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あわいとあいだの間には

2018年08月29日 | 雑記帳
 久しぶり見た言葉「あわい」のことを書いたと思ったら、今読んでいる本に、また「あわい」を見つけてしまった。俵万智の短歌である。

 空の青海のあおさのそのサーフボードの君を見つめる


 若山牧水の有名な歌「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」の本歌取りとして作られたこの歌、「間」には「あわい」とふりがながつけられている

 この情景を想像すると、なんだか昨日書いた「あわい」のまた別の観点が見えてきた。

 サーフボードだけでなく、波の白い色も見えてくる作品と想うので、これは「空」と「海」が交じり合う、重なり合うような空間のイメージが出来るのである。
 読みも「あいだ」とするより「あわい」の方がしっくりくるのは、限定、固定されていない情景だからではないか。



 なんとなく「すきま」的な感覚で語った昨日の拙文から離れてしまうが、それもまた一興。
 すぱっと割り切れないのが日本人なんだよねえ、曖昧の魅力ということで締めようと思いながら、ふと中島みゆきの名曲の題名が頭をよぎる。

 「空と君のあいだに」

 一説には「犬の目線で描かれた」作品。それはそれとして、ここはやはり「あいだ」でなければ成立しない。
 「あわい」にある接近性、密着性を感じるものではないからだ。
 「あいだ」に込められる距離と拒否のイメージが湧いてくる。

 「空と君のあいだには 今日も冷たい雨が降る

 この歌詞だけの繰り返しにも理由がある。

 試しに「あわい」に替えて歌っても(笑)、ぴんとこない(しかも歌いづらい)。

 これは「あいだ」を強調する曲なのだ。お見事、中島みゆきとしか言いようがない。

 本当に、日本の女性歌人たちは最強だ。