和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

地震学の常識。

2011-04-29 | 短文紹介
「新潮45」5月号の鎌田浩毅vsビートたけしの対談を読んで、その前のページにある尾池和夫氏の文章を読みました。ちなみに鎌田氏は京都大学院、人間・環境学研究科教授という肩書きで、尾池氏は前京都大学総長・国際高等研究所所長。さて、尾池氏の文にはこうあります。

「・・・最近、地震に関する講演のときには、わたしは必ず、このスマトラ・アンダマン地震のM9.0の巨大地震の説明をした後、日本列島の地図をインドネシアの地図と同じ縮尺で描いて、それを90度回転させて並べて示していた。両者がほどんど同じ形と同じ大きさであることを見てもらった上で、そのような列島が形成されたのは、同じような巨大な現象が、1000年に1度くらいは起こっているからであり、日本列島にも起こる可能性があると話してきた(例えば講演録、【地震を知って震災に備える】高等研選書22)。
ニュージーランドの昨年の大地震を今年の震災を起こした余震の説明のときにも、このインド・オーストラリアプレートの境界に沿った一連の活動の次は、日本列島のプレートの方に活動が移ってくると話していた。
今回の平成23年(2011年)東北地方太平洋沖M9.0の巨大地震は、太平洋プレートが潜り込む境界の、三陸沖から北関東の沖までの岩盤が一挙に動いて起こったものである。そのような巨大な現象は、1000年に1度というような自然現象で、それほどたびたびあるものではない。そのように念を押しながら、決してないというわけではないという気持ちで、巨大地震のことを話してきた。しかし、その本番が、これほどすぐに起こるとは思いたくないという気持ちもあった。」(p118)

 すこし端折っていきます。800年代頃の巨大地震について日本の歴史をひもといていきながら

「・・この三陸沖の巨大地震が18年後、887年に南海トラフ沿いの巨大地震が起こっている。その後は、日本列島全体がまたしばらく静かになって、次にM7クラスの大地震は、938年(天慶1年)の京都あたりの大地震まで起こらなかった。
このような例を挙げる意味は、巨大な現象が一度発生してしまうと、2004年12月から、インド・オーストラリアプレートの潜り込む境界で起こったのと同じように、連鎖的な大地震や火山噴火の発生がありうるということを伝えたいからである。・・・
また、このようなときには、火山の噴火活動にも注目していなければならない。・・・」(p120)

ちなみに、尾池氏の文の最後はこうでした。

「3月9日の宮城県沖M7.3地震と、その後10日までの地震群が、10日の時点で、Mが大きな地震の発生率が高いという典型的な『前震』の性質を示していた。これは、直後にさらに大きな本震が起こるということが、10日にはわかっていたということを意味する。この地震学の常識が防災に活かされなかったことが残念でならない。」(p121)


ネット検索。
私の場合ネット書店BK1で人名検索してみたら、岩波書店から出ている「日高敏隆の口説き文句」が出てきた。これなら、たしかあったはずとさっそくひらいてみると、尾池和夫氏の「日高さんに学ぶ」という六ページほどの文がしみいるように読めたのでした。あと、ビートたけし対談「ラジオ北野」(新潮社)を取り寄せてみると、そこに2009年5月号「新潮45」に掲載された尾池和夫氏との対談が載っている。

たけし】 ・・ご専門の地震学では間違いなく第一人者ですね。阪神淡路大震災が起きる前に、大地震が起きることを警告していたと聞きました。・・・(p186)

まあ、こんな風に対談ははじまっておりました。

尾池】 関西地方が地震の活動期に入るだろうというのは、1994年から講演などで発言していました。自分の講演の記録を見ると、「21世紀に入るか入らない頃から地震の活動期に入ります」と言っています。阪神・淡路にも野島断層がありましたから、地震が起きてもおかしくなかった。ただ95年に地震が起きてしまったから、少し予想よりも早かったことになります。・・・(p189)

尾池】 地震の場合は「百年に一遍」というような時間で話をしているわけですから、「間もなく」といっても、十年、二十年の誤差は想定内なんですけれど。(p193)


対談の最後の方も引用しとかなくちゃ。

たけし】 ・・・先生が急に海外に出かけたら、いよいよ日本に巨大地震が来る予兆。それが一番の前兆現象じゃないか(笑)。
尾池】  いえいえ。僕は今、活断層の上に住んでいるんですよ。皆さんは「あいつが住んでいるから、大丈夫だ」と思うらしいんですけれど、逆です。地震の被災者にとっては不謹慎な発言かもしれませんが、何とか一度でもいいから、震度7を体験したいと思っているんです。
たけし】 あっ、むしろ逆なのか。
尾池】 それはそうです。火山学者で火山が噴火し出したと聞いて、噴火に向かって走った人がいる。・・学者にはそういうところがある(笑)。ですから、僕はグラッと揺れると、「おっ、これはええ地震や」とか言う癖があるんです。それを聞いて、うちの子供が笑って「うちのお父ちゃん、役立たへん」って。
たけし】 学者の先生の生態は面白いね(笑)。
尾池】 学生たちにも言っています。「これから西日本は活動期に入るから君らは幸せだ」と(笑)。
たけし】 おいらは死ぬ前に一度富士山の大爆発を見たい。それが見れたらもう本望かもしれない。
尾池】 2038年としたら、あと約30年です。・・・私はそれまで何とか生き延びて南海大地震を見たいと思っています。・・・・・



う~ん。ちなみに、鎌田浩毅氏などは、「君らは幸せだ」という尾池氏の謦咳に接して活動しておられたのじゃないでしょうか。
コメント
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