和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

雑誌の活力。

2011-06-26 | 短文紹介
中央公論7月号購入。
畑村洋太郎、ドナルド・キーン、小松正之、佐藤優、猪瀬直樹、井上ひさし。
こういう顔ぶれなら、どなたも触手が動くのじゃないでしょうか?
朝日の古新聞で雑誌広告を目にしてから、注文しました。
そういえば、という連想。
畑村洋太郎氏は「『失敗学』から見た原発事故」という6ページほどの文。畑村氏といえば、講談社学術文庫に寺田寅彦著「天災と国防」が、つい最近発売されました。じつはこれも新聞の雑誌広告で見たのですが、文庫解説が畑村洋太郎氏となっております。それじゃ買ってみようということにしました。
うん。買ってよかった。じつに、解説だけで38ページある。
寺田寅彦をテキストにした、文庫による、ちょっとした講習をうけている感が楽しめます。

ドナルド・キーン氏。中央公論では3ページほどなのですが、題は「日本国籍取得決断の記」なんてある。どなたも、読みたくなるじゃありませんか。
そのなかに、今年の1月に東京で入院していたこと。
「私はコロンビア大学の授業を三回、欠席したことを忘れるわけにはいかなかった。一刻も早くニューヨークに戻らねば、という責務を感じていた」とあります。
こんな箇所にも、キーン氏の先生・角田柳作先生のことを思い浮かべてしまいます。
そういえば、荻野富士夫著「太平洋の架橋者 角田柳作」(芙蓉書房出版)というのが出ていたなあ(未読ですけれど)。
もどって、コロンビア大学の授業についても触れておられました。
「今季の私のクラスでは能楽の謡曲を読む授業が予定され、11人の学生が登録していた。中国経済の台頭によって、海外の大学では日本に対する関心がすっかり衰えたと日本の人々が言う時もあるが、11人という数は昨年の二倍にあたるし、学生の質も極めて高く、日本に対する関心が薄れていないのは歴然としていた。取り上げる謡曲は『船弁慶』『班女』『熊野(ゆや)』『野宮』『松風』である。この五つの謡曲の中で比較的、簡単なのは『船弁慶』だが、残りの四作は荘厳たる詩句の数々であり、それらを理解し、翻訳するのは学生にとって極めて難しい課題であるが、それでも脱落する者はいなかった。学生たちは授業に際して、長時間の学習を積んだに違いない。講義をしていて実感するのは、自分が愛する文学を教える喜びだ。私自身が抱く日本文学に対する心からの愛情を、この若者たちに伝道する、そんな思いが沸き上がるのだ。まるで、宣教師が自分の信念こそを真理と信じたように。これが最後の授業かと思うと、惜別の念に苦しめられるのは分かっていた。」

うん。願わくば、この3ページほどの文を読まれんことを。

謡曲といえば、
山村修著「禁煙の愉しみ」(朝日文庫)の最後に山村陸美さんが書いているなかに、

「・・夫は月曜日から金曜日、九時から五時まで、時には残業をし、また隔週で土曜日も職場で精一杯働き、週一本の書評を書き、時々月刊誌に連載を持ち、精魂こめて文章を書きました。また、その間に能を見、後にお謡を習い、そのまた後にはオペラにまで足をのばし・・・」(p229~230)

たしか、最近読んだなかでは、「奇跡の教室 伝説の灘校国語教師・橋本武の流儀」(小学館)のなかにも、ちらりと生徒を能見学へつれてゆく箇所があったと思ったけれど・・・。

せめて謡曲を読みたいと思って、いまだちゃんと読んでいない私がおります。って、結局最後は、自分の不勉強(笑)。
コメント
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