Frances E. Dunwell, The Hudson: America's River, New York: Columbia University Press, 2008, cover
世界中を震撼させた9.11から明日で20年が経過する。2001年9月11日、世界貿易センタービルにテロリストにハイジャックされた2機の旅客機が突入し、ニューヨークのダウンタウンは地獄絵図と化した。まさかと思っていた犠牲者の中には知人の息子さんの名もあった*。世界は小さくなっているということを知らされた。
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9月11日NHKTV 『「事件の涙」米テロ20年』で、Sさん夫妻が過ごした20年の苦悩の日々が報じられていた。改めて心から哀悼の意を表したい。
9.11やNew Yorkに関わる様々な報道や記事の中から少し明るい話題をひとつ。
軽妙な語り口で知られるタレント・レポーター、マイケル・マカディアさんの『 キャッチ!世界のトップニュース 』(NHK BS!) 9月10日のNYC@では、ニューヨークの西側を流れるハドソン川を小さな帆船で上下航し、流域の農産物や産品を運び、販売する試みが紹介されていた。
ハドソン川は”アメリカのライン川”(1939年『LIFE)』誌の命名)とも呼ばれたこともあったが、大変美しい川であり、この川を航行することで、アメリカ史の多くの出来事を知ることができる。
ブログ筆者の知る河川の中でも、セントローレンス川と並び、非常に印象に残る川のひとつになっている。このブログでもその一端を何度か記した*1。
この川は全長500km余りでアメリカ東部を南北に貫いて流れている。上流のエリー運河(1825年12月完成)を使うと、五大湖までつながり、ヨーロッパが大西洋経由でつながることになった。アメリカ大陸の開発の歴史を見るように、沿岸には多くの風光明媚な地点と併せて著名な史跡が点在している。
TVで紹介されたのは、150キロ上流の町ハドソンから農産物などを帆船に積んで下り、ニューヨーク市内で販売するという試みである。帰途は市内の産品を載せて上流へ戻る。石油に頼らず「風で運ぶ」ことが狙いのようだ。かくして運ばれた商品にも付加価値が生まれる。
19世紀から20世紀初めにかけて、かつては白い帆をかけた多くの帆船が行き交ったハドソン川だが、その後の蒸気船航行*2に始まる水上の技術革新で、今は特別の行事などの時以外はほとんど見られなくなった。
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N.B.
*2 1807年、ロバート・フルトン Robert Fulton (1765 - 1815)の発明による初航海の蒸気船は、ニューヨーク港から上流のオルバニーまで、150マイルを逆風で32時間で航行した。帰途は30時間かかったが、向かい風でも無風でも蒸気機関の船は確実に航行できることを実証し、その後の蒸気船の発達に大きく寄与した。
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*2 1807年、ロバート・フルトン Robert Fulton (1765 - 1815)の発明による初航海の蒸気船は、ニューヨーク港から上流のオルバニーまで、150マイルを逆風で32時間で航行した。帰途は30時間かかったが、向かい風でも無風でも蒸気機関の船は確実に航行できることを実証し、その後の蒸気船の発達に大きく寄与した。
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ハドソン川の風向きは15分ごとに変わるともいわれ、帆船にとっては決して航行が容易な川ではないようだ。しかし、このたびの帆走の試みで風力という自然エネルギーで航行する帆船が復活すれば、廃油などで汚染されないかつての美しいハドソン川の風景を楽しむことができる日も来るかも知れない。
*1
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