すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

あの春、語ったことを…

2018年08月15日 | 雑記帳
 町の成人式に列席した。長く町内に勤務したので、ほとんど毎年見覚えのある氏名が並ぶ名簿を頂く。もちろん担任としてではないが、それでも印象深く覚えている子も少なくない。今年の成人は、震災の年に卒業を迎えた者たちである。あの三月の卒業等をめぐる様々な出来事や思いは、今でも時々浮かんでくる。


 あれほど綿密に「式」の進行を検討したことはなかった。余震が続く中、行政からの指示等もあったし、式の前後、最中を問わず、いつ、どの程度の地震がきても戸惑うことなく判断が下せるように、何度も頭の中でシュミレーションした。防災、減災に向けた取組が一般化するなかで、原点はやはり危機意識にある。



 地震当日から四日後の卒業式では、どんなことを語ったか。式辞の中で直接的に震災に触れず、以前集会で紹介したある絵本を読んだ。それは『じぶん あなたへ9』というレイフ・クリスチャンソン(スウェーデン)の著した本当に小さな本だ。「考えたことがありますか じぶんにできることを」と、言葉は始まる。


 「目は 世界をしっかりと 見ることができる」と続き、耳、口、足…とそのはたらきについて述べ、「考えてみませんか じぶんにできることを」と結ばれる。一人の女の子が、家の内から窓を通して夜空を見ている場面が描かれている。あの頃考えねばならないことだった。今もまだ、考え続けねばならないことだ。


 もう一つ、祝賀会の代わりに開催された卒業生、父母らとの集まりで語った。新聞に寄せられた養老孟司の文章を引用し、「安全・安心な環境の中では本当の学ぶ態度は身につかない」という反語的表現とも取れる言い方で、今後の学びを激励した。あれから七年、実感を持って語った言葉は霧散していないか自問する。