和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

世界の情報孤児。

2011-06-19 | 短文紹介
産経新聞6月19日。
読書欄にある、「時評 論壇7月号」論説委員・石井聡氏の文
が印象深いのでした。
Voiceの西岡武夫(参院議長)
Willの安倍晋三
文芸春秋の中曽根康弘

3人の政治家が指摘する菅首相。
ということで、雑誌に手が行きました。
それぞれ、読み応えがあります。
たとえば、西岡氏の対談の最後は、

西岡】 使命感をもっていると思えませんね。
篠原】 さびしい話じゃないですか、それだけでは。
西岡】 だからいったのです。辞めるべきだと。

最初の方には、こうあります。

西岡】 政権を担当する覚悟がない。そして能力もない。
じつは3月24日に、あまりにみかねて首相に電話をしたのです。・・・議長が首相官邸に行くのはあまりないことですが、そんなことをいっている段ではないのでセットしました。『何時にするか、あとからご連絡します』と菅首相がいわれたので待っていたら、一時間半ほどして首相ご自身から電話がかかってきた。そしてキャンセルしてきたのです。三権の長の申し出をドタキャンするということもそうですが、そればかりではなく、私は阪神淡路大震災や雲仙普賢岳の噴火などをはじめ、さまざまな現場での対応経験も積んできているわけです。その声すら、虚心坦懐にお聞きになれないというのですから、よほど『自分がいちばん知っている』と思っておいでなのでしょう。(p56)

西岡】 ・・・・たとえば、いまの復興構想会議も、それ自体がそもそも間違いです。あそこで論議することは、総理が考えていなければいけないことなのですから。これも政治的な責任逃れと、時間稼ぎにすぎません。・・・(p58)

この「復興構想会議」について
安部晋三は、こう指摘しております。

「本来、復興会議は実務の話をすべき場なのですが、実際には実務担当者がほとんどいない。実務を知っている人や官僚を徹底的に排除しています。その結果、『これからどうしう制度を活用し、どういう法案が必要になるか』といった実務的なまとめが全くできず、あたかも『家を建てるのに注文側の人間ばかりが集まって「理想の家」について相談している』という状況です。5月15日に開かれた第五回復興会議で、御厨貴氏が『小さな漁協は東北の風物詩』と発言しました。これは『本当に現地のことを知っているのか』と思わずにはいられないほど、実際に生活している方の視点とずれている。『風物詩』というのは情緒的な旅人の目線で、本来必要な産業的視点を欠いています。・・・」(p33)

中曽根康弘は、こう指摘しております。

「民主党政権の持つリベラルな市民運動的な性格が災いしている。官僚不信、自衛隊不信、大企業不信が一部に存在し、初動における菅政権の対応は非常に素人的で、国民を心配させ続けた。その後の震災復興策の策定の段階でも、潜在的に党の中はバラバラで、首相の統制力は効かず、国難に党が一体となって対処しようという気概が見られない。まずは首相の気迫と指導力が見えない。」(p123)


ところで、Voice7月号の上杉隆氏の2ページの文が印象深い。
そこではWHO(世界保健機関)とIAEA(国際原子力機関)と国際環境保護NGOグリーンピースの三つの視点から明快な指摘をしております。

たとえば「過去にIAEAの『査察』を断ったのは、北朝鮮、リビア、イランくらいだ。原子力の扱いに関して、日本はそうした国々と同列で扱われてもおかしくない振る舞いを・・・」

それについては、さきに
「IAEAに対する姿勢だ、IAEAの調査に対しても日本政府は、一貫して拒否する姿勢をとってきた。三月、原発周辺の立ち入りを許可しなかったのを皮切りに、福島県飯館村の放射線環境基準値のレベルが上がり、IAEAから避難要請が出されても、なお日本政府はそれを事実上、放置してきた。それが五月半ばに突如、受け入れを表明する。そのあまりに唐突すぎるタイミングに、六月からウィーンで開かれるIAEAの閣僚級会議をにらんでの動きではないかと欧州諸国からみられている。」(p35)

上杉氏の文の最後は

「日本はどこに向かうのか。
記者クラブ制度に守られているがゆえ、三つの国際機関に歯向かった現実さえ国民は知らないだろう。もはや日本は、世界の情報孤児になりつつあるのだ。」
コメント
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