなり「新しい資本主義実現会議」で税制改正・法案規定化、野党あすから急な動き

2021年11月08日 23時18分30秒 | 第206回特別国会
 いきなり動きだしました。

 まず、立憲民主党は、あす午前11時に、総選挙後2回目・枝野代表辞任表明後2回目となる12議員による執行役員会を開催。その後、午後1時から、40議員による常任幹事会を開催。さらに午後3時から両院議員総会を開く日程を発表しました。新人も議員バッジ無しに出席ないし臨席すると思われます。その後の福山哲郎幹事長の定例会見は「終了後」とだけ発表されました。あすの3会議で、枝野さんを慰留する議員が発言すると思われますが、大きく広がることはなさそうです。

 日本維新の会と、国民民主党は、あす午前中に国会内の共用会議室で、2幹2国(幹事長・国対委員長会談)を開催。枠組みとしては、2014年頃に、前身政党を含めた大畠章宏幹事長・松野頼久幹事長の2幹2国会談が定例化し、「委員会採決後にその日の午後1時からの本会議への緊急上程はなるべくしない」との松野ルールが与野党で合意され、現在まで続いています。しかし、大畠さんが8野党幹事長会談まで広げた際に、臨時国会召集要求書の署名から松野維新が脱退。参院野党が内閣に出す不首尾な展開となり、解散総選挙で維新が負けたため、一度消えました。

 岸田文雄官邸は、きょう第2回新しい資本主義実現会議を開催。あすは第1回新たな全世代型社会保障構想会議、11日(木)には第1回デジタル田園都市国会構想実現会議を開きます。

 きょうの「緊急提言 未来を切り拓く「新しい資本主義」とその起動に向けて」は高市早苗政調会長ですら驚いたのではないでしょうか。政策プラグラム文書で政調で審査されてきた「経済財政運営と改革の基本方針」を上書きした内容です。総選挙直後に出てくるということは、新しい官邸官僚らがまとめたことが推測されます。

 緊急提言の内容は「本年末の税制改正で、労働分配率向上に向けて賃上げに積極的に企業への税制措置の結論を得る」として(1)新規雇用者でなく継続雇用者の一人当たり給与の増加を要件とすること(2)非正規雇用を含めて全雇用者の給与総額の増加を対象とすること(3)賃上げに積極的な企業に対する税額控除率を引き上げることーーを条件として付しました。自民党税調も寝耳に水で今夜驚いている可能性もあります。

 このほか「地域における木造のゼロ・エネルギー住宅の取得率を支援するとともに、住宅ローン減税の在り方や、リフォーム税制の拡充・延長について検討し、本年末の来年度税制改正において結論を得る」ことも上書きされました。

 さらに「金融審議会において、四半期開示を見直すことを検討する」こともプログラムされました。

 また「事業再構築のための私的整理円滑化のための関連法案を国会に提出する」ことも盛り込まれました。

 このほか、安倍一強で珍しく野党の抵抗で廃案となった特区法改正案をならぞらえつつ「自動運転移動サービスを認める新たな制度」のための道路運送車両法・道路交通法などの「次期通常国会に関連法案を提出する」ことも再度盛り込まれました。トヨタ自動車労使は、愛知11区での組織内候補の立候補を取り止めていました。

 これまで出ていた話として、「新たな大学制度を構築するための関連法案の次期通常国会への提出」「木材の利用を促進するため、木造建築物に対する構造計算の規制や防火規制を改正する法案の次期通常国会提出」「我が国の経済安全保障を推進するための法案を策定する」「フリーランス保護のため新法を早期に国会に提出する」ことも念押ししました。

 選挙運動に忙しかった岸田さんが深くかかわっているとは思えないし、これに付随した自民党政調・税調は開かれていなかったはずです。各々の政策には、「官邸官僚」の名前をほうふつとしますが、本省に帰って後輩たちが受け継いでいると考えられます。党幹部としては失脚した甘利明さんの得意分野も目につきます。

 一方、立憲民主党は「子育て世帯給付金再支給法案」と「住民税非課税世帯コロナ給付金法案」の2つを、最短で特別国会での提出もにらんで優先する方針。

 相場観としては、毎次の特別国会召集よりも1~2日早く与野党とも動きだしました。新しい秩序が生まれますが、与党内に不穏な空気が漂いそうな気配もあり、来夏6月下旬公示の第26回参院選まで、「一強」の眠りから覚めたジェットコースターのような政局になる公算が極めて高くなりました。ただし、「特定秘密保護法」「平和安全法制」「労働者派遣法」のような大きな国民運動につながる対決法案はなさそうです。

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