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「IKIGAI」を読む生きがい・弐

2018年08月11日 | 読書
 「生きがい」を考えるうえで重要なポイントになる「こだわり」について、著者はこんなふうに記している。「<こだわり>の重要な点の一つは、市場原理に基づいた常識的予測のはるか上を行くところに、自分自身の目標をおくことである」。現在の経済優先世界に振り回されないための「重し」と考えることもできる。


2018読了78
 『IKIGAI 日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』
 (茂木健一郎  恩蔵絢子/訳  新潮社)



 「こだわり」という語はもともと否定的なニュアンスで使われていた。しかし現在はどちらかというと肯定的と言っていい。日本人の多くはそれぞれに何かしらのこだわりを持っているという言説は頷ける。特性と呼んでいいだろう。こだわりの源を好奇心に置くとすれば、出自を問わず、好奇心を持つのが日本人だ。


 その好奇心は、古代から現代まで大陸や諸外国の様々なモノを取り入れて、加工したり編集したりして、新しい価値を生み出してきた。例を挙げるまでもない。そしてそれらは社会化や産業発達として根付くと同時に、国民性や個々の人間性に強い影響を及ぼしている。小さな好奇心の塊が形作ってきたことは大きい。


 太平洋戦争後GHQ最高司令官として来たマッカーサーが、日本人を「12歳の少年」と語ったことは有名である。著者は、その言葉を当時の民主主義の未熟さを指摘したと同時に「好奇心という言葉で表現される若々しい思考的態度」という見方もできると書く。戦後失われた美点は多いが、根強く残った部分もある。


 こだわり、好奇心が凝縮している典型的な一つにアニメが挙げられることは、納得できることだ。著者はジブリの宮崎駿を取り上げ、「この人物は、子供の心理を理解し尽している。そして、それはおそらく彼自身の内部に小さな子供が生きているから」と看破した。「仕事」がそんな形で降りてくる人は、引退できない。