和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

裸の王様。

2011-04-26 | 短文紹介
谷沢永一対談集「人間万事塞翁が馬」(潮出版社)にて、
阪神大震災を経験した谷沢氏は、時の首相をかたって、

谷沢】 さらに、呆れ果てたのは、1月23日の衆議院本会議で、村山首相は、『今回の震災について私は最善を尽くしました』といったんですね。この世に最善というものがあるもんですか。ことに不幸な出来事があったときに、もっとああすればよかった、こうもしたらよかったという、そういう後悔の念がまず先に立つはずです。それを、あれだけの災害のあとで最善を尽くしたといえる。これは尋常じゃありませんよ。
会田】 一般的に官僚とはそういうものです。村山首相という人はその官僚よりもっと無責任でいられる立場ですごしてきた人でしょう。

谷沢】 私が不満でたまらないのは、『村山首相やめろコール』が、国民のあいだでまったく起こらないことです。・・・・・


さて、東日本大震災の場合は、どうだったか。
「WILL」6月号が出たところです。その最初に掲載されているのが
「記者会見で私はこう迫った・菅総理、あなたの存在が不安材料だ」
産経新聞記者・阿比留瑠比。

そのテレビ中継を見ていなかったので、残念だったのですが、
阿比留氏の文のはじまりは、その箇所からでした。

「『現実問題として、与野党協議にしても最大の障害となっているのは菅直人首相の存在であり、後手に回った震災対応でも首相の存在自体が国民の不安材料になっていると思う。一体、何のためにその地位にしがみついているのか、考えを聞かせてほしい』私は12日の菅首相の記者会見で、こう質問した。与野党が一丸となって震災対応に取り組む妨げとなっているのは、自民党をはじめ野党側に根強い菅首相への不信感だ。また、原発事故への対応の混乱も被災者支援の遅れも、菅首相が今、まず何をやるべきかという物事の優先順位を理解せず、自分の不要不急の関心事項やパフォーマンスを優先させてきたことから生じている。・・・」

「『日本(政府)は無能だ』韓国のキムファンシク首相は4月7日の国会答弁で、東京電力福島第一原発から放射性物質を含む水が海に放出される際、日本政府から事前連絡がなかった問題でこう言明した。外国からわが国が公式の場で無能呼ばわりされたのだから、国民の一人として普通は腹が立つ場面だ。ところが、そう言われても妙に納得してしまうのが悲しい。内閣のスポークスマンである枝野幸男官房長官ですら、8日の記者会見では次のように述べるのが精いっぱいだった。『今、外交ルートで発言の真意を確認しているところだ。関係諸国に対して、あらかじめより詳細かつ丁寧な説明が必要であったと思っていて、真摯に受け止めていきたい』無能と指摘されても、堂々と反論の一つもできないのが菅首相だ。それもそのはず、トップの菅首相の目を覆わんばかりの無能さは、誰も否定できない。おそらく、それに気付いていないのは、もはや【裸の王様】となっている菅首相ただ一人ではないだろうか。・・・」

以下記者が見て聞いていた官邸のようすが語られていくのですが、
身近に記者が味わった雰囲気はよく伝わってくるのでした。
でも、審議ではどうなるか。
そうこんな箇所もありました。

「ところが、菅首相は震災発生後、官邸執務室に閉じこもり、新聞や雑誌に載った自分に関する記事を切り抜くばかり。」

記者にしかわからない情報が、身近な臨場感とともに活写されていきます。
この『菅首相やめろコール』に、火がつくのかどうか。

昔話では、【裸の王様】と指摘する大人はいませんでした。
ここでは、あらためて阿比留瑠比氏の名前を明記しておきます。
江戸時代ならば、お上に楯突く者として、直訴は、
記者のぶんざいで、とっくに切腹を申し渡される場面。それにしても、
「官僚よりももっと無責任でいられる立場ですごしてきた」裸の王様。

コメント
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