人流が結ぶ世界
2020年年初から突如問題化した新型コロナウイルスのグローバルな次元への感染は、瞬く間に人類の運命に関わる世界的危機へと拡大した。21世紀が「危機の世紀」となることは、かなり以前から予感するものがあり、その一端はこの小さなブログにも記してきた。
世界史上、感染症が人類の生命を脅かす原因となったことは度々あったが、今回ほど急速かつ広範な地域へと拡大したことは例がなく、世界が大きな衝撃を受けた。地球上における人の流れ(「人流」フロー)とその集積(ストック)がかつてなく進行していたことが、こうした事態を生み出した背景にあった。
人流に関わるマイナス要因
国境を越える人の流れの増加は、主として労働の報酬、本国送金などの成果を通して、世界の経済にプラスの効果をもたらすと考えられてきた。グローバル経済を動かすエンジンのひとつであった。
しかし、人の移動や集積が経済や文化的活動にマイナスの影響を与える場合もあることが明らかになった。移民労働者などの国境を越える移動が、単なる労働力にとどまらず、人間のあらゆる属性を伴って行われているという明瞭な事実である。
今回のcovid-19の場合は、人の移動の増加が人間の健康面に与えるマイナス面をあからさまにした。感染者あるいはその運び手 career としての人の出入を阻止する動きが増加し、世界中で出入国制限の障壁が顕著に高まった。
人流に関わるマイナス要因
国境を越える人の流れの増加は、主として労働の報酬、本国送金などの成果を通して、世界の経済にプラスの効果をもたらすと考えられてきた。グローバル経済を動かすエンジンのひとつであった。
しかし、人の移動や集積が経済や文化的活動にマイナスの影響を与える場合もあることが明らかになった。移民労働者などの国境を越える移動が、単なる労働力にとどまらず、人間のあらゆる属性を伴って行われているという明瞭な事実である。
今回のcovid-19の場合は、人の移動の増加が人間の健康面に与えるマイナス面をあからさまにした。感染者あるいはその運び手 career としての人の出入を阻止する動きが増加し、世界中で出入国制限の障壁が顕著に高まった。
2020年3月の時点で、少なくとも174の国、地域が人の移動に制限を付している。グローバル・サミット、オリンピック、パラリンピックなどの行事でも、人の移動について厳しい移動制限が行われている。
感染症への対応の強化
新型コロナウイルスが世界的に感染を見せ始めた2010年の年初の段階では、従来のインフルエンザとさほど違いのない感染プロセスを経て収束に向かうのではといわれてきた。しかし、covid-19の感染力は予想を超えて強力で、次々と新たな変異株を生み出し、2021年夏の段階でも収束の兆しはみられない。日本の新型コロナウイルスへの感染者数は、2020年9月現在で150万人を越えた。
1918年の”スペイン風邪”の流行当時と比較して、今回の新型コロナウイルスの感染の範囲は、大きく異なる。グローバルな次元での人の流れと集積がかつてなく重みを増したことにある。結果として、その衝撃も格段に大きい。単に人流の規模にとどまらず、各国の健康システム、経済に及ぼす影響もこれまでに例を見ないものになっている。
すでに2年近くになる感染拡大の過程で、グローバルな次元での人の移動の流れはかなり顕著な変化を見せ、現在も進行中である。2020年の人口移動の統計はまだ得られないが、恐らくこれまでの時系列の傾向を修正するような現象が起きているだろう。
感染症への対応の強化
新型コロナウイルスが世界的に感染を見せ始めた2010年の年初の段階では、従来のインフルエンザとさほど違いのない感染プロセスを経て収束に向かうのではといわれてきた。しかし、covid-19の感染力は予想を超えて強力で、次々と新たな変異株を生み出し、2021年夏の段階でも収束の兆しはみられない。日本の新型コロナウイルスへの感染者数は、2020年9月現在で150万人を越えた。
1918年の”スペイン風邪”の流行当時と比較して、今回の新型コロナウイルスの感染の範囲は、大きく異なる。グローバルな次元での人の流れと集積がかつてなく重みを増したことにある。結果として、その衝撃も格段に大きい。単に人流の規模にとどまらず、各国の健康システム、経済に及ぼす影響もこれまでに例を見ないものになっている。
すでに2年近くになる感染拡大の過程で、グローバルな次元での人の移動の流れはかなり顕著な変化を見せ、現在も進行中である。2020年の人口移動の統計はまだ得られないが、恐らくこれまでの時系列の傾向を修正するような現象が起きているだろう。
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N.B. 2021年年央で確認できる主要な変化を記しておこう:
2020年年央時点で国境を越える労働者の数(フロー)は前年に比して約200万人減少、同期比では約27%の減少を記録した。
2020年において自国の外に居住する人々は約2億8100万人と推定され、インドネシア全体の人口にほぼ匹敵する。
2000年から2010年で、労働あるいは家族の再結合のために国境を越えた人々は約4800万人、2010年から2020年にかけては6千万人と推定される。
さらに、2000年から2020年にかけて難民あるいは庇護申請者として国境を越えた人々は17百万人とみられる。
2020年に職を失った外国人労働者は3400万人と推定される。
Source: United Nations, Department of Economic and Social Affairs, International Migration 2020
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人流抑制の兆し
人流の減少には、covid-19のの感染力が強く、感染した場合の症状が重くなりがちであることが影響して、移民労働者も出来れば家庭にとどまりたいとの意向も反映している。その動きは中央アメリカからフロリダやカリフォルニアなど南部諸州での野菜や果実採取、バングラデッシュからのアブダビ、カタールなど中東諸国での建設労働者、メルボルンや東京でのインド人起業家など、ほとんどあらゆる場面で人の流れにブレーキがかかっている。
グローバル次元での格差拡大
コロナ禍以前のように効率的に移動ができなくなった労働者が増加し、世界的にも所得、富などの格差も拡大している。とりわけ、自国の労働者の海外からの送金に大きく頼ってきたフィリピン、バングラディシュ、ホンジュラス、ガーナなどに代表される国々は衝撃が大きい。結果として、中長期的に貧富の格差拡大が固定化する傾向がすでに見出されている。統計が得られる2018年時点で開発途上国全体が受け取った海外からの送金額は5290億ドルであった。
新たなグローバル・リスクへの備え
国際レヴェルで導入されているさまざまな制限措置は、感染リスクが軽減、低下した近い将来においてもすぐには撤廃されない可能性も指摘されており、国際的な人の流れはコロナ禍以前と比較して停滞することも予想されている。
他方、2021年夏の段階で重大な関心事となっているアフガニスタンなどからの難民、庇護申請者などの増加が予想される。
人流の減少には、covid-19のの感染力が強く、感染した場合の症状が重くなりがちであることが影響して、移民労働者も出来れば家庭にとどまりたいとの意向も反映している。その動きは中央アメリカからフロリダやカリフォルニアなど南部諸州での野菜や果実採取、バングラデッシュからのアブダビ、カタールなど中東諸国での建設労働者、メルボルンや東京でのインド人起業家など、ほとんどあらゆる場面で人の流れにブレーキがかかっている。
グローバル次元での格差拡大
コロナ禍以前のように効率的に移動ができなくなった労働者が増加し、世界的にも所得、富などの格差も拡大している。とりわけ、自国の労働者の海外からの送金に大きく頼ってきたフィリピン、バングラディシュ、ホンジュラス、ガーナなどに代表される国々は衝撃が大きい。結果として、中長期的に貧富の格差拡大が固定化する傾向がすでに見出されている。統計が得られる2018年時点で開発途上国全体が受け取った海外からの送金額は5290億ドルであった。
新たなグローバル・リスクへの備え
国際レヴェルで導入されているさまざまな制限措置は、感染リスクが軽減、低下した近い将来においてもすぐには撤廃されない可能性も指摘されており、国際的な人の流れはコロナ禍以前と比較して停滞することも予想されている。
他方、2021年夏の段階で重大な関心事となっているアフガニスタンなどからの難民、庇護申請者などの増加が予想される。
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N.B.
COVID-19の危機は、移民とその統合に向けての進歩を脅かしている
The OECD International Migration Outlook 2020 によれば、COVID-19が引き起こした危機で移民のフローにはかつてない変化が生まれた。ひとつの結果として、OECD加盟国の新規ヴィザ、入国許可の発行数は2019年前半と比較して、2020年前半に46%減少した。この下落幅はこれまでの記録で初めての大きなものである。
パンデミック以前の2019年においては、OECD諸国への永住を目指す移民の流れは、2017年、2018年とほぼ同水準の5300万人だった。難民の受け入れは少し減少したが、永住が目的の移民受け入れは、2019年には530万人に達していた。一時的な労働者の受け入れは5百万人以上の受け入れが記録された。
移民のフローは過去10年間増加を続け、受け入れ国側でも移民の統合において一定の改善が見られた。しかし、こうした改善もパンデミックと経済的下降によってある程度消し去られた。各国政府はエッセンシャルな活動分野として、健康・安全に関わる労働者を確保することが求められ、彼らの社会と経済への貢献を確保するためにも財政支出と統合努力を維持することが強調されている。
労働需要の減少と高いスキル水準を持った労働者の間でのテレワークの増加と学生のリモート教育の浸透で、人の移動が顕著に減少した。
パンデミック以前の2019年においては、OECD諸国への永住を目指す移民の流れは、2017年、2018年とほぼ同水準の5300万人だった。難民の受け入れは少し減少したが、永住が目的の移民受け入れは、2019年には530万人に達していた。一時的な労働者の受け入れは5百万人以上の受け入れが記録された。
移民のフローは過去10年間増加を続け、受け入れ国側でも移民の統合において一定の改善が見られた。しかし、こうした改善もパンデミックと経済的下降によってある程度消し去られた。各国政府はエッセンシャルな活動分野として、健康・安全に関わる労働者を確保することが求められ、彼らの社会と経済への貢献を確保するためにも財政支出と統合努力を維持することが強調されている。
労働需要の減少と高いスキル水準を持った労働者の間でのテレワークの増加と学生のリモート教育の浸透で、人の移動が顕著に減少した。
居住許可数が各国で削減され、2020年年初以降人のフローが減少している(下掲)
OECD統計
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covid-19の収束がいつになるか、今の時点では不透明なところが多い。しかし、2022年以降まで持ち込まれることはほとんど確実になっている。
covid-19に限らず、新たなウイルス・細菌などによる感染症拡大のリスクは将来においても予想されることであり、地球温暖化などの気象条件、戦争などの勃発リスクと併せ、地球規模で対処しなければならない重要課題が増大している。
covid-19に限らず、新たなウイルス・細菌などによる感染症拡大のリスクは将来においても予想されることであり、地球温暖化などの気象条件、戦争などの勃発リスクと併せ、地球規模で対処しなければならない重要課題が増大している。