年末、身の回りの片づけをしていると、しばらく忘れていたCDなども見つかる。その中にロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(RAA)が、「キルヒナー特別展」のために作成したKirchner Music Expressions と題した一枚があった。
何回か聴いたことはあるが、その後は機会もなく、積み重ねられたままであった。早速、バックグラウンドで聞くことにした。 キルヒナー(1880-1938)は、時の経過をおいてみれば、ドイツ表現主義芸術家の旗手ともいえる存在であった。作品は画家の生涯を通してみると、かなり画風が変化してはいるが、総じて力強く情熱的な色彩感で満ちている。時には素朴なまでの荒々しさが感じられる。
キルヒナーが生きた同時代のドイツの音楽界においても、絵画と同様にさまざまな新しい動きが展開していた。ダイナミックな音の流れの中に、人間の情緒と自然な世界の変化を新しい形で表現しようとする試みが盛んに行われた。キルヒナーの絵画同様に、フレッシュで、オリジナルな音楽が創り出された。
このCD一枚を通して聞いてみると、ひそかに忍び寄る時代の不安の中で、新しい芸術の先端を切り開こうとする芸術家たちの息吹きのようなものが感じられる。ほとんど聞いたことのない曲もあるが、オルフの「カルミナ・ブラーナ」のようになじみのある作品も含まれている。シェーンベルグのSolidarityのように、オットー・クレンペラーが合唱には難しすぎて、よほどのリハーサルなしには演奏できないと厳しいクレームをつけたSix Pieces for Male Choir の一部*などが入っているのは幸いである。 印象など詳細はまたゆっくり書ける時があるかもしれない。とりあえず、収録されている曲名だけでも記しておこう。
At Play in the Waves, Reger
Royal Concertgebouw Orchestra, Neeme Järvi, conductor
*Solidarity, Schoenberg
The Sons of Orpheus, Robert Sund, conductor
Elegie, Rheinberger
Paul Barmit, violin, Christopher Herrick, organ
Silence, Reger
Danish National Radio Choir, Stefan Parkman, conductor
Transfigured Night-Adagio, Schoenberg
Orster Orchestra, Takuo Yuasa, conductor
The Berlin Requiem-Ballad of the Drowned Girl, Weill
The Sons of Orpheus, Uppsala Chamber Orchestra, Robert Sund, director
Evening Song, Reger
Danish National Radio Choir, Stefan Parkman, conductor
Pastorale, Rheinberger
Paul Barmit, violin, Christopher Herrick, organ
Passacaglia for Orchestra, Webern
Scottish National Orchestra, Mattiase Bamberk, organ
Nobilissima Visione-Introduction and Rondo, Hindemith
BBC Philharmonia, Yan Pascal Tortelier, conductor
Carmina Burana-O Fortuna, Orff
Slovak Philharmonic Chorus, Slovak Radio Symphony Orchestra, Stephen Gunzenhauser, conductor
Evening, Strauss
Danish National Radio Choir, Stefan Parkman, conductor