時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

HOKUSAIの偉大さ:大英博物館展の迫力

2018年02月10日 | 午後のティールーム

 

 Hokusai, Choshi in Soshu province, from the series A Thousand Pictures of the Sea
About 1983, Chiba City Museum of Art
千絵の海、総州銚子、1983年、千葉市美術館

全十図からなる名所絵揃物である「千絵の海」は、「富嶽三十六景」が発表された後の1833年頃に制作されたと推定されている。日本各地の海や川を舞台に、変幻する波や水と、漁業に携わる人々が織り成す情景がいきいきと描かれている。『富嶽36景」のダイナミックさとは異る構図である。藍のグラデーション、ダイナミックな構図が印象深い作品で、波や水しぶきといった、北斎が追求し続けたモチーフである。

葛飾北斎 総州七里ヶ浜,1831年、British Museum
鎌倉の南西に当たる浜辺からの富士山遠望

上と下の作品を比較しても一目瞭然、「動」と「静」の対比が見事に描き分けられている。  

このところ世界的に葛飾北斎の評価が高まっているようだ。ジャポニズムの観点からの企画展が日本で開かれる前に、昨年大英博物館で『HOKUSAI』の企画展(5/25-8/13)があった。日本でもあべのハルカス美術館で開催された(10/6-11/19)。大英博物館の方はコミッショナーがイギリス人美術史家によるもので、ジャポニズムをテーマとした国立西洋美術館展とは異なった視点、Beyond the Great Wave(大浪『神奈川沖波裏』を超えて)で企画されている。北斎の作品はこれまでかなり見てきたと思っていたが、改めて日英両国の企画展に出展された作品を見て、その数と多彩さに驚かされる。ジャンルの広さにおいてもほとんど比肩する画家は見当たらない。世界レヴェルで見て、ダントツな画家といえる。大英博物館展では、前売り券はすぐに売り切れ、当日券も長い行列が続いたようだ。イギリス人の好む植物画も大変人気だったようだ。

北斎の制作活動はきわめて長かったこともあり、生涯における制作点数はきわめて多い。北斎の研究者でも数え方などもあって正確な作品数は分からないようだが、1,000点を越えるとみられる。木版画が一つのジャンルということもあって、作品の浸透度は油彩画などの比ではない。愛好者は日本国内に止まらないだけに所蔵先は広範に渡り、ブログ筆者も実物を見たことがない作品がかなりある。北斎の作品イメージが頭の底に集積されて行くにつれて、日本が世界に誇りうる偉大な画家であることを一段と実感できる喜びがある。

 

HOKUSAI: BEYOND THE GREAT WAVE, Edited by Timothy Clark
Thomas & Hudson, in collaboration with The British Museum, 2017
Cover 

 

 

 

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